テレビ朝日系で放送中のスーパー戦隊シリーズ第43作「騎士竜戦隊リュウソウジャー」の劇場版、「騎士竜戦隊リュウソウジャー THE MOVIE タイムスリップ!恐竜パニック!!」が、2019年7月26日より全国の劇場で公開されます。5月22日、都内でその製作発表会見が行われ、監督とレギュラー出演者のほか、今作のゲストである北原里英さんと佐野史郎さんが登壇し、作品について語りました。

 2019年3月から放送が始まった「騎士竜戦隊リュウソウジャー」にとって、これが初めての劇場映画作品。テレビシリーズではスーパー戦隊の原点に立ち戻り、王道のスタイルで物語が展開していますが、劇場版では物語の原点である「エピソード0(ゼロ)」となるストーリーが語られます。つまり巨大隕石が地球に落下してきた6500万年前に何があったのか、そしてテレビシリーズに登場するガイソーグはどのようにして誕生したのか、この時代にタイムスリップしたコウたちリュウソウジャーが知っていくというお話です。テレビでは説明されてこなかった、作品世界の背景が明らかになると同時に、今後のテレビシリーズでも劇場版で描かれた物語が深く関わってくるという、ファンには必見の作品となりました。


 会見ではまず、本作の監督を務めた上堀内佳寿也さんと、レギュラー出演者の面々が登場。コウ(リュウソウレッド)役の一ノ瀬颯さんは「リュウソウジャー」がデビュー作なので、映画の製作発表会見も初めての経験。テレビシリーズと映画の撮影で違った点は?という質問に、緊張で一瞬頭が真っ白になったようで、回答が所々カミカミになってしまい、他のキャストから「落ち着いて!」と突っ込まれる場面も。「映画でも、ドラマとそれほど変わらない感じで演じることができました。6500万年前と現代を行き来する壮大な物語で、アクションシーンも迫力あるものになっています。個人的には最後のシーンで、コウが今までの(物語における)経験を踏まえて、どういう表情になっていくのか、というところが難しくて、何十回もテイクを重ねてしまったんですけど、そういう(NGを重ねた)ことを念頭に置いて見ていただけるといいなと思います」と、撮影の苦労も交えてコメントしてくれました。


 メルト(リュウソウブルー)を演じる綱啓永さんは「今回(福井の)恐竜博物館で撮影をしたので、等身大の恐竜を見ながらお芝居をするというのは、テレビではまだなかった」と映画ならではの違いを語り、物語の見どころとして「途中、諸事情があってレッドと、ブルー、ピンク、グリーン、ブラック4人で分かれるシーンがあるんですけど、そこでレッドがいなくなったことによって、メルト(ブルー)がレッド的な役割を担うことになって。今までコウとアスナを引っ張ることはあったんですけど、トワとバンバを引っ張ることはなかったので、メルトだったらどうするか、すごく考えてお芝居をしたので、そこを見てもらえれば」と、メルトの心理描写を挙げていました。

 アスナ(リュウソウピンク)役の尾碕真花さんは、映画はドラマと環境が違ったと話し「東京はもう本当に暖かくて撮影もしやすい時期だったんですけど、福井とかは本当に寒かったですし、山の上で撮ったシーンとかは雪も降ってましたし、別の日に撮った時は強風と豪雨もあって、本当に(気候面での)環境が違って……。失敗しちゃいけないというのもあったし、みんなが一体となって集中した撮影でした」と、過酷なロケについて語ってくれました。

 トワ(リュウソウグリーン)の小原唯和さんは、映画について「テレビで普段楽しんでいる方も、そうでない方も劇場に足を運んで、リュウソウジャーを見にきていただけるように、気合を入れて撮影に臨みました。クライマックスのシーンで、普段リュウソウジャーの中では年下で、いつも兄さん(バンバ/リュウソウブラック)たちについて行ってる、って感じなんですけど、このクライマックスではトワが叫ぶシーンもあったり、普段のテレビ版では見られないトワの姿も見られるので、そこに注目して見て欲しいと思います」と、映画版で見せるトワの活躍をアピールしていました。

 バンバ(リュウソウブラック)役の岸田タツヤさんは、小原さんのコメントを聞いて、しみじみと「一番(コメントの受け答えが)しっかりしてるね……スゴイね」とキャストたちの笑いを誘いつつ、映画については「映画版ということで、かなり豪華な環境で演らせていただいたんじゃないでしょうか。福井にロケにも行きましたし、みんなで泊まって、すごく時間をかけて演らせていただけた作品だと思います。なにより映画を作って公開するという発表に、これだけ(100人以上の取材陣が)集まってくれるというのは……ここから写真撮りたいくらいです」と、取材陣の多さからも映画の大きさを感じていた様子。作品の見どころについては「リュウソウレッドからリュウソウブラックまで、5人のアクションシーンがあるんですけど……アクション(の撮影)というのは、爆発やワイヤーアクションなど難しいものを何回もテストして撮影するものを、ワンカット(長回し)でレッドからブラックまで、爆発とかワイヤーアクションとかを全て入れているところがあって。カメラマンさんまでワイヤーで吊られて一緒に上に移動して撮ったりとか、それを全てワンカットで撮影していて……。完成した映像を見せてもらった時は、まさに“圧巻”でしたね」と、アクションシーンの長回しに注目してほしいと語っていました。

