つい先日、舞台を見る時の観劇マナーについてネット上で話題になっておりました。ことの発端は、ある新聞によせられた女性の方の投稿。

投稿では帝国劇場にミュージカルを見に行った時のエピソードが紹介されていました。投稿者が座っていたのは2階中程の席。
出演俳優の顔がはっきり見えづらい席だったため、少しでも近くで見ようと思わず身を乗り出したところ、係員から「椅子に背中をつけて見てください」と注意をうけたそうです。
その後は、言われた通り座っていたものの、どうしても納得行かないものを感じ、誰に迷惑をかけているわけでもないのに、観劇する人の姿勢にまで劇場が干渉して良いものかと問題提起していました。

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この投稿に対しネットでは「帝国劇場では観劇中身を乗り出さないよう事前にアナウンスしているから注意されて当然」「後ろの人が見えなくなる」という、投稿者側に問題があったと指摘する声から、「マナー違反なのにどうして掲載したのか疑問」という新聞社の対応を問題視する声もあげられていました。

この問題は、ネットで指摘される通り、投稿者の方がマナー違反にあたります。ほとんどの劇場ではどの場所からも舞台が見えるよう席が設置されており、背もたれに背中をくっつけて座ればきちんと舞台が見えるようになっています。しかし前の人が少しでも身を乗り出すと、特に2階3階の傾斜が少しきつめの席では後ろの人が見えづらくなる傾向が強いのです。

そのため開演前に「前かがみや身を乗り出しての観劇はご遠慮ください」とアナウンスしている劇場が多く存在しています。

■観劇マナー

とはいえ知らない人にとっては、素敵な舞台、つい身を乗り出したくなる気持ちは分かります。ただ、舞台観劇は一人で行うものではなく、その他大勢の人と行うもの。
「私だけは~」と一人自由に解き放たれてしまわずに、みんなで気持ちよく観劇したいものですよね。

そこで折角話題になったこの機会、最後に周知をかねて舞台観劇のマナー、心がけておきたいことを、舞台ファンの筆者の経験からいくつか紹介しておきます。

【これだけは守ってほしい】

▼遅刻はしないで

舞台に行きなれていない人にとっては「どうして?」と思う問題かもしれません。でも実はこれ結構重要なことなのです。

劇場に足を運んでみると分かりますが、いずれの席も座ってみると前に人が通れるスペースはほとんどありません。列の真ん中くらいの人が遅刻してくると、その席までの人たちは一旦立つか足を邪魔にならないように縮めて通さなければならないのです。もちろんその間、舞台から一旦目が離れてしまいます。
他の人の観劇を邪魔しないためにも、開演5分前、幕間終了5分前にはきちんと席についていてほしいですね。

▼背もたれに背中をつけて見て!背筋ピンも遠慮して!

先にも紹介した通り、後ろの観劇を妨げることがあるからです。他にも背筋をピンと伸ばして観劇することも座高をあげるため後ろの人の観劇を妨げることがあります。

「遠い席だけどどうしても俳優さんの顔が見たい!」という方は、各劇場ではオペラグラスがレンタルされています。帝国劇場の場合には貸出料500円、保証金5000円です。保証金は紛失や破損などしなければ返却時に返金される仕組みです。ちなみにオペラグラスを使っている最中つい集中しすぎてどんどん前に出てしまい、はたからみるとまるで「一人偵察部隊」みたいになっている人がいます。使っている最中も背中を座席にくっつけることは決して忘れないでください。

▼髪型にも配慮して!

これは筆者個人の経験からですが、ある時前の席の女性が少し高めのポニーテールをしていたことがあります。もちろん見づらかったです。他にも、トップが高めのお団子ヘアや、ツインテールも後ろの方を思うならば、少し遠慮した方が良いかもしれません。帽子をしたまま観劇するのは論外です。

▼リズムはとらないで!

まれににですが、流れてくる音楽にあわせてリズムをとって揺れてしまう人がいます。周りに非常に迷惑です。ノリたい気持ちは分からなくもありませんが、そこはグッとこらえて!
でも作品によっては推奨する場面もあるので、その辺は出演する舞台俳優のあおりや劇場アナウンスの指示に従ってください。

追記:「作品によっては自然にリズムをとってしまう」「周囲の盛り上がりにあわせて手拍子などをうつこともある」というご指摘をいただきました。
上記で紹介している例は観劇中音楽にあわせて足を「カツカツならす」「揺れる」などを想定しています。その点説明不足があったことお詫びします。
なお、上記にも紹介したとおり、作品により推奨するものもあるため、舞台俳優のあおりや劇場の事前アナウンスに限らず作品・場面の盛り上がり、周囲の空気にあわせた手拍子・リズムをとっての盛り上がりなどは問題ないものと思われます。

【でもこれはやっていいんだよ】

▼舞台終了後に立ち上がって拍手を送るのはOK!

以前コマ劇場で観劇していた際、舞台の最後に観客が総立ちして舞台に拍手を送るという「スタンディングオベーション」に遭遇したことがあります。

その時隣にいたご婦人が「みんな立って見えないわ!!!」と大声を出してご立腹になったのを見かけたことがありますが、スタンディングオベーションは観劇マナーとしてはOKです。

全ての舞台で行われるわけではないのですが、観客が立ち上がり拍手を送るというのは「舞台制作者・出演者たちへの最大の賛辞」という行為とされています。やるのは大体、最後の挨拶も終わった後。そのためタイミングが計りづらい行為です。ただ中には毎日見に来るプロの観客がいるので大概はそうした人たちが率先して行ってくれます。もし遭遇したならば「お、いっちょやったるか」ぐらいのノリで立ち上がり舞台に向かって拍手を送ってみてください。

※本稿で紹介している観劇マナーはごく一部です。他にも「こんなこと遠慮してほしい!」「これは嫌だったな!」という意見があれば、SNSのコメントなどで記事にお寄せください。
後にまとめて紹介することがあります。

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■お寄せいただいたご意見

▼携帯の電源はマナーモードではなくオフにして欲しい
マナーモードの場合に着信があると画面が明るくなったり、着信ランプが点灯して他の人の観劇の妨げになることが多発しているようです。
また観劇中に携帯電話をいじる行為も「明るくなるのでやめてほしい」という意見があげられています。

▼撮影はやめて欲しい
論外の話ですが、劇場などから許可が出ていない場合には上演中の撮影行為は禁止されています。

▼話し声、レジ袋の音、咳払い
話し声、レジ袋の音が気になるという意見も多くみられます。咳払いについては多少仕方ない面もありますが、せめて周囲に迷惑をかけないよう口元をハンカチで押さえるなどの配慮を求める声があがっています。

▼その他
係員をされている方からこんなコメントがよせられていました。「遅れて来たら必ずしも自分の席に行けない(立ち見)場合や場内に入れない事もある。時間に余裕を持って来て欲しい。」というご意見。遅刻については記事中で他の方への迷惑のみ触れていましたが、場合によっては折角の観劇の機会を失うことにもつながるようです。

(文:栗田まり子)