昭和44年から続く長寿時代劇である、『ナショナル劇場(2008年からはパナソニックドラマシアター) 水戸黄門』が、現在放送中の第43部を持ってその歴史に終止符を打つことが発表されました。

『ナショナル劇場』といえば、『水戸黄門』『大岡越前』『江戸を斬る』といった名作時代劇を世に送り出した枠です。本稿では、『水戸黄門』の歴史を振り返ってみたいと思います。


『水戸黄門』は、主演俳優によってドラマの雰囲気が異なるシリーズでした。東野英治郎が初代水戸黄門を演じたシリーズは、主題歌の歌詞の通り、涙あり笑いありの人情もの。印籠を見せて悪人を平伏させるパターンがまだ確立してない回も多くあります。

東野演じる黄門様は、頑固だったり、喰いしん坊だったり、やんちゃだったりして、大変表情豊かでした。特に、旅先の子供と語らう場面は微笑ましい。「カッカッカッ」という豪快な笑い方も爽快でした。西村晃が二代目水戸黄門を演じたシリーズは、伊吹吾郎演じる格さん 野村将希演じる飛猿といったパワフルな登場人物が、敵の忍者と激闘を繰り広げるアクション性の高いシリーズでした。演じる黄門様は、上品な紳士であり、東野時代とは一味違った水戸黄門像を提示しました。「ほほほほほ」という笑い方も上品でした。佐野浅夫が三代目水戸黄門を演じたシリーズは、モノラル録音からステレオ録音、フィルム撮影からビデオ撮影へと新たな体裁に挑戦したシリーズでした。四代目と五代目については後述します。

さて昭和40年代に始まった長寿番組といえば『水戸黄門』の他にも『笑点』がありますが、初期を除く『笑点』と、第28部までの『水戸黄門』には、或る共通点がありました。それは、一度に何人ものレギュラー出演者を交代させないという方針です。番組を長く続けるとどうしても出演者の交代は避けられませんが、一度に何人もの出演者を替えずに少しずつ替えることで、番組のあり方を急激に変えて視聴者に戸惑いを与えることなく、番組を長期間に亘って続けることが可能となっているのです。初期を除く『笑点』と、第28部までの『水戸黄門』は、この方針を維持し、視聴者の支持を長年に亘って繋ぎ止めることに成功していました。しかし『水戸黄門』は、2001年に放送された第29部に愚かなことをやってしまったのです。

以下に『水戸黄門』のレギュラー出演者を纏めてみたので、まずはご覧ください。

水戸黄門

尚、『水戸黄門』のレギュラー登場人物は徳川光圀(水戸黄門)佐々木助三郎(助さん)、渥美格之進(格さん)、風車の弥七、うっかり八兵衛、霞のお新、かげろうお銀、柘植の飛猿、志乃、深雪、徳川綱吉、柳沢吉保、山野辺兵庫ら数多いが、全部取り上げるときりがないので、特に出番が多い水戸黄門、助さん、格さん、弥七、八兵衛、飛猿、及びくノ一を取り上げます。

この表をご覧戴くとお分かり戴けるように、『水戸黄門』はレギュラー出演者を同時に交代させるのはせいぜい2人まででした。しかし第29部では、由美かおる以外のレギュラー出演者を全員降板させるという暴挙に及んでしまったのです。あまつさえ、石坂浩二演じる四代目水戸黄門の衣装はそれまでと変わるわ、水戸黄門のひげはなくなるわ、(第30部でひげは復活)、従来よりも相対的に史実を重視した展開になるわで、それまでの『水戸黄門』からはかけ離れた番組になってしまいました。そのため、この時に多くのファンが離れることになります。史実に比較的忠実な『水戸黄門』があってもいいと思いますが、『ナショナル劇場 水戸黄門』として相応しいかどうかは別問題でした。
石坂は病気のために降板したため第31部では里見浩太朗が五代目水戸黄門に就任。第28部以前の『水戸黄門』に回帰しようとしましたが、今まで数々の剣士を演じた里見は水戸黄門役に相応しくないという意見、映像が鮮明すぎて時代劇に相応しくないという意見(実はこの意見は三代目水戸黄門の時代からあるのですが)などが視聴者から噴出し、もはや一度離れたファンを取り戻すことはできませんでした。どうやら視聴者が望む理想的な『水戸黄門』のイメージと、新作の『水戸黄門』の間にギャップが生じていたようです。

スポンサーであるパナソニックは2009年に三洋電機を子会社化するなどの情勢を経て、パナソニックドラマシアターの戦略も検討材料にせざるを得なかったと推測されますが、そういった事情を抜きにしても、『水戸黄門』の人気凋落は第29部から始まっており、寧ろそれから10年間もよく持ち堪えたと感心します。『パナソニックドラマシアター 水戸黄門』シリーズは終了しますが、時代劇は絶えず作り続けないと人材や技法などを後世に伝えることが困難になりますので、何かしらの時代劇制作を期待したいところです。

(文・コートク)