「うちの本棚」、今回は幻の特撮ヒーロー『豹マン』のコミラカイズ、桑田次郎版を取り上げます。

ピープロ企画による特撮テレビ番組として準備が進められていた『豹マン』は、「少年マガジン」そして「ぼくら」でコミック版が先行して連載される共に巻頭グラビアでもパイロットフィルムのスチールが紹介されるなどして、当時の子供たちは放送のスタートを心待ちにしたと思うが、残念ながら本編は制作されることなく消えてしまった。

コミック版は「少年マガジン」連載の南波健二のものがひばり書房から新書判全2巻で刊行されただけで、桑田版はまとめられないままになっていたが、サンコミックスでようやく第1話と第2話がまとめられ、マンガショップシリーズで未収録だった第3話が印刷物からの復刻という形で収録され、完全版として単行本化された。
 
知り合いの滝村博士が、ひとり娘のちずるを人質にとられ、超人間の研究成果を狙われていることを知った秋月探偵は、博士に変装してちずるを救出に行くが、瀕死の重傷を負ってしまう。秋月を助けるため博士は未完成だった超人間として蘇らせるのだが…。

新しい生命として豹の能力をその体に宿した秋月は、全身が豹のような姿になってしまう。しかし意思の集中により人間の姿にも、豹マンの姿にもなれることを、豹の数十倍の能力を発揮できることを知り、正義のために使おうと決心するのだった。
 
改めて本作を読んでみると、その後石川 賢によって描かれた『魔獣戦線』のアイデアに近いものを感じた。特に第2話に登場する複数の動物をひとつに組み合わせるというのは「魔獣」そのものと言っていいだろう。

また本作は主に付録として発表されていたためコマ割りも大きく、桑田のスピーディーな描線が生き生きとでているように思われる。ヒーロー作品を多く描いた桑田だが、この『豹マン』はその中でも屈指の作と言っていいのではないだろうか。ストーリー運びやコマ割りのテンポは言うまでもなく、「豹マン」というキャラクターが実に生き生きとしている。

パンローリング版は完全収録ではあるが、初版では数か所ページの入れ違いがある。まことに残念である。

初出/講談社・ぼくら(1968年1月号~7月号)
書誌/朝日ソノラマ・サンコミックス「桑田次郎傑作選」
   パンローリング・マンガショップシリーズ

■ライター紹介
【猫目ユウ】
ミニコミ誌「TOWER」に関わりながらライターデビュー。主にアダルト系雑誌を中心にコラムやレビューを執筆。「GON!」「シーメール白書」「レディースコミック 微熱」では連載コーナーも担当。著書に『ニューハーフという生き方』『AV女優の裏(共著)』など。