東京都目黒区の保育園で、園児と保育士を含む21人が「細菌性赤痢」に感染したと、東京都が2018年10月23日に発表しました。

 最初の感染経路は不明ながら、10月12日に下痢や血便の発生した園児が細菌性赤痢と診断され、10月12日から園児及び職員、20日からは園児の家族に対象を拡大して健康調査を実施。23日時点の感染者は21名、うち園児20名、職員1名(調理従事者は感染なし)となっているそうです。

 では、この細菌性赤痢とはいったいどのようなものなのでしょうか。

■ 細菌性赤痢とその症状とは

 細菌性赤痢は、今も主に東南アジアから帰国した人が持ち帰り感染を起こす事例が全国で見られています。主な症状としては、膿を伴った血便と水様性の下痢、急激な発熱、腹痛、便が出そうで出ないという感じの「しぶり腹」がみられます。感染から発症まで、通常1~3日くらいの潜伏期があります。

 衛生状態と栄養状態の悪かった戦後しばらくは、この感染症により多くの死者が出ましたが、国立感染症研究所によると、最近は、年間1000人前後の感染者の報告があるという事です。

■ 細菌性赤痢はどのように感染していくのか

 細菌性赤痢の主な感染源は、ヒトです。感染していたり保菌している人が、排便をした後しっかりと手を洗わずに蛇口を触ったり、ドアノブを触ったりする事から感染が伝播していく事もよくあります。また、菌のついた手で食器や食品を触ったり、そこにハエがたかったりして細菌を広げていくという事も。細菌性赤痢の感染菌量は10 ~100個と極めて少なく、家族内での二次感染は40%にのぼります。要するに、少し菌が付いただけでも発症する事があり得るのです。

■ 最初から下痢止めを使うと見落とされる可能性も……

 最近は、栄養状態も衛生状態もこの数十年で格段に良くなっているため、赤痢で死者が出る事は滅多になくなりましたが、このため、ただの下痢と思って最初から下痢止めを使うケースが考えられますが、自己判断での下痢止め使用はやめましょう。下痢止めを使うと、腸の動きを無理に止めてしまい、菌の排出が困難になって重症化する恐れも考えられるからです。また、下痢止めで軽快したとしても、赤痢菌の保菌者である事には変わらず、感染を広げる原因となる可能性も。

 細菌性赤痢は、医師が診察したら保健所に必ず届け出が必要な「3類感染症」で、自宅で治そうとすると、感染の状態が保健所でもきちんと把握できなくなります。なので、先述した症状がみられた場合、速やかに医療機関に受診してください。なお、3類感染症は病状により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めるまで出席停止扱いとなります。

■ 発症数が少ない感染症なのでこんな事も……

 東南アジアで菌を拾ってきてしまう事が多い細菌性赤痢ですが、あまりスタンダードな病気とは言えません。東京・目黒の五本木でクリニックを開業して21年の桑満おさむ医師は、「目黒区で赤痢の集団発生がありました。開業して21年だけど、これは初めて。感染力が強いので注意が必要です。とにかく手洗いを!!」と、注意をツイッターで呼びかけています。

 細菌性赤痢は加熱に弱く、東南アジアでは生水を使って洗ったサラダや、生の果物などから菌を拾ってしまう可能性もあるようです。また、日本の場合、過去には井戸水や牡蠣での集団感染も。いずれにしても、食品類はしっかり加熱をして、清潔な水と石けんなどで手を良く洗う事が感染防止に繋がります。海外では生の物を口にしない事が回避策となると言えるでしょう。

 少ない細菌でも症状を引き起こす細菌性赤痢から身を守る為には、感染したらとにかく丁寧に石けんで手を洗う事、海外渡航の際には生の物を口にしない事、小児の感染者の世話をする際もとにかくよく手をしっかり洗わせ、便の処理の時は使い捨て手袋を用いるなど細心の注意を払って処理にあたる事が重要と言えます。

<参考>
都内保育園における細菌性赤痢の集団発生について
国立感染症研究所 細菌性赤痢とは

<記事化協力>
桑満おさむ医師(@kuwamitsuosamu)

(梓川みいな/正看護師)