今、野良猫は「地域猫」という形で全国の様々な自治体や団体が保護する方向で活動に取り組んでいます。その活動に取り組んでいる「なら地域ねこの会」がフェイスブックに投稿した内容に、思わず涙した人が続出しています。

 7月9日に投稿された、6月の活動報告のひとつ。その中に、人懐こいキジトラくんを保護し、引き取りたいと相談した人のうちの子となったという投稿がありました。そのキジトラくんはとても人懐こく、色々な人から餌をもらっていたようでした。たくさんの人に愛されていたかもしれないキジトラくん。なら地域ねこの会は、その人たちを心配させることにならないように、キジトラくんがいつも餌をもらっていた場所にお手紙を貼ることにしました。

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ボクに餌を下さっていた方々へ
「本当にありがとうございました」
挨拶もせずにここを去ることをお許しください。
と申しますのは、私を家族にしたいと言ってくださる方がおられまして、野良猫稼業も先行き厳しい状況、私を捨てた人間達をもう一度信じて、身をゆだねることになりました。その家族は、責任と優しさを持って私と遊んでくれることを誓いました。どうか他の仲間にも良い里親さんが現れますように。
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 この手紙の画像は他のSNSにまで拡散され、大きな話題となりました。そして、さらにこの数週間後、普段から個人で地域猫の保護活動をしてくれていたという人から、お返事が。その人は去勢・避妊手術をして元の地域に戻す、TNRという活動をその付近でコツコツとひとりで行っていたのだそう。キジトラくんも、TNRの予定を入れていたそうです。手紙を見たその人は、キジトラくんが引き取られていった事をとても喜んでくれたそうです。

 この投稿は、「保護された子たちはほんのひと握りの限られたラッキーな子達。今はとにかくTNRでこれ以上不幸な命を増やさないことを徹底するしかありません。いつの日か、野良猫と言う言葉が無くなる日がくるように。優しい手を差し伸べてくれる方がどんどん増えますように」という言葉で締めくくられています。

 この投稿を読んだ人たちからは、感動したという声が続々と届き、たくさんの人がこの投稿をシェアし、いいねを付けています。フェイスブックの他のSNSでも、後日談含めて感動した、いい人がいて良かった、などといったコメントがあがっています。

 なら地域ねこの会は、常時活動しているのは実質4人、そして多くのボランティアの手によって野良猫の保護やTNRなどの主な活動に取り組んでいます。時には啓発活動や、奈良市保健所から委託譲渡を受けるなども行っています。メンバーの方によると、会自体が小規模なので、個人活動と同様、活動資金はほぼ自費で賄っているのだそう。ボランティアで参加している人たちは、保護猫の預かりや譲渡会のお手伝いなどを買って出てくださっているのだそう。

 奈良県は、全国的に見ても動物愛護に対する考えが遅れている地域がかなり多いそうで、「”これから奈良県に地域猫が沢山誕生しますように”との願いを込めて会の名前をつけました」とメンバーの方はコメントしています。こういった活動は主導して行う自治体と、あまり主導的ではない自治体とでその差が大きく開いているように筆者個人としては感じられます。

 筆者の住む名古屋市は、殺処分ゼロを目指していますが、犬の殺処分ゼロは達成できたものの、猫は保護センターに持ち込まれる頭数も多く、なかなかゼロ達成までいかないのが現状。しかし、市が民間の保護猫カフェと提携して積極的に取り組んでいるので、殺処分の頭数はかなり減ってきています。

 こうした取り組みは、草の根的に広がりを見せつつありますが、手術費用や餌代、地域清掃などに使える時間など、お金と時間の問題はどの会にも共通している悩みであると言えそうです。

 できれば自治体からの充分な補助が受けられ、全ての猫が自分の家といえる場所に住めるようにしてあげられるのが本望。今は野良猫が多い地域も少なくなく、そうした願いは難しくても、こうした取り組みがもっと広がることによって、いずれは全ての殺処分をゼロにできるのではないだろうか……。そんな風に思います。

 なら地域ねこの会では、毎月譲渡会も開いています。近くにお住まいの人で、興味がある人は、一度覗いてみてはいかがでしょうか?

<記事化協力>
なら地域ねこの会 フェイスブック:@naranekonora ツイッター:@nara_chiikineko

(梓川みいな)