「ハイジ」風バンガロー明けましておめでとうございます。昨年12月に始まった「建物萌の世界」通称「たてもえ」ですが、今年は本格的に展開していきますので、どうぞよろしくお願いします。

さて、新年最初の建物ですが、東京都心、日比谷にある小さめの建物を。

都心のオアシス、日比谷公園。その片隅に、ちょっとイイ感じの木造建築があります。

フェリーチェガーデン日比谷

ヨーロッパの別荘のような、見方によっては「アルプスの少女ハイジ」にも出てきそうなかわいい建物。現在の名前は「フェリーチェガーデン日比谷」という、某ウェディング会社が運営するガーデンウェディング会場となっていますが、もともとは1910(明治43)年11月に作られた、日比谷公園の管理事務所でした。設計したのは東京市(当時)の営繕課技師だった福田重義。1990(平成2)年3月には、東京都の有形文化財に指定されています。

建物下部は石積み風 階段を上がった所に入り口

外観は明治時代とあまり変わってないそうで、建物下部は、このような石積み風。この部分は物置などに利用され、階段を上がった上部に入り口があって、そこに居間などの居住部分があります。見晴らしをよくしてるんでしょうかね。ドイツ風バンガロー建築ということだそうですが、下部にある半円形の窓なんかが、かわいらしい印象を与えています。

半円形の窓

内部は、1976(昭和51)年に「公園資料館」、そして2006(平成18)年に現在の姿へと衣替えした際に改装され、残念ながらオリジナルの姿は残していません。このように、素敵な空間ではあるんですが……。

内装は改装されているため当時とは異なります

ただ、居住部分から階下に下りる階段の手すりは、100年前の建築当初のものだそうです。

100年前の建築当初の手すり

……一見すると、ただの古ぼけた木なんですけど、このシンプルな造形がむしろ、バンガロー的デザインに合ってるというか、手仕事っぽい歴史の重みを感じさせます。多くの人の手に触れたせいか、角が丸みをおびてますね。

外見のデザイン上の特徴というと、白い窓枠と出窓。これがいいコントラストを感じさせ、魅力的です。

白い窓枠と出窓がコントラストを感じさせる 白い窓枠と出窓がコントラストを感じさせる

屋根上には明り取りの窓があり、ワンポイントに。最初の写真を見ていただけるとよく判るのですが、ドイツ風バンガローとはいいながら、この明り取りの付く部分の屋根は、よく見ると日本家屋みたいな入母屋造(いりもやづくり)になってるところがユニークですね。

屋根上には明り取りの窓

日比谷公園という都会のど真ん中なんですが、こんな角度から建物を見上げると、なんだか自分が軽井沢にでもいるような気がしてきます。

都会のど真ん中にありながら外観は軽井沢にでも立っている様な雰囲気 都会のど真ん中にありながら外観は軽井沢にでも立っている様な雰囲気

これで『けいおん!』のムギみたいな「高原のお嬢さん」風の女性がいればカンペキ、って感じですね。貸切のガーデンウェディング会場として使われているので、こじんまりとした、あったかい式を挙げてみたい……と考えているカップルにもお勧めしたい建物です。きっと、いい思い出が作れると思いますよ。

■ライター紹介
【咲村 珠樹】

某ゲーム誌の編集を振り出しに、業界の片隅で活動する落ちこぼれライター。
人生のモットーは「息抜きの合間に人生」
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