レッドブル・エアレース第3戦千葉大会は、オーストラリアのマット・ホール選手が、第2戦カンヌ大会に続いて連勝、年間ランキングでトップに立ちました。

 地元期待の室屋選手がラウンド・オブ14でホール選手に敗退してしまったため、約4万人が詰めかけた会場の雰囲気も、若干終戦ムードが漂いましたが、逆にこのモータースポーツの難しさ、そして面白さを堪能できるレースとなりました。

 縦のターン(VTM)を行うゲート4の位置が30m沖合に移動しただけで、2017年とほぼ同じトラックレイアウトになった2018年の千葉。このため、今年マスタークラスに昇格したベン・マーフィー選手を除き、全てのパイロットが経験しているというものとなりました。福島で室屋選手に取材した際「アスコット(イギリス)もそうですが、条件はどのパイロットも同じなんで、非常に接戦になると思います」と語っていたのですが、まさにそのような僅差の争いが続きました。

 ラウンド・オブ8、グーリアン選手とドルダラー選手の対戦は、グーリアン選手が手堅く57秒515でまとめた後、ドルダラー選手が最初のバーティカルターンで目測が狂ってしまい、ゲート4までに機体を降下させることができずにTOO HIGHのペナルティで2秒プラス。続くシケイン(ゲート5)へ正しい入り方ができないまま、リズムを崩してゲート6でインコレクトレベルまで喫してしまい、合計4秒のペナルティ。これでは勝負になりませんでした。

 ファイナル4に進んだのはグーリアン選手のほか、ソンカ選手、マクロード選手、ホール選手。ラウンド・オブ8から間を置かず、ファイナル4が始まります。

 最初に飛んだのは、現在年間ランキングトップのグーリアン選手。この千葉大会で好調でしたが、最後のフライトも堅実かつ速さを維持してペナルティーなしの56秒695。ラウンド・オブ14やラウンド・オブ8では、後から飛んだ方が有利なケースが多いのですが、ファイナル4では比較的1番手で飛んだ方がプレッシャーがなく、勝ちやすい側面があります。

 続いて飛んだソンカ選手。千葉では連続して表彰台に上り、相性のいいトラックであるのですが、稲毛側のハイGターンを行う直前のゲート7で痛恨のインコレクトレベル。シケイン(ゲート5)からゲート6に行く際、態勢を作り損ねてしまい、ちょうど追い風となる海からの風に流されてパイロンヒットを避けるため、どうしても10度以上の傾きを取らざるを得ませんでした。56秒443に2秒のペナルティーが付いて58秒443。インコレクトレベルがなければ優勝の目があるタイムだっただけに惜しまれます。

 シケインからゲート6、ゲート7へと向かうトリッキーなS字ターンは、3番目に飛んだマクロード選手にも牙をむきました。同じくゲート6で態勢を作り損ねてギリギリ10度以内の傾きでパスしたものの、ゲート7ではもう10度以内では収まりませんでした。56秒639とグーリアン選手より速いタイムだったにもかかわらず、インコレクトレベルの2秒ペナルティーが付き、58秒639となってしまいました。


 残るはホール選手。決勝と同じ風向きの金曜日フリープラクティスでトップタイムをマークした実績から、この日朝のハンガー取材で「予選のミスを繰り返さなければ、速いから室屋選手はおろか優勝もありうるよ」と声をかけていたのですが、見事に56秒376でフィニッシュ。グーリアン選手から表彰台のてっぺんをもぎ取り、第2戦カンヌ大会に続く連勝を達成しました。


 これにより、ホール選手とグーリアン選手は36ポイントで並んだものの、ホール選手2勝、グーリアン選手1勝のため、年間ランキングはホール選手がトップに。差のない2番手にグーリアン選手という形になりました。室屋選手は変わらず3位ですが、ポイントを積み増しできず19ポイントと、17ポイント差がついてしまいました。しかも今回3位のソンカ選手と同ポイント。さらに4ポイント差の5位ドルダラー選手(15ポイント)、6位ブラジョー選手(15ポイント)と才能と実績のあるパイロットの足音が聞こえてくる形になりました。


 地元開催ということで期待も大きく、特にメディアの数も非常に多かったのですが、室屋選手はそれを言い訳にはしませんでした。


 千葉でのことはもう終わってしまったので、次のブダペストで巻き返す姿に期待したいものです。

(咲村珠樹)