あちこちで「暑い」と聞こえてきますが、湿度も温度も高い日本、気が付いたら「暑い」と言葉にしてしまっていたりします。そして毎年の様に暑さにより命を落とす人も。消防庁7月3日の発表によると6月25日から7月1日までの期間で、熱中症による死者が3人も出たそうです。そんな中、妻の異変に気が付いた人のファインプレーがSNS上で話題になっています。

 漫画家のノブヨシ侍さんが、入浴後の妻の熱中症について、「夜、およめさんが風呂上りに『寒い寒い…』と急にブルブル震えて出して焦りました。 経口補水液1本あったので渡したら美味しく感じたので熱中症か脱水と判断。布団に寝かせて頭と首、脇を冷やして1時間位で落ち着きました。危なかった…。 もう熱中症になる季節です、みなさんお気をつけ下さい」と、その時の様子をツイート。

 ノブヨシ侍さんの妻は、普段から肩こり気味で背中がゾワゾワしたり、頭痛が起きやすい体質であったため本人は脱水による熱中症という自覚はなく、ストックしてあった経口補水液を飲んだ事で脱水症状だったことに気が付いたそうです。さらに寒いと訴えているのに手足や顔も凄く熱を持っていたのだとか。

■ 実際に熱中症かも?と思ったら

 まずは涼しいところへ避難しましょう。エアコンが効いている室内がベストですが、屋外の場合は日陰の風通しの良い、横になれる場所を探してください。その後に次の処置を行います。

1.水分補給
2.体の締め付けを緩める
3.体を冷却する

1.OS-1やアクアソリタなどに代表される経口補水液は浸透圧が体液と同等で、体内の水分が足りている時は「マズイ!!」と感じる人が多いのですが、脱水状態の時に飲むと何故か甘味を感じ、「ウマーイ!」と美味しく飲めるのです。
もしこのような経口補水液が手元になければドラッグストアなどで手に入りますので1~2本ほどストックしておくと安心です。また、スポーツドリンクも良いのですが、市販のものは飲みやすいように糖分が多めに添加されています。商品によっても若干異なりますが、脱水時には1Lのスポーツドリンクに500mlほどの真水を加えて少し薄めのものを飲むと体内への吸収率は上がります。粉末のスポーツドリンクのもとは1L用のものが殆どなので、1.5L 入る冷水ポットと粉末スポーツドリンクを常備しておくというのも一案。まずは経口補水液や薄めたスポーツドリンクなど体に必要な電解質が入った飲料で水分補給をしっかりと行いましょう。それもなければ水500mlに対して塩小さじ1杯(計量スプーンに5spoonと書いてあるもの)を溶かしたものを飲むようにしてください。何もない時の脱水時の応急処置となります。

2.そして、熱中症の時は体に熱がこもっており発散できない状態である為、体から熱を逃すために冷やす事も大事。まずは体を締め付けているものを緩めて血流を良くするようにしておきましょう。シャツのボタンなどできる限り開けておき、ブラやベルトを身に付けている場合は外して体の締め付けを緩めることも基本事項。

3.体の全体を冷やすのではなく、頸動脈、脇の下、太ももの付け根にそれぞれある太い動脈に保冷材を当てるのが効率よく体温を下げるコツ。動脈を冷やしながら汗拭きシートで体を拭いてあげると効率よく皮膚の熱の発散が行えます。

■ 熱中症になりやすい人ってどんな人?

 人間の体は急激に暑くなるとその変化に付いていくのが困難。梅雨明けのこの時期は特に気温が急激に上がる為、普段から寒暖差に慣れていない人は全員が熱中症になりやすいと言っても過言ではありません。特に、運動不足の人は普段から汗をかきにくく、汗による体温調節が困難となるので熱中症のハイリスクと言えます。エアコンが効いている室内で事務作業をしている人も特に熱中症の危険が高いと言えます。エアコンが効いている室内でも「隠れ脱水」による熱中症が実際に起こっています。エアコンが効いていると室温はひんやりとしていても空気が乾燥しがちとなり、あまり水分を摂らなくても平気な気がしてきます。実はこれが落とし穴。乾燥した空気によって体内から知らず知らずのうちに水分が蒸散しているのです。しかも、脱水初期にはのどの渇きを感じる事はあまりないので、のどが渇いたと体感している時には既に脱水が始まっていると考えた方が良いくらいなのです。

 また、高齢者や乳幼児も熱中症のハイリスクとなります。高齢者は熱が体にこもっていても気が付きにくく、のどの渇きも感じにくくなる為に脱水状態にも気が付きにくいのです。また、お年寄りにありがちな「エアコンがなくても過ごせる」「寒がりなのでエアコンを使いたくない」も危険度をさらに上げます。外気温が30度を超すならエアコンを使うようにし、1~2時間にコップ1杯の水分を補給するだけで熱中症を予防できます。

 乳幼児も体温調節が未発達であり、顔が真っ赤なのに汗をかいていないという事もあります。背中に手を入れてみて明らかに熱いと感じる時は熱中症の可能性が非常に高いので、衣類を薄くしてしっかり水分を摂らせてください。乳児の場合はミルクや母乳でも大丈夫です。

■ 熱中症で後遺症や死者を出さないために

 環境省と賛同している行政・民間団体・一般企業からなる「熱中症予防声かけプロジェクト」(http://www.hitosuzumi.jp/)では、熱中症予防の為の様々な取り組みを行っています。自分のいる地域の暑さ指数(WBGT)を調べる事ができたり、「熱中症対策アドバイザー養成講座」のコンテンツなど、熱中症に特化した充実の内容が揃っていますので、ぜひチェックしてみて下さい。そして普段から屋外によく出る人や熱中症のハイリスクな人は、熱中症指数が分かったり危険数値になるとアラームが鳴る温度計なども市販されているのでぜひ活用してください。
 
<参考>
熱中症関連情報 |厚生労働省
熱中症予防声かけプロジェクト。ひと涼みして熱中症を予防しよう。
熱中症からカラダを守ろう|大塚製薬  他

<記事化協力>
ノブヨシ侍さん(@iroironaiy)

(梓川みいな / 正看護師)