「これが本当に絵なの!?」と写真と見間違えてしまうようなヒョウの絵がTwitterで話題を呼んでいます。制作途中のこの作品を描いたのは、もうすぐ18歳になるという高校3年生の音海はるさん。ヒョウの顔の一部を描くのには5日ほどかかったといいます。

 音海さんは幼い頃に、乳幼児に多い病気とされる「網膜芽細胞腫」を患い、右目を失明しています。「うまれつきなので、もう慣れました。笑」と語る音海さん。

 「両目がみえているともっと上手に、楽にかけたりするのかな……?」と考えることもあるそうなのですが、片目で不便な場合には絵の技術を駆使しして、自分なりの工夫をしています。例えば、片目でとりづらいバランスも、模写をする時にグリッド線を引くことで、正確にアタリをとることができるそうです。

 今回話題になったヒョウの場合には、その生き生きとした表情をどのように描いているのか。基本的に動物はどれも模写をしているそうなのですが、一番気になるヒョウの毛並みは「描く」と言うよりも「彫る」ような感じだそうです。


 使用している道具は、全て合わせると10種類ほど。主に、色鉛筆を駆使し、現時点では30色の色鉛筆を使っており、これからもっと増える可能性があるとのこと。毛並みを表現するのに、普通の鉛筆ももちろん使いますが、厚めのケント紙に、鉄筆という道具を用いて、毛を一本一本彫ってから色を塗ることで、毛並みのハイライトが浮き出て平面の中にも立体感のある作品に仕上がるそうです。

 筆者の高校時代に、ここまでのクオリティの絵を描けたか、こんなにも長い時間、毛だけをシャッシャと根気強く同じことを続けられたか……と過去を振り返ってみても、やはり筆者には根気が続かなかったように思います。そんな泣き言をいっていると、音海さんが「1番大切なのは“上手く描くこと”でなく、“楽しんで描くこと”だと思っています。仮に、才能がなくても楽しんで描いたものには必ずその人らしい、「自分だけのもの」があります」と励まして下さいました。

 音海さんは、幼い頃から絵を描くことに興味があり、暇な時に少しずつ様々なものを描いていたそうなのですが、本格的に始めたのは高校2年からとのこと。1年あまりの間に、こんなにも才能が開花するのかと驚愕でしたが、これも毎日の継続があってこそ。

 他にも、ヒョウと同じ描き方で制作された2つの猫の作品も紹介いただきました。吸い込まれるようなキレイな猫の瞳も、見事に表現されています。まるで写真を眺めているような感覚にとらわれますが、これが絵だと言われるとそちらのほうが疑わしく思われるほど、動物の息づかいが感じられます。


 音海さんは本当に絵を描くことが好きで、あまり時間をとれない平日でも、勉強が一段落したら描き始めるとか。「休日になると、ほぼ一日中描いてますね!」と描くことが楽しくてしょうがないという様子が伝わってきました。

 最後に、将来なりたい職業について伺ったところ「プロの色鉛筆画家になる事と、いつか個展を開いて現物の色鉛筆画を沢山の方に見てもらう事が夢ですね! 色鉛筆画だけで生計を立てられるようになれたらな~と(笑)。やっぱり好きな事を仕事にしたいですね!」と語っていました。いつか開かれる個展。その時がきたら、真っ先に取材に行きたいと思う筆者でした。

<記事化協力>
音海はるさん(@huwahuwa1_25)

(黒田芽以)