アメリカのハワイ周辺とカリフォルニア州で行われている環太平洋多国間合同訓練「RIMPAC(リムパック)2018」。これに参加している陸上自衛隊の部隊が7月12日、12式地対艦誘導弾を使用して標的艦を撃沈する初めての訓練に臨みました。

 今回RIMPACに参加しているのは、大分県由布市の湯布院駐屯地に隊本部を置く西部方面特科隊のうち、熊本市にある健軍駐屯地の第5地対艦ミサイル連隊。2016年から12式地対艦誘導弾(SSM-12)を運用しています。カウアイ島にあるバーキングサンズ太平洋ミサイル訓練場で、アメリカ陸軍とオーストラリア空軍と共同で、実弾を使用した標的艦撃沈訓練「SINKEX」を行いました。オーストラリア空軍はP-8ポセイドンで上空から参加。アメリカ陸軍は最新型のナーバル・ストライク・ミサイル(NSM)を使用します。

 SINKEXは、アメリカ海軍を退役した艦船を標的とした訓練で、今回はカウアイ島の北約100kmの海上に1993年に退役した元ニューポート級戦車揚陸艦の13番艦、ラシーン(LST-1191・全長159m、満載排水量8500トン)を曳航し、標的とします。退役当初はペルー海軍に中古として引き渡される予定でしたが、その予定がキャンセルとなり、行き場をなくしたまま25年にわたって港に係留されたままだったので、曳航中に浸水してしまわないか危惧されていましたが、無事に訓練海域まで到着しました。

 曳航したタグボートが安全な場所まで退避したことを確認し、訓練開始。陸上自衛隊の12式地対艦誘導弾が発射されます。


 発射機を離れた12式地対艦誘導弾は、あっという間に空高く上昇し、海へと進路を向けて飛び去っていきました。

 同じく、アメリカ陸軍はナーバル・ストライク・ミサイル(NSM)を発射。どちらも目標をとらえましたがそれだけで沈むことはなく、航空機からの攻撃、水上艦の砲撃などを受け、最終的に潜水艦の魚雷によって船の背骨であるキール(竜骨)を折られ、標的艦の元ラシーンはゆっくりと深さ約5000mの海に飲み込まれていきました。

 第5地対艦ミサイル連隊の隊員は、発射後の発射機を確認。普段の訓練では実弾を発射する機会がないだけに、発射筒後尾部がこんな風に破れるんだ、と見ていました。

 RIMPACにおける標的艦撃沈訓練SINKEXは、このほか2015年に退役したオリバー・ハザード・ペリー級フリゲートの32番艦、マクラスキー(FFG-41)を標的にした訓練も行われます。

Image:U.S.Army

(咲村珠樹)