 龍井うい役の金城茉奈さんは「実は(映画の)最初から『ういちゃんねる(ういが配信している動画サイト。かなり面白くない内容で、初めて見たコウが驚きのあまり固まってしまったことも)』が入ってまして。ういちゃんねるで、どう福井の魅力を伝えようかとか、恐竜さんたちとういちゃんねるを盛り上げるためにどうしようかとか……。あと、カナロとの初めてのシーンで、私自身もカナロがどういう人なのか全然知らなかったので、すごく(心臓が)バクバクして、そして女の子を本当に口説いてて……あー、ヤリ手だなと思ったりして」と映画について語り、報道陣からも笑いがこぼれました。

 テレビシリーズの第14話から、追加戦士として登場するカナロ(リュウソウゴールド)を演じている兵頭功海さんは、まず金城さんのコメントについて「あの……まず、現実では口説いてないです(笑)」と、あくまでも劇中のカナロ(『婚活』に精を出しているというキャラなので、手当たり次第に女性に声をかける)としての行動であることを強調。また兵頭さんにとって、映画の撮影の方がテレビの撮影より先行して始まったこともあり、これが初めてのリュウソウジャーだったそうです。「5人はすでに仲良いですし、やっぱ撮影現場の雰囲気にも慣れていて、その中に入っていくのはすごく不安だったんですけど、優しく受け入れてくれて……」と、スムーズに入っていけたことが良かった様子でした。しかしロケなどで撮影が終わった後、撮影を見ていた子供たちがたくさん寄ってきてくれたそうですが「自分は(カナロとして出演することが)発表されてなかったので、子供たちは(兵頭さんが)誰かわかんなくて。ほかの(一ノ瀬さんら)キャストの方には、みんな『わー、レッドだー!』みたいな感じで行ってて、それを見て(子供に対する影響力が)すごいなと。そして自分の方にも『ついでだから握手しとく』みたいな(笑)」と、存在が明かされる前ならではの悲哀も感じたそうです。

 自己紹介で「リュウソウ茶色」と周りを笑わせた龍井尚久役の吹越満さんは、若いキャストたちについて「僕の方から若いみなさんの成長を……っていうんじゃなく、逆にうらやましいなと思って見ていました」と告白。さらに「みんなに負けないように、真剣に“傷跡”を残そうと。テレビシリーズのプロットは固まっているとは思うんですけど、東映の上層部が(映画での吹越さんを見て)『この吹越ってのをメインに!』って途中からストーリーが変わっていくぐらいの傷跡を残そうと思って。最終的に『地球を救ったのはリュウソウ茶色(吹越さん演じる龍井尚久)だった!』ってくらいの勢いで演ってますから。(リュウソウジャーたちに向かって)潰されないように!」と、メインに比べて少ない登場シーンながらも全力投球したことを語ってくれました。

 本作の監督を務めた上堀内佳寿也さんは、テレビシリーズの第1・2話の演出も手がけています。今回の劇場版について「さっき尾碕さんからもありましたが、撮影環境がとにかく過酷でした。豪雨の中(撮影を)普通にやりましたし……それはもちろん物語の設定上、生きてくるから撮影を決行したわけですけど、僕は雨が降っても(映像をチェックするためモニターのある)テントの中にいたりするわけですが、キャストの皆さんは雨ざらしの中、必死にお芝居をしてらっしゃいました。みんな(そういう環境の中、演技で)食らいついてきてくれましたね。だからこそ、そこから見えてくる感情というのもあると思うので。そして今回は、タイムスリップというものの壮大感を意識しています。キャストの皆さんの感情や、壮大な映像などを通じて、6500万年前を劇場で疑似体験していただければ」と語り、撮影を通じて得るものが大きかったことを感じさせてくれました。

