『人妻プリン』という商品ののぼりが先日ネット上をにぎわせていました。人妻プリン……一体何なのだろう。人妻のイラストが描かれたプリン?なんなんだ……一体何なんだ……と、気になってしかたなくなったのでやってきました佐賀県神埼市!

最寄り駅のJR神埼駅を降りると卑弥呼様が迎えてくれます。田んぼや畑、古くて大きな家を見ながら歩いて行くとプリンを販売している『神埼やぐら寿司』に到着しました。お店の前の休憩所では人妻のイメージ看板がお迎えをしてくれます。


ちょうどランチタイムということもあり、お店は近所の主婦仲間、家族づれ、会社の仲間同士というメンバーでいっぱいでした。待っている間店内の様子をみていると、食事を済ませた人が巻き寿司とプリンを買って帰ります。主婦のグループが「今日は夜の人妻ないの?」「ここの人妻プリン濃厚で美味しいのよ」と話しているのはなかなかにシュール。


ランチの人波が引いた頃、店主の佐藤さんに話を聞くことができました。

実は人妻プリンを知った時に一番気になっていたのが何故プリンなのか。そしてなぜ『人妻』なのかということでした。なのでそのことについて聞いてみたところ、お寿司の膳に茶碗蒸しはつきもので、その技術と経験を活かして奥さんの真由美さんが元々プリンを提供していたのだそうです。

確かにすのないプリンを作るコツは茶碗蒸しと同じです。そうして提供していたところ、奥さんが大きな病気で倒れてしまいます。その前年にやはり子どもさんが病気ではないかと診断され、家族全員が暗いムードに包まれてしまいました。幸いお子さんの診断結果は良好で、ホッと安心していたところ今度は頑張ってお店のプリンを提供し続けていた奥さんが大病を患ったことに佐藤さんも心を痛めたそうです。

その後奥さんは危機を乗り越え、お店に戻ってくるとまたプリンを作り始めました。病気の治療、家庭、仕事と頑張る奥様のプリンをもっと食べてもらいたくて『妻のプリン食べてください』という名前で売り出していましたが、世の中の奥さんたちにはみんなそれぞれに素敵なところがあるという思いから『人妻プリン』という名前へと進化したのでした。プリンのベースになるカスタードは『真由美のカスタード』という奥さんレシピのカスタード、だから一番ベーシックなプリンは『真由美のカスタード』と名付けられたのでした。

■頑張る奥さんたちへのエール

決してご主人が人妻好きだからではなく、頑張る奥さんたちへのエールとして考えられたものなのです。実はお店で出されている箸袋や箸置きなども、お店で働く奥さん(従業員)たちの作品、ドライブスルーも呼び鈴を押すと真っ先に対応するのは奥さんたち。佐藤さんはお店で働く奥さんたちの素晴らしさも伝えるためにこうして人妻にこだわったお店づくりをされていたのです。


それだけではなく、プリンの売り上げから『人妻プロジェクト』を立ち上げて、佐賀県で病気の治療やその後のケアで困っている家族へ還元したいと活動を始めたところだそうです。これは筆者自身も大きな病気の後、社会復帰をするのに家族の協力がなければ叶わなかったこと。そしてそのために家族が時間的、金銭的、体力的に苦労をしているのをみて申し訳なく感じていたので、ぜひ実現させて欲しいと感じました。

さらに佐藤さんのこだわりはこのプロジェクトを佐賀の素材と佐賀の人材を使って佐賀に還元したいと考えていることです。
帰りにみんな買っていく巻き寿司に使われ、プリンの材料として使われる卵も当然佐賀産ですし、海苔は有明産のもの、こうして出来る限り佐賀の土地のエネルギーを使って佐賀に戻すこと、そしてこの循環方法が人妻プリンを発祥にして全国に広がることが佐藤さんの夢なんです。

とても壮大ですが、奥さんへの愛情がなければ、そして奥さんの魅力がなければ考えつかなかったプロジェクトですよね。

■一番人気は『真由美のカスタード』

さて、肝心のプリンですが一番人気『真由美のカスタード』、『よしえの抹茶』、『陽子のクレメンティン』、『いづみのデカフェ』、そして今回売り切れで買えなかった『真由美のラムレーズン』(別名夜の人妻プリン)の5種類です。


カスタードはバニラビーンズの粒が蓋を開けると見えています。味は濃厚で、でもすっと口の中で溶けて優しい甘さが広がります。抹茶はさっぱりとしてプリンの味をそこなわないけれど、口に入れるとふわんとお茶が香ります。デカフェは佐賀のコーヒー屋さんで豆を厳選し、デカフェでも美味しく飲めるよう追求されたものを使っているのですが、プリンの甘味を感じつつほろ苦さが大人の味です。クレメィンティはさっぱりとした柑橘の甘みと酸味がプリンにマッチしていて、どれも美味しくいただいてしまいました。特に口どけの滑らかさは病みつきで止まりません。これはみなさんが食後に買って帰るのも納得です。

プリンと同じく人気の巻き寿司もいただいてみました。柿酢の柔らかい甘みの寿司酢と甘くてしっかりとした大きな卵の濃厚な美味しさがこちらも絶妙であっという間にこちらも完食してしまいました。

佐藤さんのお話は、家族について、女性の魅力について、そして地元愛についてでした。最後にプリンを作られている奥さんにお会いしました。優しい笑顔と柔らかな雰囲気の素敵な方でした。佐藤さんはいつか全国ネットの放送局でこのプリンの良さと『人妻プロジェクト』について紹介したいと熱望されていたので、想いと一緒に叶えばいいなと思いながらお店を後にしました。

愛情のつまったこちらのプリンはインターネットでも購入が可能です。奥さんたちの愛情プリンを是非食べてみてくださいね。

<取材協力>
神埼やぐら寿司
〒842-0107 佐賀県神埼市神埼町鶴926-1
営業時間:店内販売11時~
定休日:火曜

(天汐香弓 / 画像・編集部撮影)