あなたは漫画を読むときにそれが男性向けであるか、女性向けであるかを違和感や実感によって感じたことってありますか? ネット上で、まとめサービスtogetterの投稿『エロ漫画における男性向けと女性向けの違いをまとめた図がわかりやすいと話題に』が先日盛り上がっておりました。

 

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男性向け漫画と女性向け漫画ではエロシーンに違いが見られるのか?

 それによると、

▼女性向け
2人の表情、横から見たアングル、お互いが必死になっている様子、手の握り合い、キスなどが多く、事後の展開も重視されていて行為の途中に回想やギャグが入る場合もある。

▼男性向け
女性のバストやヒップに焦点を当てつつローアングルが多めであり、事後の展開ななくても大丈夫で、一度行為のシーンに入ったらギャグや萌えない回想は基本的にNG。
(参考:http://togetter.com/li/822265

 という指摘がされていました。

 この場合でいうエロ漫画は成人漫画か否かなのか、それともエッチなシーンを重視する成人指定のマークがついていない漫画なのか同人誌も含むのかが明記されていませんでしたが、非常に言い得ているとわたしも思いました。

 なので、今回は男性向け漫画と女性向け漫画におけるエロシーンについて、個人的にピックアップした36タイトルを読み比べつつ考察していきたいと思います。

■男性向け女性向けの定義とそれぞれの特徴は

 今回は同人誌とボーイズラブ漫画以外のあらゆる漫画を読み比べました。ボーイズラブを省いた理由は、女性向け漫画でありながら該当するシーンは男性向けに近いからです。同人誌も同様の理由です。
 また、漫画家の性別や掲載誌の読者の男女比率で男性向け女性向けを分けてしまうと現在は女性でも男性からの支持のほうが高い漫画家がいたりするために「男女どちらのファンが多いか」で男性向け女性向けを区別し、その中でベッドシーンをピックアップしました。

 それぞれを比べてみると、女性向け漫画における行為の最中は表情を重視して描いていることが多く、また主に女性側のモノローグが多いように感じました。また、直接的な描写を避ける傾向にあり、その理由としては登場人物の感情をより浮き立たせたいからではないかと考えられます。
 また、男性向け漫画ではバストやヒップ、さらに口元に焦点を当てる描写が多く見られ効果音や擬音語も多めでした。動きに躍動感があるところも女性向け漫画とは大きく違う点ではないでしょうか。

 特記すべきは、擬音語の効果音が男性向け漫画では多めに描かれていましたが、女性向け漫画ではかなり少なめでした。また、「腰を振る」という動作についても男性向け漫画の場合はそれがわかるように描かれているのに対して、女性向け漫画では極力描かれていませんでした。

■相手か誰か、物語の中で行為がどういう意味合いを持つかで変わる
 
 また、行為の相手が誰か、物語の中で行為自体がどういう意味合いを持つか、でも該当シーンの描写に違いが見られました。

 例えば、男性ファンが多い場合でも物語の主軸に甘酸っぱい恋愛が組み込まれていたたら女性向け漫画の該当シーン寄りの描写になり、女性ファンが多い場合でも成人漫画まではいかないまでもエロティックさを売りにした漫画雑誌に掲載されていた作品の場合、男性向け漫画の該当シーン寄りの描写になりがちです。

 このことから考察するに、漫画家たちは読者の性別よりもニーズをまず第一に考えて物語にストーリーに沿って違和感ないよう行為のシーンをうまく描きわけていると考えられます。

■なぜ男性向け漫画と女性向け漫画で違いが出てくるのか

 男性は脳のつくりから女性よりも視覚的聴覚的なものでより興奮しやすい、とされています。 

 一方、女性は処女が重宝されることからも貞操を大事にするのが当たり前とされてきた近年の歴史から、行為において快楽よりも相手の気持ちが自分に向いているかどうかで興奮する度合いが変化します。ヒステリックの語源が女性の子宮であるように、普段の生活においては男性のほうが理性的なように思えますが行為のシーンにおいては本能的な興奮に従順なのは男性であり女性はまず自分の感情やシチュエーション、その行為は自分の貞操観念的にどうであるのかを推し量ります。女性は行為によって妊娠する場合もあるわけで、そうなると後々のこともあり快楽のみに身を任せることが男性よりも難しいのでしょう。
 そんな行為に対する捉え方の違いが、漫画の描写の違いに現れているのではないでしょうか。

 そんなこんなで色々読んでぐるぐる考えたりしていましたが、少女漫画を読んでいるときに、ふと思ったことがありました。

 どの少女漫画でも「大好きな彼とやっとひとつになれてすごく感動する」というシーンにおいて、キスから行為へ移行し結合して「こんな幸せ初めて」となるわけですが、腰を振る動作についてはもちろん省かれています。これを読んだ世のティーンたちがそんなシチュエーションに憧れていざ実践したときに「え、こんな間抜けに腰振るの!?」と幻滅しないことを祈るばかりです。

(文:貴崎ダリア)