現在「刀剣乱舞-ONLINE-」などの影響もあり、若い人の間で刀剣鑑賞がブームとなっています。各地の博物館や美術館で開かれる刀剣関連の特別展は盛況ですし、国宝や重要文化財の刀剣を常設展示している東京国立博物館にも、熱心に展示を見つめる若い層、特に女性の姿が目につきます。しかし刀剣の世界は奥深く、見所である「刃文」や「地鉄(ぢがね)」などの見分け方や、専門用語も多いので難しいのもまた事実。鑑賞しながら、もっと刀剣のことを知ることをできたら……そんな悩みを解決するようなアプリが現在開発中。そして開発資金の一部を募るクラウドファンディングが、6月27日19時にスタートしました。

 「刀事始め(かたことはじめ)」と名付けられたこのアプリ。作刀の見所や楽しみ方など、色々とコツのいる刀剣鑑賞について、実物を前にしながらスマホでより簡単に鑑賞ポイントを知ることができるという「刀剣学習お手伝いアプリ」です。6月21日にTwitterで上で開発および、開発資金の一部をクラウドファンディングで集めると発表したところ、1万いいねがつくほど大きな注目を集めました。

 アプリには日本刀の姿(形状)や地鉄(ぢがね)、刃文の判別機能がついており、実際の日本刀を見ながらの種類を知ることができます。地鉄や刃文は慣れないと見極めが難しい部分ですが、実物を見ながら教えてくれるのは便利ですね。また、こうして鑑賞したり勉強した刀についてのメモやコレクションを貯め、自分だけの刀剣鑑賞記録が作れる機能も。



 また、課金部分として、刀剣の姿を写し取った拓本である「押形(おしがた)」をダウンロードすることができます。まずは、東京国立博物館の刀剣室長や刀剣博物館の副館長を務めた日本刀研究の権威、佐藤貫一(号:寒山)が作成した国宝、重文、天下五剣など名だたる名刀の原寸押形集「寒山押形」(大塚巧藝社より1969年に限定500組で出された桐函入りの春夏秋冬4巻と説明書1部で構成される巻物で、現在プレミア価格)に収録されたものをデジタル化し、一振りずつダウンロードできるようにするとのこと。今後それ以外の押形も付け加えることも構想中だそうです。

 この「刀事始め」アプリは、1000年以上続いてきた日本刀の文化を受け継ぎ、次の1000年先まで残していきたいという「刀剣MERPプロジェクト」の一環で制作されるもの。刀剣MERPプロジェクトでは、神社仏閣やお城、地方施設が所持している刀剣の手入れや保存、刀匠や研師など刀剣に関わる職人、研究者、刀剣ファンのための書籍や資料の保存公開や出版物の再販、刀剣に関する展覧会の企画運営に関するお手伝いを行っていくとしています。

 プロジェクトのメンバーには、東京・原宿で現代刀の作品展示や販売、日本刀文化を広めるためのギャラリー運営などを行っている「studio仕組」代表取締役の川内晋平さん、先述した「寒山押形」をはじめとする刀剣関連書籍の出版を行っている「大塚巧藝社」専務取締役の佐藤敬さんが名を連ねています。また、刀剣ブームの火付け役でもある刀剣育成シミュレーション「刀剣乱舞-ONLINE-」原作のニトロプラス・小坂崇氣(でじたろう)さんからは、クラウドファンディングを行うにあたり応援メッセージが送られています。

 アプリ制作のクラウドファンディングは、目標金額が70万円。リターンは3000円から30万円までと幅広い種類に分かれており、最大の30万円のリターンは実際に刀匠の仕事場で小刀の「焼き入れ」が体験できるなどの特典が付いています。わかりやすく刀剣のことが学べ、刀剣鑑賞が楽しくなりそうなアプリ「刀事始め」。Twitter(@MerpPj)でも情報発信しているので、興味のある方はフォローしてみてください。

情報提供:刀剣MERPプロジェクト

(咲村珠樹)