「うちの本棚」、昭和ゴジラシリーズのコミカライズ作品を復刻したシリーズの第3弾『ゴジラVSメカゴジラ 決戦史』をご紹介いたします。桑田次朗の幻の『空の大怪獣ラドン』が収録されていることで本書の価値はググンとアップしているといえますが、それと同等くらいに巻末の怪獣デザインに関する資料も貴重です。


映画『ゴジラVSメカゴジラ』の公開に合わせて昭和ゴジラシリーズのコミカライズ作品を中心に復刻された単行本シリーズの第3弾。
シリーズ3冊で手軽に読むことのできなかった東宝怪獣映画のコミカライズ作品がかなりまとまって復刻されたのは嬉しいことだったが、その他の作品の復刻の機会が断えてしまったのも事実で、他の特撮作品の復刻も何かの形で実現してほしいものである。

今回は『ゴジラVSメカゴジラ』に登場する怪獣にからんだ作品として『ラドン』も含まれ、個人的に読んでみたかった桑田次郎の『空の大怪獣ラドン』が復刻されていたのが嬉しい。もちろん個人的な感想だけではなく、これは貴重な一冊となる収録だろう。

作品自体は絵物語になっていて、桑田もコミックの絵柄ではなく写実的な挿絵の画風で執筆している。『ゴジラの息子』を担当した中沢啓治は『ウルトラセブン』のコミカライズなども手がけていた。まぁすでに映画のゴジラの造形が初代のものからかけ離れてきた時期のものなので、中沢の描くゴジラも怖さは感じられないものになっている。

『怪獣総進撃』はこの単行本シリーズの他の巻にも堀江卓版が収録されたが、井上智&成田マキホ版のこちらは雑誌付録で読みごたえもある。もっとも映画そのもののストーリーを多少アレンジしたものにはなっている。

井上智は『黄金バット』『魔神バンダー』といった作品のコミカライズも手がけていた。
手塚調のキャラクターは馴染みやすいし怪獣も怖さが出ていて、コミカライズ作品の中ではなかなかイケてるのではないだろうか。

成田マキホは手塚原作のテレビ特撮シリーズ『サンダーマスク』で怪獣のデザインもしていた。
『ゴジラ対メカゴジラ』を担当したのは蛭田充で、怪獣ものではあるのだが蛭田が担当した『デビルマン』の印象がなんとなく匂っている。とはいえ格闘シーンなどのスピード感はダイナミックプロに関係する人なのだなと思わせてくれる。

最後は昭和ゴジラシリーズの最終作『メカゴジラの逆襲』。担当したのは古城武司で、ゴジラシリーズのコミカライズは2回目となる。映画ではサイボーグとなった桂の悲哀がよく描かれていたのだがコミカライズ版ではそこまで描くのは難しかったようで残念ではある。が、ストーリーそのものは分かりやすくなっていて年少のゴジラファンにはよかったのかもしれない。

さて本書巻末にはゴジラをはじめとする東宝特撮怪獣映画の、おもにデザインに関する資料が掲載されている。これだけでも特撮ファンには貴重なものだといえるだろう。
 

書 名/ゴジラVSメカゴジラ 決戦史
著者名/桑田次郎、中沢啓治、井上 智、成田マキホ、蛭田 充、古城武司
収録作品/空の大怪獣ラドン(「おもしろブック」1956年10月号付録
     怪獣島の決闘 ゴジラの息子(「少年」1968年1月号付録)
     怪獣総進撃(「まんが王」1968年7月号付録)
     ゴジラ対メカゴジラ(「月刊少年チャンピオン」1974年4月号)
     メカゴジラの逆襲(「月刊少年チャンピオン」1975年4月号)
発行所/竹書房
初版発行日/1993年12月27日
シリーズ名/BAMBOO COMICS


【文:猫目ユウ】
フリーライター。ライターズ集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
女性向けのセックス情報誌やレディースコミックを中心に「GON!」等のサブカルチャー誌にも執筆。ヲタクな記事は「comic GON!」に掲載していたほか、ブログでも漫画や映画に関する記事を掲載中。