2018年1月15日(現地時間)、北海上空をロシアの爆撃機Tu-160ブラックジャックが当該空域の航空管制に予告および通信をせず飛行しました。このためアラート待機(QRA)していたイギリス、ベルギー各空軍の戦闘機がスクランブル。担当空域に合わせ、連携して対処に当たりました。

 北海方面はオホーツク海・日本海同様、ロシア軍機がよく偵察飛行を行うところで、NATO加盟国の空軍は、これに対してアラート待機(Quick Reaction Alert=QRA)を行っており、警戒空域に未確認機が侵入した場合、スクランブルして当該機の国籍等、情報を収集し、空域から立ち去るよう警告を行なっています。

 イギリス空軍、ベルギー空軍の発表によると、今回飛行してきたのはロシア軍のTu-160ブラックジャックが2機。編隊を組んで飛行し、この空域を担当する航路管制に対し、飛行予告もなく、また管制からの呼びかけにも答えなかったため、空軍にスクランブルが発令されました。

 当該機は、オランダとベルギーが共同で警戒を担当(原則4ヶ月ごとに交代でベルギー軍とオランダ軍がアラート待機を担当)している北の方から侵入してきたため、ドイツの総合航空管制センターからの通報で、まずは11時21分(現地時間)、当時アラート待機についていたベルギー空軍のF-16がフロレンヌ空軍基地からスクランブル。11時51分、オランダの北、北海上空の高度9000mで当該機と接触し、ロシア軍のTu-160ブラックジャックだと確認しました。

 ベルギー空軍のF-16は2機のTu-160に対し、領空に接近しているため退去するように無線で警告。Tu-160はそれに応えず、南下を続けます。

 やがてTu-160はベルギー・オランダが共同で警戒している空域をはずれ、イギリスの警戒空域に接近したため、今度はイギリス空軍のユーロファイター・タイフーンがスコットランドのロジーマス空軍基地からスクランブル。北海上空でベルギー空軍のF-16と合流したのち、任務を引き継ぎました。イギリス空軍に後を託したベルギー空軍のF-16は、フロレンヌ空軍基地へと帰還します。


 ベルギー空軍から対処任務を引き継いだイギリス空軍のタイフーンは、続けてイギリス領空に接近していること、この空域から退去するように無線で警告します。やがて2機のTu-160は進路を変え、ロシア方面へと戻っていきました。この間、領空侵犯はなかったといいます。

 ヨーロッパは様々な国が隣り合っているため、対領空侵犯措置は近隣諸国と担当区域を決め、複数の区域にまたがって未確認機が飛行する場合、このようにスクランブルをリレーしながら対処に当たります。このため、周辺諸国と良好な外交関係を維持していくことが非常に重要なのです。

Image credit:(c) MoD Crown copyright 2018

(咲村珠樹)