「うちの本棚」第四十四回は、さいとう・たかをらに次ぐ劇画世代として活躍した南波健二の埋もれた名作『処刑人ゴッド』を取り上げます。

この作品をひと言で乱暴に言うと「南波健二版『ゴルゴ13』」である。
「ゴッド」のロゴマークが各章タイトルのところに配置したり、キャラクターの印象など『ゴルゴ13』を意識しているのは確実。


もっともこちらの方はゴッド自身がストーリーを進行させる役割を演じたりセリフも多く、冷徹なスナイパーというよりは人間的なキャラクターになっている。

第1話ではアンデスにゴッドと処刑対象者が乗った飛行機が墜落し、第2話では中東のテロリストと、当時の社会的な事件をヒントにしたストーリーも目立つ。3話からは日本を舞台にゴッドの生い立ちなどもからめて『ゴルゴ13』との差別化を計るかのような展開となっていく。

中東のテロ組織の一員として戦闘能力を鍛えたゴッドこと神一鬼だが、ある事件をキッカケにテロ組織を離れミスターGと名乗る男の指示のもと処刑人として世界で暗躍するようになる。そしてGの目的が達成されるとき、ゴッドの秘密も明かされる…。

この謎の人物の指示に従いつつ暗殺していくという展開は、松森 正&狩撫麻礼の『ライブマシーン』につながるような印象ではある。

貸本劇画そして週刊誌と劇画作品で活躍した南波健二ではあるがその単行本はあまり多くなく、現在入手できるものも『キック魂』『豹マン』程度というのはいささか残念である。この『処刑人ゴッド』もどこかで復刻してくれないだろうか。

書 名/処刑人ゴッド
著者名/南波健二
収録作品/処刑人ゴッド・全5話
発行所/芸文社
初版発行日/昭和49年3月31日
シリーズ名/芸文コミックス

■ライター紹介
【猫目ユウ】

フリーライター。ライターズ集団「涼風家[SUZUKAZE-YA]」の中心メンバー。
『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』などの単行本あり。
女性向けのセックス情報誌やレディースコミックを中心に「GON!」等のサブカルチャー誌にも執筆。ヲタクな記事は「comic GON!」に掲載していたほか、ブログでも漫画や映画に関する記事を掲載中。