急なケガの対処法は覚えていて損はない知識。しかし、意外と知られていない応急処置も結構あります。とある歯科医の呟きが「意外と知らなかった知識」と大拡散しています。

 その知識とは、不意のケガで歯が根元から抜けてしまった時の応急処置。歯科医の“新生姜”さんが「今日、部活中に顔面強打して前歯が抜けたって子が来院したんだけど、抜けた歯を持ってきてくれたのはいいけど綺麗にピカピカに洗ってあった…… 抜けた歯は洗っちゃダメ、そのまま牛乳につけて持ってきてくれたら再植できる可能性あるから」とつぶやいています。

 続くツイートで「ベストなのは生理食塩水につけて持ってきてくれる事だけど難しいから 牛乳も未開封のものが望ましいので、コンビニで小さいパック買うのが良 どれも無理なら自分の口に入れて口腔外科に来て下さい、あまり舐めないように」と。

 このツイートには「今の保健室には歯の保存液もあるはず」「遅くても30分以内に歯科医に持っていく事」などの知識がさらに追加でリプライされているほか、「もっと昔に知っていれば」「この知識のおかげでケガで抜けた前歯が治りました」など大きな反響になっています。

 野球やソフトボール、バスケやテニスなど、顔面を強打する可能性のある競技は様々。さらに日常でも自転車で転んで顔面を打つなどで歯が抜けてしまうケガとなる事もあり得ます。新生姜さんの他の人へのリプライで「牛乳は浸透圧が人体と同じ」という点と「入手しやすい」点において牛乳に浸けて受診する様奨めています。

 このツイートが拡散された日に、ちょうど地元の歯科医にお世話になったのでこの件について聞いてみました。すると「牛乳は体液と浸透圧が同じなので生理食塩水がない時にはそうして欲しい」との返答。さらに、スポーツドリンクや経口補水液でも大丈夫か?という質問には「ドリンク類の中に含まれる糖分が雑菌の繁殖を早めるので、ドリンク類はやめておいた方が良い」との見解でした。

 そして、「とにかく一刻も早く受診して欲しい。そして抜けた歯は汚れが付いている場合はざっと水で流して汚れを流してから牛乳に浸けて持ってきてくれれば再度定着する可能性が高まります」とも。歯に残っている組織が完全に洗い流されると歯茎に残っている組織と結合できず、再植できないのでしっかり洗うのはNG。あくまでも「汚れが流れればOK」だそうです。

 口のケガは出血と唾液も相まって出ている血液が多く見えてしまい、パニックになる人も多いかもしれません。しかし、適切な処置方法を頭の中に入れておけばパニックになる前に応急処置を行う事もできます。

 歯がケガで抜けてしまった場合にまずやる事をまとめると、

1.まず抜けた部分の圧迫止血。清潔なガーゼを患部に当て噛みしめる、指で圧迫する。
2.止血している間に抜けた歯を保存。口の外に歯が落ちた場合はざっと汚れを落として保存液や牛乳に浸ける。抜けた歯の根元はこすらない。
3.できるだけ早急(30分以内)に歯科・口腔外科へ受診。

 学校やスポーツクラブなど、顔面のケガが予測される場合はスポーツの内容や年齢に応じたマウスガードを着用しておくことでスポーツ活動中のケガを予防できます。

 とはいえ、いくら予防してもこういう事態に直面することは考えられます。さらにこうして対応を読んでいたからといって、いざとなれば忘れていることも十分考えられます。その場合には、すぐ最寄りの歯科・口腔外科に連絡して予約のついでに対応を相談してみるといいでしょう。後は勿論、歯科・口腔外科にGOです。

 想像しただけでも痛くなってしまいそうなケガですが、自分の歯は一生モノ。応急処置の方法と予防方法を知る事で歯を守る事ができます。若くしてインプラントや入れ歯になると他の歯にも影響が出る事もありますので、歯の安全も守っていきましょうね。

<参考>
学校保健ポータルサイト「歯・口のけがとその対応」 他

<記事化協力>
新生姜さん(@shinshouga)

(梓川みいな/正看護師)