様々な企業がドローン(無人マルチコプター)による物資の配送実験に取り組み、その実用化が現実味を帯びてきた中、エアバスが船への配送実験を2019年3月15日(現地時間)、シンガポールで始めました。これまでは陸上の動かないポイントに向けての配送でしたが、たえず動いて一定の場所にとどまりにくい船への配送実験は初めてとなります。

 エアバスが開発した少量貨物配送ドローン「Skyways(スカイウェイズ)」を使って、最初の配送実験を行ったのは、シンガポールで港湾業務などを手がける「スワイア・パシフィック・オフショア(Swire Pacific Offshore)」という会社。シンガポール港の南埠頭沖1.5kmに位置する同社の沖荷役船、M/V パシフィック・センチュリオンに対し、3Dプリンタで出力した消耗品1.5kgを配達しました。




 波に揺れ、たえず動く船の定められた場所にスカイウェイズ(ドローン)は正確に着陸し、船の担当者に搭載した荷物を無事に引き渡しました。引き渡しを終えたドローンは再び離陸し、出発点である陸上の基地へ。往復にかかった時間は10分足らずだったといいます。




 この沖合にいる船へのドローン配送実験は、北欧の海運会社ウィルヘルムセン・シップス・サービスとエアバスが共同で行っています。世界中の港に拠点を持つウィルヘルムセンは、港湾荷役のうち急に物入りになった時に物資の配送に時間がかかってしまう沖荷役での効率化を図りたいという点で、様々な環境の港湾で実験を行いたいエアバスの思惑と一致したものと思われます。


 エアバスの「Skyways(スカイウェイズ)」計画を担当するレオ・ジェオ氏は「海洋の分野で初の実験が始まり、とてもワクワクしています。今日の成果は、私たちが何か月も準備してきたものの集大成であり、また海の世界に新たな地平を切り開こうとする、私たちのパートナーとの強固なコラボレーションの証だと言えるでしょう」と、初の実験を終えた興奮を語っています。

 ウィルヘルムセンのマリウス・ヨハンセン商業部門担当副社長は「今ここに、信頼できるシームレスな陸と船とのドローンによる配送システムが、世界で最も混雑する港で行われたことは、この2年間我々とパートナーがともに仕事に励んだことが無駄ではなかったということです」と、これまでの準備段階を振り返りながら、今回の初実験成功について語っています。

 一連の実験では、沖合3km以内の場所にいる船に対し、陸上から最大4kgの荷物をあらかじめ空中に定められた「航路」を自律飛行して、ドローン「Skyways(スカイウェイズ)」が配送するということを繰り返す予定。これにより問題点などを洗い出し、実用化に向けてさらなる知見を積み重ねることとしています。

Image:AirbusWilhelmsen Ships Services

(咲村珠樹)