1969年以来、48年にわたって走り続けてきたJR西日本、大阪環状線の103系電車が「103の日」となる10月3日、ついにラストランを迎え、惜しまれつつ営業運転を終了しました。

1963年に試作車が山手線に投入された103系。大阪環状線に登場したのは、1969年12月10日です。以来、国鉄時代から変わらぬオレンジバーミリオン(朱色1号)を身にまとった103系は、大阪環状線の顔として走り続けてきました。しかし製造終了から30年以上が過ぎ、何度かの体質改善(延命)工事を行いつつも、老朽化が目立ってきたこと、そしてホームドア設置で車両のドア間隔を統一する(103系・201系の片側4ドアから、他線区から環状線に乗り入れる車両と同じ片側3ドアへ)ためもあり、2016年12月24日に登場した新型車両の323系に道を譲り、環状線から勇退することになったのです。

最後の営業運転となったのは「103の日」となる10月3日。桜島線(JRゆめ咲線)桜島駅(大阪市此花区)10時55分発、大阪環状線直通京橋行きの列車番号2432E。運用に充当されたのは、唯一残ったオレンジバーミリオン色のLA04編成でした。当日は駅や沿線で、環状線を走る最後の姿を見届けようと、鉄道ファンや地元の人々が103系にお別れする姿が見られました。

玉造駅(大阪市天王寺区)そばにある、103系電車をモチーフにした外観を持つ商業施設「ビエラタウン玉造」の屋上では、施設の2階に設置されている「キッズファースト保育園」の園児による「103系電車おわかれ会」が開かれました。103系の通過に合わせ、園児たちが小旗を振って見送りました。

大阪駅など環状線各駅のホームでは、鉄道ファンもそうでない人も、103系の姿をカメラやスートフォンで撮影していました。長年走り続けて思い出のある電車なのか、年配のご夫婦が撮影している姿も。

この電車では、9月下旬から担当車掌による特別なアナウンスが行われました。

「ただいまご乗車中の103(いちまるさん)系電車は、10月3日をもちまして大阪環状線を卒業いたします。『オレンジ色の電車』として親しまれてまいりましたが、新型車両323(さんにぃさん)系電車にその役目を引き継ぎます。1969年12月10日のデビューから48年、長きにわたりご利用いただき、まことにありがとうございました」

最終運行の列車は11時19分、多くの人が待つ京橋駅(大阪市城東区)へ到着。その直前には、以下のようなさらに特別なアナウンスが行われました。

「ただいまご乗車いただいております、オレンジ色の103(いちまるさん)系電車は、本日をもちまして、大阪環状線から引退いたします。1969年、昭和44年12月10日のデビューから、走り続けた距離は9億5000万キロメートル。木星まで到達する距離と言われています。多くのお客様を乗せて走り続けてまいりましたが、その役目を新型車両323(さんにぃさん)系に譲り、次の京橋到着をもちまして48年の長い歴史に幕をおろします。今日もJR西日本、大阪環状線、また103(いちまるさん)系、103(ひゃくさん)系をご利用くださいまして、ありがとうございました。まもなく終点京橋、終点京橋に到着です」

最後の乗客をホームにおろした数分後、「さようなら」「長い間お疲れ様」という鉄道ファンの声に見送られ、回送列車として車庫へと向かいました。

ネグラである吹田総合車両所森ノ宮支所へ帰ってきた103系LA04編成は、新型車両323系の隣の留置線に並んで停車し、大阪環状線における48年間の歴史に幕を下ろしました。

10月3日の営業運転終了に先立ち、9月5日にYouTubeで公開された103系引退スペシャルムービー「LOOP大阪環状線」がSNSで、

「ちょ、このムービーめっちゃ泣ける…!!」
「引退なんて…うそだろ…。」
「オレンジの車両がもうすぐ引退…。映像見たら、急に愛着わいてきた。」
「当たり前だった風景が消えていく…ええ動画やった泣いた。」
「昭和がなくなっていく…。」
「大阪で両親は、出会いました。親戚もいたりするので、なんか、感動して見ておりました」

などと、大きな反響を呼んでいます。

そのムービーは、卒業をテーマにしたチャットモンチーの「サラバ青春」(2005年リリース)をBGMにした5分30秒の作品。

103系の前面展望映像が淡々と繋がれているように見えますが、雨の日や夕焼け、夜景などの沿線風景が「当たり前のように走っていた電車・103系」という印象を強くします。




そして並行して走る関西空港連絡特急「はるか」や、201系(これも2018年度には環状線から撤退予定)や新型の323系とのすれ違いなども、出会いと別れを思わせる感じです。「別れ」というものを意識すると「当たり前は特別」ということに気づくものですね。



ムービーは「人が変わっても、時代が変わっても、そして電車が変わっても。大阪の毎日を、変わらず回り続けていく」というメッセージの後、桜の名所である桜ノ宮駅〜天満駅にかかる淀川(大川)橋梁を渡る103系の姿で終わります。



最後の営業運転を終えて、今回の103系引退プロモーションを企画した「大阪環状線プロジェクト」担当者からは

「予想以上の大きな反響に驚きました。ありがたく思っております。これまで多くのお客様にご利用いただき、親しみをお持ちいただいてきた103系へは、社内でも思い入れや愛着を持つ社員が多く、今回の営業運転終了は我々にとっても感慨深いものでした。この103系と同じように、新型車両323系も多くの方に愛される電車になってくれれば、と願っています」

というコメントが届いています。

そして11月3日から6日までの期間限定で、京都鉄道博物館では今回のラストランに使用されたLA04編成の先頭車、クハ103-843が本館1階で展示される予定です。このほかにも京都鉄道博物館では、山手線、京浜東北線を経て、1976年〜2007年に大阪環状線を走っていた103系のトップナンバー、クハ103-1(最終配置は阪和線)が、大阪環状線時代の色に戻されて本館プロムナードに常設展示されています。

大阪環状線から姿を消した103系ですが、JR西日本の他線区、そしてJR九州の筑肥線、唐津線ではまだ走り続けています。国鉄の通勤電車として最多の製造数(3447両)を誇る103系が完全に引退するのは、まだ先のことになりそうです。

(咲村珠樹 / 画像提供・西日本旅客鉄道株式会社)