犬は古来から、人間のパートナーとして飼われてきました。任務を遂行した犬はリーダーと認める人間に褒められるとリーダーとの絆をより深めます。その絆を深めるために必要なことが「しつけ」。現在は盲導犬や介助犬、職業犬以外の、ペットとしての犬の数が圧倒的に多いのですが、なかには人間社会で円滑に暮らせるすべを身に付けさせてもらえず、手を焼かせるペットとなってしまう犬もいます。

 愛犬家で、シベリアンハスキーの文太君の飼い主さんは、自身のツイッターアカウントやYouTubeアカウントで文太君の日常などを紹介しています。時々好物のジャーキーやおやつをもらっている時もありますが、「おすわり」や「お手」など、きちんとできてから、嬉しそうにおやつをもらっています。しかし、中にはその「しつけ」に文句を付けてくる人もいるようで……。

 「動画内で『待て』をさせると、『待てをさせるのは可哀想。愛犬を大切にしてないからそんなことができる。一種の虐待』と、とんでもコメントがまぁまぁ寄せられるんですけど、『待て』の重要性を認識してない方がかなり多くいて驚きます」「待て は、散歩中にとっさの誤飲防止の他、犬の命を守る為に様々な場面で必ず必要になってくる躾です。可愛がる甘やかす、だけが犬の育て方ではなく、時には心を鬼にして教えてなければいけない事もあります。普段の練習が咄嗟の事故にも役立ちます」

 と、「待て」というしつけについてツイッターで解説しています。とっさの「待て」が犬に通じるには、それなりに訓練を続けないといけません。外で散歩をしている時、ふと気を抜くと犬がその辺の草をかじったり、石ころや他の犬のふんなど、口にしてほしくないものを口にすることがあります。もし道端の草に除草剤がまかれていたら、もし食糞行為によって感染症になってしまったら……取り返しのつかない事にもなりかねません。

 そんな危険を予防するのにも、「待て」というしつけが必要になってきます。そして、それ以外のしつけについても、人間と犬の上限関係をはっきりさせるために必要なことであるといえます。

 犬は群れ社会を営む性質を持つ動物。リーダーと認定される人間には従い、自分と同列以下であると認定すると、人間の命令が通らない事もあります。ペットとして犬と暮らす場合、人間がリーダーにならなければ犬は自分が優位だと思って人間に対して困った行動をとることも多くなります。筆者の実家に保護犬として引き取られてきたシーズーは、ただ愛玩用として何もしつけをされないまま最初の飼い主のもとにいましたが、しつけをされなかったがために、犬が人間よりも上だと認識し、気に入らない事があると威嚇したり噛みついたりするようになりました。

 このような状態になってからしつけをし直すことは大変困難で、そのシーズーは数軒たらい回しにされた挙句、実家に引き取られてきました。このときには完全に人間を信用しなくなり、誰が近づいても威嚇して噛もうとする強い攻撃性を持った犬となっていました。しかし、実家ではそんな犬に根気よくしつけをして、父がリーダーであることをはっきりと認識させ、その上で愛情を注ぎ適切な飼育をしたので、シニアになるころには、実家から離れていた筆者が帰省した時に出迎えてくれるまでになりました。

 ただ甘やかすだけで教育を受けさせない、わがまま放題にさせることは、人間の子でも犬でも「虐待」です。適切な養育とは、子どもでも犬でも、そのレベルに見合った、生活に必要な行動を教え、一緒に生活していくうえで困難がないようにしていくことです。「かわいそうだからしつけをしない、甘やかしたい」が、一番の敵となるのです。

 ちなみに、文太君は飼い主さんの元にやってきた生後3か月頃からしつけを始めたのだそう。現在でも「お手」や「待て」は続いています。「お手」は、室内で飼っている場合に散歩から帰ってきたときに足を拭く場合にも役に立ちます。人間のちびっこに、外で遊んだ後に手を洗わせる行動を身に付けさせることと変わりないですね。

 愛情を持っているからこそ、必要な行動を身に付けさせる。特に犬は外散歩など社会的な関わりが多いペット。社会的な基本のルールとマナーは、最低限身に付けさせてあげたいですよね。

https://twitter.com/pupipupi_pupipi/status/1115937291111784448

<記事化協力>
プピプピ文太さん(@pupipupi_pupipi)

(梓川みいな)