人々はなぜ「アイドル」に惹きつけられてしまうのでしょう。それを考察する企画展が、4月26日から東京都渋谷区の國學院大学博物館で行われます。入場は無料です。
人々の願いと憧れを集める存在としての「アイドル(偶像)」。「芸能」を軸に、その歴史を古代から辿って考察しようというものです。

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偶像(アイドル)の系譜-神々と藝能の一万年-

國學院大学といえば皇典研究所をその源流に持ち、神道文化学部で神職の育成を行っていることでも知られています。また、歴史(史学科)や民俗学(日本文学科)でも知られた存在。芸能の源流は、神楽など「神に捧げる儀式」としてのものなので、非常に國學院大学らしい企画と言えるでしょう。

展示には「目に見えぬカミ(超越者)を具現化した姿」である神像や、土偶といった文字通りの偶像も。人々がこれらに何を投影し、思いを託していったのかを感じることができます。

神事から「芸能」が独立して成立すると、人々の思いを投影し、憧れの対象となるのはモノである偶像から、芸能を行う人そのものに移行していきます。これが現在一般的に用いられる「アイドル」の誕生と言えるでしょう。

浮世絵などメディアが発達した江戸時代では、美人画を通じて役者などの芸能人だけでなく、市井の一般人も「アイドル」化していきます。展示では江戸時代に人気を集めた「江戸(明和)三美人」のひとり、谷中「鍵屋」の看板娘だった笠森お仙に焦点を当てて紹介。鍵屋では手ぬぐいなどのオリジナルグッズが作られ、時代が下ってからは河竹黙阿弥の手により歌舞伎『怪談月笠森(かいだんつきのかさもり)』の題材(ヒロインのモデル)にされるなど伝説的な存在となった彼女の魅力に迫ります。

会期中の5月7日には、神道考古学の立場からアイドルの発生を研究している深澤太郎准教授(國學院大学博物館)と、芸術と考古学の関係を研究分野としている石井匠学芸員(國學院大学博物館)のミュージアムトーク『歴史に見るアイドルの原点』が開催されます。

また5月14日には、日本美術史、日本近世史の研究者で、特に美人画などの浮世絵に造詣の深い、國學院大学文学部史学科の藤澤紫教授によるミュージアムトーク『江戸・東京のカワイイ文化』が開催されます。

どちらも申込不要で無料のもの。非常に興味深い内容になりそうですね。

この企画展の同時開催イベントとして、5月21日から「第42回 日本文化を知る講座『日本列島藝能史』」が全4回の日程で企画されています。こちらは事前申込(4月18日から受付・各回先着300名)が必要です。

古代からの「アイドル」の歴史を知ることで、今のアイドルを見る目も変わってくるかもしれません。

▼参考
國學院大学博物館「偶像(アイドル)の系譜-神々と藝能の一万年-」4月26日~6月12日(入場無料)
ミュージアムトーク案内
第42回日本文化を知る講座「日本列島藝能史」

(文:咲村珠樹)