「うちの本棚」、今回は2000年代に描かれた『ウルトラQ』のコミカライズ。藤原カムイが描くリアルな「ウルトラQ」世界をご堪能ください。

放映から35年以上が経ってからのコミカライズ作品。この時期、初代『ウルトラマン』の新たなコミカライズ作品もいくつか描かれるなど、リバイバルブームとも言うべき現象があったことも事実であり、本書第2巻が刊行されたころには『ウルトラQ dark fantasy』という新テレビシリーズの放映もされている。


藤原カムイは原作であるテレビシリーズのイメージを再現すると共に、現在(本作が描かれた時点の)で辻褄の合う設定や構成を取り入れ、テレビシリーズよりリアルな印象のコミカライズ作品に仕上げた。またテレビシリーズに登場していた俳優陣に似せたキャラクターの絵柄も好印象である。

原作テレビシリーズ28本から6本(実際は「ガラダマ」と「ガラモンの逆襲」をミックスしているので7本)をコミカライズしているわけだが、作者があとがきで述べているように、構想としてはほかにも描きたいエピソードはあったようだ。いつか可能であれば全エピソードのコミカライズも見てみたいという気がする。

今回最もうまくまとめ上げていたと感じたのは、やはり「ガラダマ」と「ガラモンの逆襲」をミックスした1本だろう。ガラダマと呼ばれる隕石が、実はロボット怪獣の操縦装置であったというエピソードが、そのままセミ人間と称される宇宙人の侵略へと発展していく展開は違和感がない。「悪魔っ子」でもカムイ版独自のエピソードを付け足しているが、より分かりやすい話しになっているのではないだろうか。

それでも「バルンガ」などは原作テレビシリーズに及ばなかったような気がしてしまう。これはフィルム作品のシナリオや映像の迫力というものが勝っていたということかもしれない。

本作では「ご存じの『ウルトラQ』のコミカライズ」という前提もあるのか、特に登場人物に関する説明がないのも、始めてこの作品で『ウルトラQ』に触れる読者にはちょっと不親切かもしれない。もちろん万丈目がパイロットで後輩に一平がいて、新聞記者の由利子がいるというくらいの設定はわかるだろうが、こちらは原作のテレビシリーズも散々見ているので、未見の新しい読者はどうなんだろうかと心配になってしまうのである。

書 名/ウルトラQ
著者名/藤原カムイ
収録作品/第1巻・ペギラが来た!、2020年の挑戦、地底超特急西へ
     第2巻・バルンガ、悪魔っ子、ガラダマ
発行所/角川書店
初版発行日/第1巻・2003年11月1日、第2巻・2004年5月1日
シリーズ名/Kadokawa Comics A Extra


【文:猫目ユウ】
フリーライター。ライターズ集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
女性向けのセックス情報誌やレディースコミックを中心に「GON!」等のサブカルチャー誌にも執筆。ヲタクな記事は「comic GON!」に掲載していたほか、ブログでも漫画や映画に関する記事を掲載中。