 続いて、今作でゲスト出演する佐野史郎さんと北原里英さんが登場。6500万年前のリュウソウ族で、北原さん演じるユノの父、ヴァルマ役の佐野さんは2012年1月公開の「海賊戦隊ゴーカイジャー対宇宙刑事ギャバン THE MOVIE」、2016年12月公開の「仮面ライダー平成ジェネレーションズ Dr.パックマン対エグゼイド&ゴーストwithレジェンドライダー」に続き、東映特撮テレビドラマシリーズの劇場版としては3作品めの出演。これについて、特撮ファンとしても知られる佐野さんは「東映さんの特撮シリーズに3度目の出演をさせていただいて……お声がけいただいたことがホント嬉しくて……プライベートでもこういう(特撮の)世界が大好きで。子供の頃から“悪役”が好きで、ヒーローよりも悪役の方に感情移入してしまう子供だったので……。いやぁ、こうして6500万年前のリュウソウ族、ヴァルマを演じさせていただいて、自分の中では集大成的な意味合いで撮影に臨ませていただきました」と発言。

 また、今作の撮影については、開口一番「過酷でした(笑)」と語り、上堀内監督が「ホントすいません」と平謝りになる場面も。「とにかくまぁ……寒い(笑)!あまりにも寒いので、ちょっと何をやってるのか分からなくなって……口もあんまり回らなくなっちゃうし、あれ?『ちょっとオレ、年取ってボケてきちゃったかな?』って思って不安になるぐらい。記憶なくなっちゃうよね」と続けると、ユノ役の北原さんも「記憶なくなりましたよね」と同調。かなりの寒さだったようです。あまりにも撮影環境の過酷さを物語る話が続くので、監督も慌てて「ちょっとやめてもらってもいいですか(笑)?ヤバい監督だと思われちゃうんで」とストップをかける事態に発展しました。しかし、こんな過酷な撮影環境でも、佐野さんによると「上堀内監督の妥協なき演技指導が……僕も何十年(俳優を)やってますけど、これほどまでに丁寧に指導される経験ってのは久しくなかったので、すごく楽しく、嬉しかった」そうです。

 6500万年前のリュウソウ族で、佐野さん演じるヴァルマの娘であるユノを演じた北原さんは、今年別のドラマ作品でも佐野さんと親子役だったそうで「今年入ってから、実の父親よりも長く会ってるんですよ。だから本当にお父さんの気持ちでお芝居させてもらいました」とコメント。また共演したレギュラーキャストの皆さんについては「本当にテレビで見てるように仲良くて、常にわちゃわちゃしてて、一緒にいると自分も無邪気な気持ちを取り戻せるというか。一緒にいてすごく楽しかったです」と語ってくれました。



 次にヒーローものに出演するとしたら、という質問に「悪役はマストで」とブレない信念を見せた佐野さん。重ねて「(他社作品を含めて)ほかの特撮ものにもだいたい出演させていただいてると思うんですが、これ以上欲張ってどうするんだと言いながらも、気になってるのは『8マン』とか、あと東映さんでいうと戦隊ものの元祖とでもいうべき『忍者部隊月光』※ってのがあったんです。それをもう1回ね……(テレビ)シリーズ化、それがダメなら映画化していただけれんば、ものすごい悪役で。こう……過去の侍の姿で現代に蘇った落ち武者みたいな、何をやってもかなわない、みたいな役をやってみたいですね。あ、あとは吸血鬼ものかな。時代物で、お城に棲む吸血鬼みたいな、悪い殿様が。そこへ忍者部隊がね……」と、特撮ファン、吸血鬼(ゴシックホラー)ファンぶりを炸裂させていました。

※タツノコプロの創設者吉田竜夫のコミックを原作として1964年~1966年にフジテレビ系で放映された特撮ドラマ。実はテレビシリーズは東映ではなく国際放映が手がけ、1964年7月公開の劇場版が東映で製作された。正義と世界平和を守ることを目的とする「あけぼの機関」に所属する伊賀・甲賀忍者の末裔で組織された忍者部隊が主人公で、水木襄演じる忍者部隊のリーダー月田光一のコードネームが「月光」。ちなみに「あけぼの機関」の機関長を演じたのは後に「ウルトラセブン」でウルトラ警備隊のキリヤマ隊長を演じた中山昭二。


 佐野さんの特撮愛、悪役愛に飲み込まれそうな会見となりましたが、最後にコウ役の一ノ瀬さんが「ドラマ版とは一味違った劇場版ならではの壮大なスケールのお話、またそれに負けない迫力ある戦闘シーン、僕たちの熱い演技など非常に色濃いものとなっております。新たな戦士カナロの兵頭くん、そしてゲストの佐野さん、北原さんを迎え、監督はじめスタッフが魂込めて作った作品ですので、ぜひ一度ではなく何度も劇場に足をお運びください」と締めくくりました。映画「騎士竜戦隊リュウソウジャー THE MOVIE タイムスリップ!恐竜パニック!!」は「劇場版 仮面ライダージオウ Over Quartzer」とともに、7月26日より全国で公開される予定です。

取材協力:東映株式会社

(取材:咲村珠樹)