「うちの本棚」第三十九回は、「桑田次郎版『鉄腕アトム』」ともいえる『弾丸トップ』をご紹介いたします。

『弾丸トップ』のタイトルで連載された作品を完全収録したもの。とはいえ「トップ」というロボットが登場する作品はこれ以前にもあり、改めて連載作品として発表されたようなので、今回収録された原稿では、トップというロボットやその生みの親(?)である東博士とその息子たけしなどについて読者にとくに説明はなされていない。


空に浮かぶ要塞のような「島」を基地に世界征服を企む「空魔Z」、海底基地から世界征服をもくろむ「海底魔城」のサタンXなど、どことなく『ナショナルキッド』を彷彿とさせる悪役が登場している。また最後のエピソードになる「夜行怪人」は、同じ桑田次郎の『キングロボ』のアイデアに通じているようであるし、人魂のような宇宙生物が乗り移るロボットは『8マン』に登場する007にも似ている。

この単行本では、帯やカバー裏表紙の解説で「桑田次郎版『鉄腕アトム』」と触れ込んでいるが、確かに少年の姿をした知能を持ったロボットという点では類似点はあるものの、それを言ってしまったら同じような作品はたくさんありそうな気がする。むしろこの作品ではトップというロボットの活躍以上に、東博士やたけし少年が活躍しているということに注目してもいいのではないだろうか。

同時収録の短編2作は、桑田次郎が一番絵的にノッていたと思える70年代の作品。とくに『朝は死んでいた』は『デスハンター』と同時期でもあり、これまで未収録だったのが惜しまれる。内容は石ノ森章太郎的なホラーSFといったところか。『地底にうごめく』は秘境もののホラーSF。こちらは桑田の『大秘境』などに印象が似ていた。

書 名/弾丸トップ
著者名/桑田次郎
出版元/パンローリング
判 型/B6判
定 価/1800円+税
シリーズ名/マンガショップシリーズ
初版発行日/2008年4月2日
収録作品/弾丸トップ・ぼくら(講談社)1958年1月号~12月号
     朝は死んでいた・週刊少年キング(少年画報社)1973年3号
     地底にうごめく・ビッグマガジン(秋田書店)1970年No.3

■ライター紹介
【猫目ユウ】

ミニコミ誌「TOWER」に関わりながらライターデビュー。主にアダルト系雑誌を中心にコラムやレビューを執筆。「GON!」「シーメール白書」「レディースコミック 微熱」では連載コーナーも担当。著書に『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』など。