フランスのシャンパーニュブランド、メゾン・マムは2018年6月7日(現地時間)、宇宙の無重量状態でも飲める特殊なシャンパンボトルとグラス「マム・グラン・コルドン・ステラ」を2018年9月に発表すると明らかにしました。宇宙で乾杯できる日も近い?

 この「マム・グラン・コルドン・ステラ」は、新進気鋭のデザイナー、オクターブ・ド・ゴール氏のデザインスタジオ「スペード」と3年間の研究開発の結果生み出されたもの。無重量状態で飲み物を飲む際には、パウチに入ったフリーズドライの飲料に水を入れ、ストローで吸う方式が採用されており、このままではシャンパンのようなアルコール飲料を飲むのは不可能でした。

 今回開発されたのは、無重量状態でもシャンパンをサーブできる特殊なボトルと、専用のシャンパングラス。このボトルは栓を外すと、リング状の注ぎ口からシャンパンに含有されるガスによってシャンパンが泡を作り、モコモコと盛り上がります。そうやって塊となった泡状のシャンパンを専用のグラスにくっつけ、口に運ぶことができるというもの。シャンパンがガスを含んでいること、そして液体の持つ表面張力を利用して泡を作り、グラスに付着させるという仕組みにしたのが画期的です。実際に宇宙飛行士の訓練にも使われる飛行機を使い、弾道飛行による無重量状態で問題なく泡状のシャンパンをグラスに付着させ、飲む試験にも成功しています。


 「マム・グラン・コルドン・ステラ」のボトルとグラスをデザインしたオクターブ・ド・ゴール氏は、以下のようなコメントをしています。

デザイナーのオクターブ・ド・ゴール氏

デザイナーのオクターブ・ド・ゴール氏

 「過去40年の間、宇宙旅行というものはデザイナーではなくエンジニアによって計画され、具現化してきました。私たちは無重力を『克服すべき課題』ではなく『デザインの可能性』だと考えたのです。『マム・グラン・コルドン・ステラ』をデザインするにあたっての大きな課題は、どうやってシャンパンをボトルから注ぐか、ということでした」

 無重量状態で泡を口に含むと、それは瞬時に液体のシャンパンに戻り、今度は表面張力により口の中に張り付きます。地上で口に含むより、ずっと少量でシャンパンの香りを楽しむことができるのだといいます。また、すでに泡を作る過程で多くのガスが使われているので、通常のシャンパンにあるような泡の弾ける刺激は少なくなり、味わいはより丸みを帯びた優しいものになるそうですよ。

 グラスもステムがついてはいるものの、無重量状態でふわふわと浮かぶため、テーブルに置くための台座はありません。うまく泡の形を工夫すれば、自由の女神の持つトーチみたいにすることもできるかもしれませんね。

 残念ながら、現在の国際宇宙ステーションでは飲酒禁止のため、これを持ち込むことはできません。しかしいつの日か、民間宇宙旅行が実現したならば、軌道上でこのシャンパンボトルとグラスを使って「宇宙に乾杯!」とできるかもしれませんね。

情報提供:Maison Mumm

(咲村珠樹)