日本のポップカルチャーコンテンツの海外販売などを手掛けるトーキョーオタクモードや仮想通貨の識者などで構成されるオタクコイン準備委員会が、5月9日、都内でコンテンツ流通向けの仮想通貨「オタクコイン」の構想を発表した。

 オタクコインは、アニメや漫画の制作者とファンとの間で流通する予定の仮想通貨。関連グッズの購入に利用できる他、アニメなど新作プロジェクトを支持するための投票機能も持たせるという。

 現在の構想段階では、総数1000億枚を発行する予定で、全体の39%をオタクコイン財団が運営費に使うために確保し、56%はコンテンツ制作会社に提供する資金へ、残り5%は、アニメや漫画のファンに、配信サイトへの登録や視聴の特典として配布する予定。発行は2018年夏から秋で調整が進められている。

 オタクコインでは提携企業での買い物の他に、コインの所有数に応じた投票権を付与し、オタクコインのプラットフォーム上で公募するアニメの新作やゲームの新プロジェクトなど、新たに制作する作品を選定する投票に参加できるようにして、得票数の多いプロジェクトには、事務局がオタクコインを提供することも考えているという。

 なお、仮想通貨の取引では最近「新規仮想通貨公開(ICO)」という信金調達方法をとることが多いが、ルールや法律が未整備ということでトラブルを回避することを考慮した結果、世界中の日本カルチャーファンにコインを無償配布という形をとることになったそうだ。

 日本のコンテンツ業界が抱える課題の説明のために壇上にあがった、ジャーナリストの数土直志氏は、「『最近、DVDやブルーレイの売り上げが落ちてきている』という話は聞きますが、ここ10年でアニメの市場は二倍になっている。今までテレビやブルーレイで消費するものだったのが、配信や、グッズ、イベントが増えるなどして楽しみ方は多様化している」と話す。そういった多様化した現状に対し、アニメ制作会社の資金調達方法のひとつとしてオタクコインが可能性を持ってくるとして、トーキョーオタクモードの小高奈皇光CEOは「アニメコンテンツ、漫画コンテンツなどをサポートしたい」と期待をかける。

 また、現在世界で数億人規模といわれるアニメ・漫画コンテンツ市場だが、動画の違法アップロードや海賊版グッズが巷にあふれていることが大きな問題となっている。こうした海賊版対策としてもこのオタクコインが効果を発揮することを期待しているという。

 具体的には、正規の動画サイトでの視聴者、海賊版商品を扱っていないショッピングサイトでの購入者向けにオタクコインを配布する仕組みを考えているとのこと。小高CEOは「違法サイトではなく、正規のサービスに流れるという抑止力となれば」と違法サイトにはない、オタクコインによる付加価値で、正規サービスへの誘導ができればと明かした。

 現状では、1オタクコイン=1円といった定額制が想定されており、将来は変動価格の仮想通貨として取引所での流通も視野に入れているとし、小高CEOは「ビットコインの時価総額は17兆円。オタクコインも100億、1000億と価値を持つようになれば、その分だけ日本のコンテンツ市場も活性化できる」と将来的な展望について語った。

(宮崎美和子)