「ナナメ観 特撮映像館」、第十七回目となる今回ご紹介するのは、いろいろな意味で「昭和ゴジラシリーズ」の異色作『ゴジラの息子』です。本作はある意味ゴジラシリーズの中で最も異色な作品。

ゴジラの子供が誕生するという点だけいえば、ゴジラも生物であるから疑問はないが、生まれてきた子供が息子(オス)、ゴジラがお父さん(オス)というのはどういう根拠なのか?(笑)。というより生殖に重要なメスの存在はどうなっているのだろうか。


この作品、劇場公開時には観ておらずテレビ放送があったかもしれないがそれも観なかったので、ずっと見逃していた作品だった。もっともゴジラの息子として登場するミニラがどうしても好きになれず、どちらかいえば「観なくてもいい」作品という位置づけだった。とはいえゴジラ映画の一本であることには変わりはないので1度観てみたいというのはあった。

この作品で登場するのはミニラのほか、カマキラスとクモンガという昆虫怪獣で、どちらもこの作品がデビュー。ただ巨大な昆虫というだけなのだがインパクトは強かったようだ。もっともネーミングのよさもあったのかもしれない。

国連による食料危機に備えた気象コントロール実験というものが基本線にあり、それを秘密裏に南海の孤島ゾルゲル島で行っている研究チームは、島から時折出される謎の妨害電波に悩まされている。それが親を呼ぶミニラの脳波だったというもの。
気象コントロール実験を悪用されたら原水爆に匹敵する兵器になる、と危惧するあたり、ここ数作品で忘れていたゴジラ映画のテーマを思い出したような感じでもある。

ミニラのイメージが強すぎるのとゴジラの造形がいまひとつ(これは個人的な感想)なことで作品全体に地味な印象があったのだが、今回観直してみてテンポや構成はまったく悪くない気がした。いやむしろ「見せる」作品と言ってもいいくらいだ。

この作品で有川貞昌が特技監督デビューをしているのだが、特撮もしっかりしていてカマキラスやクモンガを単に大きな昆虫にしていないところは感心した。
またキャストでは、高島忠夫、久保 明、佐原健二、平田昭彦と特撮映画のお馴染みの顔ぶれが揃っている。

監督/福田 純、特技監督/有川貞昌、特技監修/円谷英二
キャスト/高島忠夫、久保 明、前田美波里、平田明彦、土屋嘉男、佐原健二、ほか。
1967年/日本/86分

(文:猫目ユウ)