職場の健診や献血などで採血をして、血の状態を確かめる機会は年に1度はあるかと思います。国民健康保険などの保険に加入している人にも、無料健診の通知が配布されるので、健診に行っている人もいるかと思います。そんな、健康体だと思っていたのに健診を受けたら実は貧血だったという人のツイートが話題を呼んでいます。

 ツイッターユーザーの“chloeyuki”さん、ある日のツイートでこんな投稿をしています。

「ホント貧血対策した方がええぞ 私めっちゃ食うしめっちゃ血色良いしデブだけど健康診断で引っ掛かって医者に『体内のどっかから出血してないとおかしいレベルの貧血』って言われたし 鉄剤飲み始めて変わったこと
・爪が割れなくなった
・抜け毛が減った
・気分の深刻な落ち込みが無くなった」

 さらに、「階段とか昇るとすぐ息が切れるの、運動不足だとばかり思ってたよ。貧血だったよ… 気分の落ち込みが無くなるのホント助かるし貧血対策して損は無いぞ」と続けています。

■ひと口に「貧血」と言うけど……

 貧血には、生理がある女性の7割くらいに起こりやすいと言われている「鉄欠乏性貧血」の他に、「溶血性貧血」やビタミンB12や葉酸の欠乏により発症する貧血などもあります。

 鉄欠乏性貧血は、内臓からの出血で起こる事が大半で、赤血球と共に鉄分が失われる事で発症します。女性の場合、月経過多症や子宮内膜症など、多くの出血を伴う婦人科系疾患が関連していると言われています。また、男性の場合の貧血は、消化器官からの出血もよく見られる傾向にあり、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、大腸がんなどの重篤な病気が潜んでいる場合もあります。

 溶血性貧血は、何らかの自己免疫の異常で赤血球が体内で破壊される事により起こるものや、先天性のものもあります。この場合、赤血球が破壊された時に出る「ビリルビン」という色素が血中内に増え、眼球が黄色く見えたり皮膚が黄色っぽくなる「黄疸」の症状が出ます。

 ビタミンB12の欠乏による貧血は、極端なダイエットや菜食主義、胃の切除手術の後、小腸の病気などで発症し、葉酸不足による貧血は、妊娠の他、アルコール中毒、がん、溶血性貧血、抗てんかん薬などの薬剤などで起こることが知られています。

■貧血の症状は?

 この貧血に共通する症状は、体動時の動悸、息切れ、耳鳴り、めまい、頭重感、集中力が低下するなどの症状が起こりやすくなります。これは酸素を運ぶ赤血球や鉄分が足りずに、酸素の供給が追い付かない為に起こる症状です。さらに鉄分が不足すると、chloeyukiさんが経験した、爪がもろくなったり変形する、抜け毛が多くなる、気分的な症状の他にも、口の端や舌が荒れる、固形物が飲みこみにくい、肌がカサカサする、やたらと氷水を飲みたがるといった症状が起こります。暑くないのに氷をガリガリと食べてしまう人は貧血を疑った方がいい場合があります。

■ 貧血は食事療法で治る事も

 chloeyukiさんの場合はまだ精査中で、診断はおりていないという事ですが、医師から鉄剤を処方されて症状が回復したという事です。ただ、鉄剤は胃が荒れやすく、内服によって気分不快や吐き気などの症状が現れたりしやすくなります。この場合、鉄剤の注射を週に何度か医療機関で受けたり、軽度の場合は食事療法で回復する場合もあります。

 食事療法の場合は、1日の鉄分が摂取できるヨーグルトや、赤身の肉類、レバー、魚の血合い肉など、鉄分を豊富に含む食事を摂る事で改善される事も多くあります。野菜にも鉄分が含まれていますが、体内に吸収されやすいのは野菜に含まれている「非ヘム鉄」よりも、肉類などに含まれている「ヘム鉄」の方が吸収率が良いので、健診などで貧血気味と言われた人は、積極的に鉄分の多い食材を摂るとともに、数値によっては医療機関できちんとした検査を受けるようにしてください。

■ 貧血の自己チェックをするには?

 自分で気が付かないうちに貧血が進行している事があります。特に、自営業で忙しく、健診になかなか行けない人などはまずセルフチェックをしてみましょう。先述した貧血の症状がないかをチェックするとともに、あかんべーをしてみて目の粘膜を見た時、他の人よりも白っぽくなっていないか、顔色が悪くないかなどもチェック項目となります。

■ 立っている時や立ち上がった時によく言う「脳貧血」は貧血ではありません

 いわゆる立ち眩みや、しゃがんだ時から立ち上がった時に起こる「脳貧血」と言われる症状、これは貧血ではありません。一過的に脳に血が回らない状態の事を指しています。これは自律神経と血圧の関係で起こるので、これがあるからと言って、鉄剤を飲んだり市販のサプリメントを飲んでも回復しない事が多いようです。この症状がある人は、立ち上がる時に頭を体よりも後に起こす、水分をしっかり摂るなどで予防する事ができます。

■ まとめ

 貧血かどうかは、まず健診などで血液検査を受け、原因がはっきりしている場合はその治療を、原因不明の場合もあるので食事をバランスよく食べ、特に肉類などをしっかり摂る、セルフチェックでおかしいと思ったら医療機関に受診する、といった事が大事になります。特に、原因不明の場合はしっかり精査して、重大な病気が潜んでいないかチェックしましょう。消化器のがんによる下血に気が付かずに貧血が進行していた、と言う場合もありますので、がん検診も2年に1度は受けるようにしてくださいね。

<参考・引用>
鉄欠乏性貧血、その他の造血因子不足による貧血|慶應義塾大学病院 KOMPAS

<記事化協力>
chloeyukiさん(@chloeyuki)

(梓川みいな/正看護師)