皆様こんにちは。ミリタリーにおける『食』、特にレーションについてご紹介していくDachoの『ミリヲタ的グルメ』。
今回は、ウクライナ軍レーションをご紹介します。最近大きな出来事の舞台となりニュースに登場することも多かったウクライナでは、どのようなレーションが使われているのでしょうか。

【関連:第35食 自衛隊の新型戦闘糧食I型】

●ウクライナ軍レーション

ウクライナ軍レーションパッケージ

これが現在ウクライナ軍で使用されているレーションです。1パックに3食分の食料が詰められた1日用のレーションです。
実は、この緑のビニールパックのレーションは、今年になって採用された最新型で、今まではプラスチックのトレイ型のパッケージでした。旧型では9カ月だった賞味期限が、新型では2年間になっています。また、エネルギー量も600Kcal以上増えて4,232Kcalとなりました。

●ウクライナ危機とアメリカ軍MRE
2014年に入ってウクライナでいくつもの重大な事態が発生し、多くの国がウクライナ政府を支援したことは、皆様もご存じではないかと思います。その中でノルウェーとアメリカは、軍のレーションを大量に支援物資としてウクライナへ届けました。ところが、30万食が引き渡されたアメリカ軍のレーション『MRE』は、非常にひどい扱いを受けてしまいました。
まず、ウクライナで放送されたTVニュース(http://youtu.be/X2fM6RMKDgU)をご覧ください。

今回の主役であるウクライナ軍の新型レーションを紹介する番組です。前半はウクライナ軍人からの説明とレーションのパッキング工場の様子が流れ、後半は軍人が実物を手に新型レーションの素晴らしさを主張します。ここで何と他国からの援助物資であるMREと並べて、我々の口に合うのはウクライナ軍の新型レーションだと力説し、犬がどちらを食べるかのデモンストレーションまで行います。自分たちのレーションが優れていると主張するのは自由だと思いますが、他国からの援助物資をこのように扱うのは、私としては非常に失礼な行為だと思いますし、多くの血が流され国境線が書き換わりそうな状況もあまり深刻に感じてないのかなと疑ってしまいました。
動画の最後でWebページと記者会見の様子が流れますが、これはアメリカから援助されたMREが大量に横流しされ、インターネットで1つ120フリヴニャで販売されているのというニュースです。(フリヴニャ:ウクライナ通貨、120フリヴニャは2014年12月18日現在900円程度)その結果、高官が記者会見で釈明する事態になってしまいました。

●ウクライナ軍レーションの中身

朝昼夕食パッケージ

上でご紹介したニュース動画では、手作業でパッケージを熱封印するシーンが流れますが、これが雑なようできちんと密封できておらず、大穴が開いていました。パッケージを開くと、中から朝食、昼食、夕食のパッケージと砂糖の粒がたくさん出てきました。よく見ると、夕食のパッケージも密封できておらず、振るとサラサラと音がするので、この中の砂糖が漏れてしまっているようです。
ダメージの確認もあるので、夕食、昼食、朝食の順に試食することにしました。

▼夕食

ウクライナ軍レーション夕食

・クラッカー 2パック
・牛肉と米とそばのカーシャの缶詰
・ハチミツ 2パック
・紅茶(ティーバッグ)
・砂糖
・ウェットティッシュ
・紙ナプキン

やはり砂糖の流出元は夕食でした。砂糖のパックに穴が開いていて、夕食パッケージの中も砂糖だらけでした。
カーシャとは、穀物を煮込んだ料理で、よく粥と比較されることがあります。本連載の『第6食 ロシア軍IRP-B』(https://otakei.otakuma.net/archives/3296659.html)にも登場しました。

