タイ空軍は2019年11月14日(現地時間)、国産無人偵察機RTAF U1の飛行隊と、F-5E/F戦闘機を独自に改修したF-5THを装備する飛行隊の発足式典をドンムアン空軍基地で開催しました。式典では仏教国らしく、僧侶が機体に灌頂の儀式を執り行っています。

 タイ空軍では今後20年を見越しての近代化を図っており、最新の主力戦闘機としてスウェーデン、サーブのグリペンC(単座型)/D(複座型)を導入しています。この一環で情報収集能力を高めるため、自国で開発した無人機(UAV)がRTAF U1(アール・ティー・エー・エフ・ユー・ワン)です。

 国内産業の近代化を図る国策「タイランド4.0(Thailand4.0)」もあり、RTAF U1の開発には、航空産業だけでなくエレクトロニクス産業も参画。タイの防衛企業RVコネックスが開発した無人偵察機「スカイスカウト」をベースにしており、機体設計や制御ソフトなど90%が国内での自力開発。遠隔操縦システムは装置も制御ソフトも国内開発されたものが採用されています。

 RTAF U1は8000~1万mの高度を飛行する無人戦術偵察機で、全長3.6m、全幅6m。2ストロークの水平対向2気筒300ccエンジンで後部のプロペラを駆動します。運用半径は100km。約8時間の飛行が可能です。

 タイ空軍ではワッタナーナコーン基地の第206飛行隊で17機を運用し、軍用の偵察だけでなく、国内での災害において被害状況の把握などの任務にも活用される予定だといいます。

 これと合わせて、第21航空団の第21飛行隊にはF-5E/Fを独自に近代化改修したF-5TH“スーパーティグリス”(「ティグリス」は英語の「タイガー」)が14機配備されました。タイの航空メーカーTAI(Thai Aviation Industries)とイスラエルの防衛企業エルビット・システムズらが共同で実施した近代化改修では、レーダーを含む火器管制システムが強化され、タイ独自の戦術データリンクシステム(Link-T)も搭載。グリペンC/Dとの連携も可能な4.5世代戦闘機と同等の能力を獲得したとしています。

 改修により、ディール(ドイツ)製のIRIS-T単距離空対空ミサイル、ラファエル(イスラエル)製のI-Derby中距離ミサイルと、いずれも目標を自機の正面に捉えていなくても発射・追尾可能なオフボアサイト能力を持つ「撃ちっぱなし」式のミサイル運用能力を獲得。また、ラファエル製“ライトニングIII”照準ポッドにより、エルビット・システムズ(イスラエル)製のLIZARDレーザー誘導爆弾も運用可能となりました。

 式典でマナト・ウォンワット空軍参謀総長は、両機の就役について、空軍にとって重要なマイルストーンだと語り「全国各地から多くの人々が集まり、技術を結集したことは、自立したASEAN最高レベルの空軍を目指す今後のタイ空軍の発展に重要です」と、官民が協力した結果を強調しました。


 
 仏教国であるタイらしく、僧侶によってRTAF U1とF-5THに対し灌頂の儀式が行われ、両機種は一人前の軍用機(作戦機)として第一歩を踏み出しました。

 タイ空軍で運用されているF-5E/Fは1970年代の製造ですが、このF-5THへの改修により、機体寿命は15年ほど伸び、2035年まで現役にとどまる見込みです。

<出典・引用>
タイ王国空軍 プレスリリース
Image:タイ王国空軍

(咲村珠樹)