「うちの本棚」今回は4コマギャグ作品でもお色気ものを得意とするあべこうじの初期作品『ムラサキ』です。その後のあべこうじ作品すべての原型がここにあるといえるでしょう。

 たぶん、あべこうじの最初の単行本。時期としてはいがらしみきおの『あんたが悪い』などと同時期にあたるが、個人的にはいしいひさいち以後の4コマ作家としては第3世代的な印象がある。

 女子高生の主人公ムラサキとその彼氏で大学生のヤマハくんを中心にした日常ギャグ作品であるが、途中からヤマハの先輩として登場するホンダという女子大生は、その後あべ作品の主要なお色気キャラの原型といえる。逆に言うとそのほかのキャラはその後かなり変化していき、ヤマハのようなキャラは登場しなくなっていく。

 集録作品中「時事編」「野球編」というのは、当時の時事や野球の話題を扱ったもので、この時期あべは「漫画アクション」でも時事をネタにした連載を持っていた。

 全体としてたわいのないギャグが中心になっているが、その後の傾向を見て取れるお色気ネタがけっこう含まれていたのが、改めて読み返してみて興味深かった。

 「ウィンドロード」はOMAKE版と表示されているが、キャラはムラサキだが、とも子という主人公の独立した短編といえる(4ページのショートストーリー)。大学生の主人公がひとりバイクでツーリングに出る話で、なかなかハートフルな作品だ。

 「忍者アホ丸」「忍者ギャルかえで」はともに独立した作品ではあるが、ともに登場する女の子キャラはムラサキであり「~かえで」はムラサキの忍者版と言ってもいいだろう。

 このように初期作品では大活躍だったムラサキというキャラが、その後影をひそめてしまったのはちょっと残念だ。

▼書名
ムラサキ(全2巻)

▼著者名
あべこうじ

▼収録作品
・第1巻:ムラサキ(その1)、ウィンドロード、ムラサキ(時事編)、ムラサキ(その2)、忍者アホ丸、あとがき
・第2集:ムラサキ(その1)、ムラサキ(野球編)、ムラサキ(その2)、忍者ギャルかえで、あとがき

▼発行所
竹書房

▼初版発行日
第1集・昭和58年7月30日、第2集・昭和58年8月30日

▼シリーズ名
バンブーコミックス

■ライター紹介
【猫目ユウ】

フリーライター。ライターズ集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
女性向けのセックス情報誌やレディースコミックを中心に「GON!」等のサブカルチャー誌にも執筆。ヲタクな記事は「comic GON!」に掲載していたほか、ブログでも漫画や映画に関する記事を掲載中。