第5回の続きです。

 【第13章・・・ゴジラVSシリーズ】

 1984年版『ゴジラ』の5年後、1989年にはその後日談である『ゴジラVSビオランテ』(本篇監督・大森一樹、特技監督・川北紘一、音楽・すぎやまこういち)が公開されます。

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以後1995年の『ゴジラVSデストロイア』まで毎回タイトルが『ゴジラVS○○』であり、複数作品に跨って登場する人物や組織がいること、1984年の『ゴジラ』から『ゴジラVSデストロイア』まで劇中世界が共通していることから、1984年の『ゴジラ』から『ゴジラVSデストロイア』までは『ゴジラVSシリーズ』と呼ばれています。

 『ゴジラ』では核兵器、『ゴジラ対ヘドラ』では公害に対する警鐘が鳴らされましたが、『ゴジラVSビオランテ』では遺伝子工学に対する警鐘が鳴らされました。本作のストーリーは一般公募され、採用されたのが小林晋一郎の作品です。小林は『帰ってきたウルトラマン』第34話「許されざるいのち」の原案者でもあり、両作品とも動物と植物が融合した怪獣が芦ノ湖に出現し生命科学の在り方を問うストーリーとなっています。

 人間ドラマ面での特徴は、前作は政府の視点から描かれたシミュレーション映画だったのに対し本作は自衛隊の視点から描かれたシミュレーション映画になっていること、『ゴジラVSデストロイア』まで連続登場する超能力者・三枝未希(演・小高恵美)が初登場したことが挙げられます。

 ストーリーは1984年版『ゴジラ』の直後から始まります。ゴジラ襲撃直後の新宿で、ゴジラの細胞(G細胞と呼ばれる)の争奪戦が繰り広げられるのです。その5年後、白神博士(演・高橋幸治)が、核物質を食べる抗核エネルギーバクテリアを開発、併せて、娘の細胞を移植した薔薇にG細胞を合成し新たな生物を作り出していました。この生物が巨大化した姿がビオランテです。
一方、ゴジラは前作『ゴジラ』のラストで三原山の火口に落下して眠っていましたが、テロリストが仕掛けた爆弾で三原山が爆発したため復活。自衛隊は、黒木特佐(演・高嶋政伸)が指揮するスーパーX2でゴジラを迎え撃ちます。スーパーX2は前作に登場したスーパーXの後継機で、ファイヤーミラーという装備でゴジラの放射熱線を反射することが可能です。更に自衛隊は抗核エネルギーバクテリアをゴジラの体内に打ち込みます。ゴジラとビオランテの戦いは、結局、抗核エネルギーバクテリアの作用により引き分けに終わるのでした。

 尚、抗核エネルギーバクテリアによって活動が低下したゴジラは、23世紀まで一度も出現しないことが次回作『ゴジラVSキングギドラ』で判明します。凄い威力だ。

 ところで本作には、『サンダ対ガイラ』『ゴジラ対ガイガン』『ゴジラ対メガロ』で活躍したメーサー殺獣光線車の後継機、メーサータンクが登場しました。以後、メーサー兵器のシリーズが続々登場することになります。

 音楽面では、すぎやまこういちがファンタスティックな劇伴を披露している他、伊福部昭の楽曲も流用されました。劇中では「ゴジラのテーマ」「ゴジラの恐怖」そして24年ぶりに登場の「怪獣大戦争マーチ」が流れています。伊福部昭以外の作曲家が手掛けた作品で、映画の劇中に「ゴジラのテーマ」「ゴジラの恐怖」が流れたのは本作が初めてです。オープニング曲はすぎやまこういち作品と伊福部昭作品のメドレーでした。また、G細胞争奪戦の場面に流れた「バイオ・ウォーズ」には「ゴジラのテーマ」っぽいメロディが含まれています。
本作の翌年に発売されたファミコンソフト『ドラゴンクエストⅣ 導かれし者たち』(音楽・すぎやまこういち)は時期が近いこともあって、『ゴジラVSビオランテ』と『ドラクエⅣ』には似ている劇伴も見受けられます。『ゴジラVSビオランテ』の映画全体のテーマ曲は『ドラクエⅣ』のラスボス戦の劇伴「悪の化身」に似ていますし、『ゴジラVSビオランテ』の自衛隊の曲「スクランブル・マーチ」は『ドラクエⅣ』のフィールドの曲「馬車のマーチ」に似ています。
そして本作の劇伴で一番素晴らしいのは雄大なスーパーX2のテーマ曲です。演奏時間は何と約6分という怪獣映画音楽としては異例の長さとなっています。残念ながら映画ではフルサイズでは流れませんが、エンディングで一部カットされたバージョンが流れています。宇宙空間に薔薇の花が浮かぶ幻想的な映像にスーパーX2のテーマ曲が被さるエンディングは、好印象の余韻を残すものでした。

