ロッキード・マーティンは2018年12月18日(アメリカ東部時間)、新型長距離対艦ミサイルLRASM(Long Range Anti-Ship Missile)がアメリカ空軍のB-1B爆撃機による早期作戦能力(Early Operational Capability=EOC)を獲得し、最初の生産分を空軍の実戦部隊へ納入したと発表しました。これは当初のスケジュールより早いものです。

 新型巡航ミサイルAGM-158B“JASSM-ER(Joint Air-to-Surface Standoff Missile-Extended Range)”をベースにした対艦バージョン(AGM-158C)として、アメリカ空軍と海軍、そして国防高等研究計画局(DARPA)が開発し、ロッキード・マーティンが生産を担当しているLRASM。GPSや戦術データリンクシステムの接続が断たれた状態でも自律的に目標へと飛行し、攻撃を行えるミサイルです。アメリカ軍で1977年以来運用しているハープーンを置き換えるものとなります。

 内蔵されたジェットエンジンを使用し、自律的に目標への飛行ルートを選択して亜音速で飛行。搭載したマルチモードのセンサーユニットは、精密に目標を探知・識別する能力を持っています。弾頭は1000ポンド(約450kg)クラスの炸薬で、爆発の衝撃や発生する破片によって目標を物理的に破壊(ハードキル)します。航空機に搭載しての空中発射だけでなく、船舶に装備されたMk.41垂直発射システム(VLS)からも発射可能。射程距離は発射形態によって大きく異なりますが、およそ500kmから1000km以上とされています。

 アメリカ海軍ではF/A-18E/F、アメリカ空軍ではB-1Bに搭載することを最優先にしており、海軍では2019年、空軍では2018年中にEOCを獲得することを目標に開発試験が続けられてきました。そして今回、予定よりも少々早くアメリカ空軍のB-1BによるEOCを獲得することができたというわけです。

 B-1Bの胴体内爆弾倉には、最大で24発のLRASMが搭載可能。130km程度だったハープーンより大きく延長された射程距離と優れた目標探知能力、そして炸薬量が倍以上になった弾頭とあいまって、艦船への攻撃力は大きく向上することになります。

 日本をはじめ、黒海やバルト海におけるロシアの活動に神経を尖らしているヨーロッパ諸国でも、このLRASMに関心を寄せています。今回アメリカ空軍でEOCを獲得したことにより、また新たなFMS(対外有償軍事援助)の装備品として、LRASMも各国に対する売り込みが始まることが予想されます。

Image:USAF

(咲村珠樹)