5月に入り、いよいよ26・27日には2018年シーズン第3戦、千葉大会がやってきます。2017年のチャンピオンとして、ポール・ボノム氏しか成し遂げていない母国開催3連覇を狙う室屋義秀選手が、本拠地である福島県福島市のふくしまスカイパークで、千葉大会を前にした記者会見を行いました。

 4月の第2戦カンヌ大会で惜しくも表彰台を逃した室屋選手。まずは今シーズンを開幕戦のアブダビ大会から振り返りました。今年はコンスタントにファイナル4に残り、最低2勝するという目標で開幕戦に臨んだ室屋選手。これまであまりいい成績を収められなかった開幕戦ですが、今シーズンは年間チャンピオンを獲得したという実績もあり、チームとして落ち着いて開幕を迎えられたといいます。その自信を裏付けるように、開幕戦はグーリアン選手に次ぐ2位。幸先いいスタートを切ることができました。

 およそ2か月のブランクを経て迎えた第2戦。初のフランス開催となったカンヌ大会では、惜しくも表彰台を逃す4位となりました。ファイナル4でバーティカルターンの前に風に流され、パイロンヒットを避けるためにインコレクトレベルのペナルティが響きました。ちょうどラウンド・オブ8で、ピート・マクロード選手が全く同じゲートでパイロンヒットしていたのですが、先に飛び終わっていた室屋選手のチームは、ファイナル4に向けて慌ただしく準備を整えている最中で、ちょうどその瞬間を見逃していたとのこと。誰かが見ていれば、その情報を頭において飛べたかもしれない……と振り返っていました。

 また、カンヌ大会では新たなエンジンカウリングと、先端をひねるように跳ね上げたウイングチップを投入。まだ完全にセッティングを詰め切れていなかったとのことですが、フライトのタイムも良く、いい感触だったとのこと。実際にどのような改良であったのか、実機を前に説明してくれました。3日前に組み上げたばかりというレース機ですが、基本的にこの状態でトレーニングフライトを重ね、データを収集して熟成させたうえで千葉に臨むことになるそうです。




 今シーズンは各パイロットがハイレベルでせめぎ合う形になっており、どのレースも僅差の争いになるだろうと予測する室屋選手。チャンピオンを獲得したのはもう去年のことなので、また新たにチャレンジする気持ちでシーズンを戦っていくと語っていました。

 ■室屋選手単独インタビュー

 ――今回は、先日のエアロバティック飛行体験の経験に基づく形でお話をうかがおうと思います。まず、バーティカルターンの際の操縦桿の操作は、思った以上に小さなものだったので驚きました。

 「そうです。横に比べると非常に小さいですね。だからオーバーGになるかならないか、というのは、本当にちょっとした差なんですよ」

 ――そして、シケインでの機動で15ノットほど速度が低下したのも驚きました。あれだけ速度が落ちるんですね。

 「そうなんです。ですから、あそこをうまく飛べるかどうかで、5ノットくらい速度が違ってくるんですよ。結構大きい差です」

 ――さて、千葉の戦略についてですが、レーストラックの印象はいかがですか?

 「このトラックは、どのパイロットも経験とデータがあると思うので、本当に僅差になると思いますね。昨年よりタイムも間違いなく良くなると思うので……」

 ――予選では、0.5秒の間に6、7人が入りそうな気がしています。

 「そうですね。半分くらいはその範囲に並ぶと思います。ですから、非常に厳しい戦いになると思いますね。差が出やすいのは両端のターンだと思いますが、バーティカルターンだけでなく、反対側のハイGターンの攻め方も重要ですよ。いかにGをかけすぎずターンできるかで違いが出ます」

 ――機体の方について、おうかがいします。エンジンカウリングを改良して、冷却用の空気取り入れ口を拡大しましたが、今拝見したところ、下側の排気管カバーが付いていませんが……。

 「今ちょっと、調整のために外しているんです。カンヌで使ったものと、もう少し形状を変えたものとを試そうとしていまして。ここの(空気を排出する)部分の効率がエンジンの冷えに関わってくるんで、千葉ではカンヌで使ったものと新しいもの、どちらが付いているか楽しみにしていてください」


 ――また、左の主翼取り付け部分の近く、キャノピーの前の方の機体側面にドーサルフィン(空気の流れを整えるヒレ状の部品)的なものが付いていますが、あれはどういったものでしょうか?

 「まさにそのフィンですね。あちら側にしかつけていないんですが、姿勢によって、あの付近で失速する時があるので、そこの気流を整えるために付けています」

 ――片側だけ、というのは、プロペラ後流(プロペラによって発生する、らせん状の空気の流れ)の影響ということでしょうか?

 「その通りです。それを安定させる、ということですね」

 ――千葉では多くのマスコミが押し寄せることが予想されますが……我々も申し訳ないと思っているんですが、それがプレッシャーになりはしませんか?

 「まぁ、それは仕方のないことですからね。影響が出ないように、その辺りはちゃんとチームの方でマネジメントしてくれるんで……ただ、忙しくなることは確かですね。その点はうまくこなしていきます」

 地元日本のファンの前で、過去ポール・ボノム氏(イギリス)しかなしえていない「母国開催3連覇」に挑戦することになる室屋義秀選手。千葉・幕張の浜からのファンブーストで、ぜひとも3連覇を見たいものですね。

(咲村珠樹)