ウクライナ軍レーション夕食試食

牛肉と米とそばのカーシャの缶詰は、米が主体で繊維状の牛肉が混ぜられていますが、そばは判別できず本当に入っているのかどうか分かりませんでした。粥というよりは柔らかめのご飯という感じで、シンプルな塩味がちょっと強めです。混ぜご飯のような感覚で無理せずに食べることが出来ましたが、植物油がたっぷり入っているので終盤はややうんざりしました。
クラッカーは、湿気っていて非常に硬く、一生懸命噛みしめて食べました。ハチミツを付けるとホッとする甘さで食べやすくなりました。
レーションの外袋も中袋も全く密封できていなかったためか、紅茶は完全に香りが無くなっていました。クラッカーにしろ紅茶にしろ、製造から4カ月でこの調子では、賞味期限の2年後にはどのような状態になってしまうか分かりませんね。

▼昼食

ウクライナ軍レーション昼食

・クラッカー 2パック
・朝食プレミアム肉の缶詰
・紅茶(ティーバッグ)
・砂糖
・ウェットティッシュ
・紙ナプキン

『朝食プレミアム肉』が一体どういう意味なのか、なぜ朝食という名前の料理が昼食なのか、調べてみてもよく分かりませんでした。『あさげ』という味噌汁を昼食で飲むような感じでしょうか?
今回は、砂糖は漏れていませんでしたが、封の部分にたくさん砂糖粒が挟まっていて雑な作業であることがうかがえます。
品数は、昼食が一番少ないです。

ウクライナ軍レーション昼食試食

謎の朝食プレミアム肉の缶詰は、スープに入った肉の塊でした。ラベルによると牛肉です。写真に写っている白い塊は脂肪で、加熱するとスープに溶け込みました。塩味中心のシンプルであっさりした味付けで、なかなか美味しいです。肉は、粗挽きにして捏ねずにそのまま固めた感じで食べやすいです。
クラッカーは、今回はそんなに硬くなく、食べるのに苦労はありませんでした(笑)
紅茶は、相変わらずダメですね(笑)

▼朝食

ウクライナ軍レーション朝食

・クラッカー 2パック
・牛肉と大麦とそばのカーシャの缶詰
・レバーパテの缶詰
・インスタントコーヒー
・砂糖
・ウェットティッシュ
・紙ナプキン

缶詰が1つ多い分、朝食が一番ボリュームがありますね。

ウクライナ軍レーション朝食試食

牛肉と大麦とそばのカーシャの缶詰は、夕食の『牛肉と米とそばのカーシャの缶詰』と同じラベルでしたが、米ではなく大麦になっています。牛肉も塩味も植物油も同じですが、大麦の風味がかなり強いです。米のカーシャはすぐに馴染める味でしたが、大麦のカーシャはクセが強く感じられ、1缶食べるのは大変でした。
クラッカーは、今度はちょっと硬めです。色々な国のレーションでクラッカーを食べてきましたが、パック毎に硬さが違うのは初めての事です。
レバーパテの缶詰は、ラベルによると牛のレバーです。それほどクセは強くないので、よほどレバーが苦手ではない限り、食べやすいのではないでしょうか。もちろんクラッカーに載せて食べました。
インスタントコーヒーは、苦味がしっかりしていて、個人的な好みですがインスタントとしては結構美味しいと思いました。

ところで砂糖は、量がかなり多く、1パックでティースプーン5杯分程もあります。当然レーションの総カロリーにこの砂糖3パックも含まれていると思いますが、ウクライナでは飲み物にこんなにたくさん砂糖を入れるのでしょうか。
 
試食してみたウクライナ軍レーションは、やや油っこいものの日本人にも馴染みやすく、結構美味しいのではないかと思います。しかし、何度も書いたように非常に雑なパッキングが気になりました。戦時の急造品で仕方がないのかもしれませんが、中の食品が劣化してしまっては元も子もありませんね。
 
注意してください!!
ウクライナ軍レーションを初めとする各国のレーションは、我々民間人が手に入れて食べることを前提としていません。
これらを販売する業者なども、あくまでコレクション品として取り扱っています。
食品としての安全性は、各国政府、製造業者、販売者の誰も保証してくれませんので、万が一食べる場合は、すべて自己責任になります。

(文・写真:Dacho)