流れ落ちる雲のように、お香の煙が上に舞い上がらず下に落ちていく不思議なお香「流川香」。香川県高松市にある仏壇、仏具、お香などを取り扱う明治5年創業「岩佐佛喜堂」の五代目、喜雲さんが開発したもの。香川県はうどんが有名ですが、それに次ぐ新しい産業として、お香を世界に向けて発信する為に2014年に新しいお香ブランドとして生まれました。

 香川県は香木が有名な土地柄というわけではないようなのですが、「県名が、山の上のお寺にあった香木(なんの木かは戦争で資料紛失の為不明)の煙が川に沿って流れたことや、香川県出身の弘法大師が香木である楠を沢山植えた伝説があったりと、お香の伝承は多いです」と喜雲さん。お香とは何かと縁のある土地柄ではあるそうです。

 それにしても、通常ならお香をたくと煙は上がるものですが、なぜ下に流れていくのか……。疑問に思い喜雲さんに聞いてみたところ、比重の重い煙が、陶器により冷やされることにより下がる性質があり、流れるように落ちるとのこと。なんでも、原料は「白檀」と主原料として様々な「和漢生薬」でできているそうです。科学香料を使わずに、天然の原料での調合と、形状が1ミリ単位で異なると煙に乱れが生じることがあり、煙の重さの比重が増す様に、形状と原材料の植物を調合しているそうです。このような微調整を繰り返しながら、商品化できるまで1年半ほどの年月がかかったそうです。

 その気になるお香の香りは?というと、一般的なものに比べると強めで、お部屋の香りを一瞬で変えたいときに最適とのこと。主に、女性が癒やしの為に購入したり、海外の方へのお土産として購入される方が多いとか。

 喜雲さんは、お香の開発を始めて10年になるそうで、「灰が落ちないお香(和の香)」「車で使用できるお香(車香)」などが、某テレビ局で取り上げられるほど大好評だったそうです。また、お寺や企業、個人の香りをお香として再現する活動も精力的に行っており、世界遺産仁和寺・歌手JUJU・歌手kalafina・シルクドソレイユ(オーヴォ)主役谷口・四国88か所など、一風変わったお香もあるようでした。

 最後に「これから挑戦したいことはなんですか?」と伺ったところ「海外の講演も増え、先月はフランスジャパンフェスティバルで講習・今現在はハワイのお寺で講習を行っています。香りの好みには個人差がありますが、日本だけでなく世界中の方々が共通して素晴らしいと感じて頂けるような幽玄の香りの探求・開発に挑戦します」と語って下さいました。

<記事化協力>
岩佐佛喜堂(HP:https://www.buddha.co.jp/
喜雲(Blog:https://iwasakiun.jp/

(黒田芽以)