毎回ミリタリーな話題をお届けしている、「鉄砲蔵のミリタリー魂」。第十四回目となる今回は、鎌倉にある山海堂武器屋をレポート
この山海堂武器屋という店、本来は鎌倉の大仏前のお土産屋さんなのだそうですが、店主がロールプレイングゲームや中世の剣や火縄銃、フリントロック銃等武器の愛好家で、観光のお土産のついでに取り扱ったところ評判となり、いつの間にか半分武器屋、半分お土産屋となった世にも珍しいお店です。


「山海堂武器屋は鎌倉大仏の目の前」、と山海堂の公式ホームページにあったので、その大仏を頼りに最寄りの長谷駅で下車。
もう駅に降りた途端に大仏観光一色です。

駅員さんから、「歩いて10分なのでバスを待つより歩いた方がかえって早い」と説明を受け、歩いて向かったところ…オシャレな土産物屋にレストラン、喫茶店で一杯。しかも安い!
修学旅行の小中学生が多いからこの値段とのこと。ついでに僕も気に入ったミサンガを購入。

その後は、リュックを背負った子供たちの行列を辿って約10分ほど徒歩。

あった!もっと迷うかと思ったけどあっけないほど右側に発見。
遠目に見ると標準的なお土産屋ですが店先から10m程に接近してみると中世ヨーロッパの鎧兜やら刀やらが陳列してあるのが見えました。

中へ入ってみると壁やら天井、ガラスのショーケースに刀剣や火縄銃、フリントロック銃などの武器が所狭しと並んでいました。本来はお土産屋さんとの店員さんの話ですが、店内の様子はまるでドラゴンクエスト等のゲームに出てくる武器屋さんでした。さすがにマニアックな店主さんです。

今回の取材は、SMS「おたくま」の隊員仲間からの捜索依頼でエクスカリバー(1万6千円)と斬馬刀(9万円)を探すことが目的でもありました。
ちなみに「エスクカリバー」とは、イギリスのアーサー王伝説に登場する中世の剣で、世のため人のために戦う分には無敵の攻撃力を誇るものの、私利私欲のために使用すると折れるという伝説の剣です。この形状の剣は実際に普通の鉄の剣としても存在し、中世の騎士が斬り合いの戦争に使用しておりました。

そして斬馬刀(ざんばとう)は漫画などで馬を武士ごと一気に切断する武器として描かれていますが、実際にはそのような使い方はなく、長いリーチを生かして騎馬からの攻撃の届かない距離から馬に脚払いをかける使い方をしたものです。

伝説の剣に伝説の刀。日本の神奈川県には、世界でも稀にみる名刀達が気軽に買える土産物屋があるようです。

そしてお次ですが、店内には16世紀~17世紀ごろの火縄銃、フリントロック銃も充実。もちろん、火皿に穴はあいておらず、発砲はできませんが。
そもそも火縄銃は16世紀ごろに種子島に漂着したポルトガル人によって伝来。弓矢より貫通力、命中精度ともに勝っており、弓矢ほど訓練も必要ないことからその後の戦国時代の歴史を動かしました。

下でご紹介しているフリントロック銃は17世紀ごろに発明され、最近では「パイレーツ・オブ・カリビアン」という映画で登場して話題になった銃。
火縄銃のように火種を用意しておく必要が無い為、発射準備に手間がかからず、密集隊形を取っても隣の兵士の銃に引火しない、火打ち石の当たり金部分が火蓋を兼ねていて発射と同時にハネ上がる構造のため雨の影響を比較的受けにくい、などの利点のある銃でした。

店員さんによると一番の売れ筋であるというレイビア(1万2千円、片手で取り扱う、主に突き刺し用の剣)と木の大剣(2万8千円、ファイナルファンタジー等ロールプレイングゲームには登場するものの、実在しない架空の剣。この写真では木製ですが、ゲーム中ではミスリル銀等、架空の材質)。

コスプレイヤーというより武術家の方がよく買ってゆかれるそうです。最初は領収書切ってもらっていた客も2回目、3回目には「領収書は結構」というそうです。自分用も購入されている、ということでしょう。

店内の半分はお土産屋ですが、やはり武器をモチーフとしたお土産が充実です。ここの苦無(「くない」と読む。戦国時代の忍者がナイフや短剣として使用する他、敵に投げて手裏剣のように使用。壁に上る為のスパイクや穴を掘るスコップとしても使用。)はゴム製ですがここの店員さん、見本市で先日、逮捕された鋼製苦無所持の会社員の被告と出会って「こんなことしていたら捕まるよ。最近、秋葉原事件の影響で規制が厳しくなっているし。」と忠告されたそうです。

店員さんの方が上を指さしておられたので見上げると……
なんと!有名どころの漫画家のサイン色紙が天井一面に!多くの漫画家がこのお店に来店、商品の数々に感心され、来店の記念に直筆色紙を提供してくれたそうです。
エアーガン界でもゴルゴ13の作者、”さいとうたかを”さんがエアーガンデザイナーの小林 太三(こばやし たぞう)さんの意見を採り入れ、ゴルゴの愛銃を持ち換えさせたエピソードもあるし、漫画家と武器系玩具メーカーも深く連携しあっていますね。

今回の取材、オタク趣味専用SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サイト)の「おたくま」内での情報交換で山海堂を知り、赴く運びとなりましたがこのサイトはオタク分野のコアな情報が豊富に手に入るほか、ミリタリー、サバイバルゲーム情報の一環として猛暑の際の体調管理の方法等のお役立ち情報の交換も行え、わが人生に多くの見識をもたらしてくれました。
同時に今回の取材を通して私たちミリタリーマニアの趣味が一般の方々に受け入れられ、かつ多くの漫画家にも愛されていることを実感できました。

それではまた次回をお楽しみに。

▼鎌倉山海堂武器屋
神奈川県鎌倉市長谷4-2-26 (資)山海堂商店
電話・0467-22-1357
ファックス・0467-24-6640
https://www7.big.or.jp/~abura/SANKAI.HTML

(文・写真:鉄砲蔵)