2019年2月20日(現地時間)、インドのバンガロールで開かれている航空ショウ「エアロインディア2019」で、ロシアの航空機メーカーMiGは最新戦闘機のMiG-35についてプレゼンテーションを行いました。また、インドでの製造も可能だと明らかにし、現在MiG-29シリーズを運用するインド軍へのアピールも行っています。

 MiG-35は、MiG-29シリーズをもとに開発された第4世代++(第5世代に限りなく近い第4世代機)となる多用途戦闘機。2007年に原型機が初飛行し、その年のエアロインディアで初めてのデモフライトを行っています。2018年には量産初号機が完成、同年12月からロシア航空宇宙軍において飛行試験が始まりました。

 機体フレームはMiG-29Mを基本にして、胴体内の燃料タンク容量をアップするとともに、オプションであった空中給油装置を標準装備。より長時間のミッションに対応できるようになりました。コクピットも3面の多機能ディスプレイが装備され、レーダーもアクティブフェイズドアレイ(AESA)式となり、近代化されています。これ以外にも赤外線捜索追尾システム(IRST)も最新型を装備するほか、これまで以上の対地攻撃力も獲得しました。


 実はMiG-35、以前に老朽化したMiG-21の置き換えを図るインドの新型戦闘機調達計画(MMRCA)に応札し、ダッソー・ラファールに敗れた経緯があります。しかしインドは、ラファールを選定して調達を開始したものの、メーカーのダッソー・アビアシオンと国内生産についての交渉が不調に終わり、最終的に調達数が削減されてしまいました。インドのモディ政権は、現在インドの産業発展のため「メイク・イン・インディア」という政策を掲げており、ボーイングの攻撃ヘリコプターであるAH-64Eアパッチや、大型輸送ヘリコプターCH-47の国内製造など、特に航空宇宙産業での技術向上に力を入れています。このため、できる限りインド国内での航空機製造を行いたいという希望と、ダッソー・アビアシオン側の思惑にズレが生じていたようです。

 MiGのイリヤ・タラシェンコ氏はMiG-35のプレゼンテーションで「インドは私たちのキーパートナー国です。MiGの技術者はインドのパートナーと協働し、その卓越した経験の全てをインド空軍の求めに応じて提供することが可能です。MiG-35のインド国内生産の用意もありますし、加えてMiG-35の運用コストは、ほかの競合機種と比べて20%は安くすることができます」と語り、MiG-35ならインドの希望に対応することができるとアピールしました。

 また、タラシェンコ氏はMiG-35の整備性について「整備やアップグレード改修において、MiG-35は機体の分解を必要としません。全てはモジュール化されており、ユニットを交換するだけで可能な設計となっています。実戦状態から改修にかかる時間は、わずか58分です」と、その使い勝手の良さもアピールしています。

インド海軍のMiG-29KUB(画像:MiG)


インド空軍のMiG-29UPG(画像:MiG)

 インドは元々、MiG-35の原型であるMiG-29シリーズを多数運用する、いわば「MiG-29のお得意様」です。このMiG-35は、ロシアでは小型の前線作戦機という位置付けであまり重視されておらず、より大型のSu-27から発展したSu-35を重点的に調達する方針。諸外国もSu-27やSu-35の採用に傾いており、MiGはセールスに苦戦していました。インドもSu-35の強化型をスホーイと共同開発することに興味を示しており、MiGとしてはなんとか契約につなげていきたいと考えているようです。

Image:RAC MiG

(咲村珠樹)