日本海に向かい紅い鳥居がつらなる「元乃隅稲成神社」。山口県民の私ですら最近まで「こんな神社が山口県にあったなんて!」と驚くほど、恥ずかしながら今まで行ったことがありませんでした。ところがこのところ、各方面で話題になっているのを小耳に。でも「元乃隅稲成神社」は実際そこまで知られていないのでは? と疑問に思いつつも、行ってみました!

場所は、山口県長門市。この街は、「私と小鳥と鈴と」や「大漁」で知られる詩人の「金子みすゞ」生誕の地なのですが、作品名にもあるように古くから漁業が盛んな街でカマボコの産地としても有名。そんな海の恵みが豊富な地域ということもあってか、神様がここで一喝! 昭和30年のある日、漁業を営んでいた岡村斉(おかむらひとし)さんの枕元に突然白狐が現れて、「漁をしてこられたのは誰のおかげか!」 とお灸をすえられたそうな。しかもこの地に祀るように具体的に指示をし、現在に至るというのですから、神様って本当にいるのかもと思ってしまいます。

お気づきかもしれませんが、元乃隅稲成神社は「稲荷」ではなく「成る」という字をつかう「稲成神社」。稲荷神社は全国で4万社ほどあるのに対し、「稲成神社」は全国でなんと2社のみ。調べた話によると島根県津和野町にある「太皷谷稲成神社」からおいなりさんが分霊されたそうです。

2015年にアメリカのテレビ局・CNNが発表した「日本で最も美しい場所31」に選出されたり、2014年7月に三才ブックスから出版された「死ぬまでに行きたい!世界の絶景 日本編」にも掲載されたというのですから、私が知る以前から知る人ぞ知る観光スポットだったのでしょうか。他にも、インスタ映えする観光スポットとして人気のようですね。


行った時期がお盆明けということもあってか渋滞につかまり、山のふもとから車で約50分。なんとか到着することができました。車を降りてしばらく歩いていくといきなり景色が開けます。そこには「こんな絶景、見たことがない」というほど、目の前には、どこまでも続く真っ青な水平線が広がります。下の海から潮風が山上まで届き、ひんやりと心地良かったのを覚えています。入口の鳥居をくぐると白狐と思われる石造もちらほら。

商売繁盛、大漁、海上安全、良縁、子宝、開運厄除、福徳円満、交通安全、学業成就などたくさんのご利益があるそうなので、しっかり手をあわせて私利私欲を唱えてお祈り! 


さっそく123基もの紅い鳥居の中を入っていくと、すぐに急な傾斜が……。「足を踏み外したら危ないで!」と観光客どうしでも声をかけあいながら降りるほど。ご高齢の方もかなりいたのですが、とてもデンジャラスな場所でした。体を横にしておりながら、行違う人の合間を縫っていくように進みます。一歩ずつ海に近づくにつれ、波しぶきの音がまじかに迫ってきているのを感じます。やっと海の近くに到着すると、自然とはーーっと思わずため息がもれてしまうほど、キレイな景色が広がっていました。

帰り道、今まで降りてきた鳥居を見上げてみたら、急にゾッとしましたけどね。
すぐ横は崖という、「険しい自然の中に絶景が見られる」そんな場所でした。


あともう一か所、観光名所と呼ばれるところに行きました。私の父がたまたま地元の方が話しているのを聞いたようで「昔よりも廃れたよ、あそこは……と言っていたから、どんな廃れ具合なのか、行ってみよう」ということに。
実際行ってみると、なぜ廃れたといっていたのかわからないぐらいの感動がありました。


そこは、「千畳敷」といって、ジブリにも出てきそうな標高333mの高台にある草原。眼下には海が広がり、空の青と海の青が溶けあって、まるで天国に来たのではないかと思うほどの大パノラマ。遠くのほうには、風力発電のプロペラでしょうか? 海風を音に変えて力ずよく回り続けていました。夏は、青い海を山上から眺めながらバーベキューをしたり、キャンプを張って楽しむこともできるとか。くーーー最高ですね♪ すぐ近くには「カントリーキッチン」というカフェもあるので、景色を見ながらゆっくり寛ぐこともできますよ。
元乃隅稲成神社から車で10分もかからない距離にあるので、ぜひ千畳敷にも足を運んでみては?

元乃隈稲成神社
所在地:〒759-4712 山口県長門市油谷津黄498
開館時間:日の出から日没まで ※夜間の立入禁止
アクセス:
・JR山陰本線「長門古市駅」からタクシーで約20分
・JR山陰本線「長門市駅」からタクシーで約40分
・中国自動車道「美祢IC」から車で約60分

千畳敷
所在地:〒759-4402 山口県長門市日置中1138-1
駐車場:200台※大型可/無料
アクセス:
・JR長門古市駅からタクシーで約10分
・JR長門市駅からタクシーで約25分
・中国自動車道「美祢IC」から車で約60分

(黒田芽以 / 画像・編集部撮影)