2019年4月30日(現地時間)、アメリカ中央軍司令部(CENTCOM)は、4月中旬から初めて中東に展開しているアメリカ空軍のF-35Aが、初めて実戦に参加したと発表しました。イラク国内で行われている“テロとの戦い”で、地上部隊を支援する近接航空支援(CAS)に参加し、地上の目標に爆撃を実施したといいます。

 ユタ州のヒル空軍基地から第388戦闘航空団と予備役第419戦闘航空団のF-35Aが、中東のUAE空軍アル・ダフラ基地に展開し、アメリカ空軍中央コマンド(AFCENTCOM)の第4遠征戦闘飛行隊に編入されたのは、4月15日(現地時間)のことでした。現地での環境に慣れるため、訓練を続けてきましたが、ついに実戦参加を果たしたことになります。

 IS(「イスラム国」を自称する武装過激派集団)掃討作戦「インヒーレント・リゾルブ」を展開している、アメリカをはじめとした有志連合。イラクではイラク軍と協力しながら、ISの拠点を攻撃しています。4月30日、イラクなど砂漠地帯によくみられる、雨期にのみ水が流れる涸れ川(ワジ)のひとつ、イラク北東部のワジ・アシャイ沿いにある、ISが潜伏する拠点が攻撃対象となりました。

 F-35Aは掃討作戦を主導する地上部隊を上空から支援する、近接航空支援(CAS)任務で出撃。地上攻撃任務のため、JDAM(後付け式精密誘導装置を装備した通常爆弾)を携行しました。途中KC-10からの空中給油を受け、F-35Aは作戦空域に到達。


 今回の目標は、ワジ・アジャイ沿いにあるハムリン山に築かれた、ISの地下壕。武器なども貯蔵されていると目されていました。F-35A飛行隊長のヨセフ・モリス中佐は「F-35Aは友軍部隊からの情報を多く利用することができ、そのため高い攻撃力と生残性とを併せ持っています。さらに高い低視認性も、この地域での任務で大きな役割を果たす助けとなってくれます」と、F-35Aの特長について語っています。

 モリス中佐は重ねて「我々はこれまで2回のレッド・フラッグ(仮想敵機との空戦演習)を経験し、さらにヨーロッパとアジアへの派遣も経験しました。十分な準備をして、この作戦地域へやってきたわけです」と、初の実戦に臨む部隊の士気が上がっていることも明らかにしています。


 今回、F-35A初の実戦参加における攻撃の成否については、情報統制の影響もあり、明らかにされていません。公開された空中給油の画像も待ち伏せ攻撃を避ける目的で「中東のどこか」としています。しかしISは、有効な対空装備を持っていないと考えられるので、狙ったところへの攻撃自体は成功した(誘導する地上部隊の目標誤認による誤爆の可能性はゼロではない)ものと考えられます。

Image:USAF

(咲村珠樹)