日本初の少女向けTVアニメであり、魔女っ子アニメの先駆けとなった『魔法使いサリー』。横山光輝のまんがが原作なのは知られていますが、「それに至る幻の作品」とされるものが存在しました。その作品『ちびっこ天使』がこのたび、初めて単行本としてリリースされました。

 単行本化したのは、電子書籍サイトeBookJapanを運営する株式会社イーブックイニシアティブジャパン。光プロダクションの全面協力により、作品発表からおよそ半世紀の時を経て、当時のカラーページも再現されています。

 『ちびっこ天使』は、集英社の少女まんが雑誌りぼんに1963年10月から1964年8月にかけて連載された作品。世の中の善悪を知らない二人の天使、チルル(作中では「チー子」とも自称)とマルルが天帝の命により、事の善悪を知って一人前の天使になる(天使の翼を与えられる)ため地上に遣わされるところから始まります。実は冒頭のこのシーン、原作版『魔法使いサリー』とコマ割りや構成などがそっくり。主人公は二人のペアですが、これがサリーとカブにつながっているようです。

 このほかにも、授業中に先生の問題をスラスラと解いてしまうシーンなど、サリーとの類似点が見られます。『魔法使いサリー』は、同じくりぼんの1966年7月号から1967年10月号まで連載されていますが、類似の設定で新しい表現を模索した結果だったのかもしれません。

『ちびっこ天使』授業シーン

『ちびっこ天使』授業シーン


『魔法使いサリー』授業シーン

『魔法使いサリー』授業シーン

 巻末には『おジャ魔女どれみ』『ふたりはプリキュア』『明日のナージャ』のプロデューサーを務めた、東映アニメーションの関弘美企画制作本部企画開発スーパーバイザーによるエッセイも収録。なにより嬉しいのは、電子書籍だけではなく、紙媒体の単行本も発行されること。これによって電子書籍のファイル形式が後年読めなくなったとしても、作品を永く後世に残せることになります。

(咲村珠樹 / 画像提供・株式会社イーブック イニシアティブ ジャパン)