 1991年の『ゴジラVSキングギドラ』(本篇監督・大森一樹、特技監督・川北紘一、音楽監督・伊福部昭)は、タイムマシンによってゴジラ誕生の秘密が明らかにされる重要作品です。
ストーリーは以下の通り。タイムマシンに乗って23世紀からやってきた未来人は、ゴジラによる被害を予防するため、ゴジラの元になった恐竜(ゴジラザウルスと呼ばれる)をマーシャル諸島のラゴス島(架空の島)からワープさせ、1954年の水爆実験でゴジラが誕生しないようにすることを提案します。
かくして未来人は現代人と共に太平洋戦争中のラゴス島にタイムスリップ。そこで繰り広げられた光景は、ゴジラザウルスが米軍と戦う姿でした。結果的にゴジラザウルスに助けられた形となった日本軍の中には、現代において大企業を経営する新堂(演・土屋嘉男)もいました(1991年だとまだこういうネタができたんですね)。
未来人はゴジラザウルスをベーリング海にワープさせることに成功し、1954年に出現した初代ゴジラは歴史上から消滅、1984年に初出現した後抗核エネルギーバクテリアで活動が低下した3代目ゴジラはついでにどっか行っちゃいました。

 しかし、ゴジラが消滅した後の世界には、新たな怪獣キングギドラが出現していました。というのも未来人が太平洋戦争中のラゴス島に置き去りにした3匹のドラットという動物が、1954年の水爆実験によって1匹のキングギドラに変貌したからです。
昭和のキングギドラは宇宙超怪獣という肩書でしたが、このキングギドラは「超ドラゴン怪獣」という肩書になっています。『ゴジラ対ガイガン』に登場したキングギドラを2代目キングギドラと呼ぶ説ではこのキングギドラは3代目キングギドラと呼ばれ、『ゴジラ対ガイガン』に登場したキングギドラを初代キングギドラと呼ぶ説ではこのキングギドラは2代目キングギドラと呼ばれています。

 実は、未来人はキングギドラを使って20世紀日本の国力を削ぎ落とすためにやってきたのです。なぜなら23世紀の日本は債務国の土地を買収し、地球上で最大の超大国になっているからだそうです。
バブル時代には東京23区の地価でアメリカ全土が買えるなどと言われ、ソニーがコロンビア・ピクチャーズ・エンタテインメントを買収、三菱地所がロックフェラー・センターを買収し、安田火災海上がゴッホの『ひまわり』を購入するなどしていましたので、そうしたバブル景気の世相がストーリーに色濃く反映されています。
『ゴジラVSキングギドラ』が公開された1991年12月14日の時点で既にバブルは崩壊していたそうですが、バブル崩壊後も暫くはバブルの空気が漂っていたという話も聞きます。

 さて、ベーリング海にワープさせられたゴジラザウルスですが、水爆実験ではゴジラ化しなかったものの結局、原子力潜水艦によってゴジラ化してしまいます。漫画『ドラえもん』に登場した「セワシの理論」が発動していると言えます。
「セワシの理論」とは、「東京から大阪に移動するのに自動車、電車、飛行機、船などの手段があるがどれに乗っても最終的に大阪に辿り着くことは変わらない。同様に、歴史を改変しても軌道修正が加えられ辻褄が合う」というものです。
また、このエピソードは、世界中どこへ行っても核の脅威からは逃れられないという皮肉を表しているとも言えます。
このベーリング海で誕生したゴジラは4代目ゴジラと呼ばれ、身長は100メートルになりました。劇中の登場人物からも、前より大きいと指摘されています。歴史改変ネタについてはテレビアニメ『夏のあらし!』辺りも交えて色々語りたいところではありますが、話が横道に逸れてしまうのでまたの機会にしましょう。

 北海道・網走でゴジラはキングギドラを撃退するものの、キングギドラは23世紀の技術でメカキングギドラとして復活。東京都庁(1990年完成)で最後の決戦を繰り広げるのでありました。

 本作の配役では、土屋嘉男、佐原健二、山村聡、佐々木勝彦、黒部進といった往年の東宝特撮映画俳優の他、『ウルトラ』シリーズや『仮面ライダー』シリーズで活躍した小林昭二が出演しました(後に小林は『ガメラ2 レギオン襲来』にも出演しています)。

 音楽面では、伊福部昭に初めて「音楽監督」の肩書が与えられています。「ゴジラのテーマ」は、『SF交響ファンタジー』のバージョン、即ち「ゴジラの恐怖」のイントロ→『怪獣総進撃』の大気圏突入の音楽→「ゴジラのテーマ」が一体化した「ゴジラのテーマ」が、映画で初めて使用されました。本作以降、「ゴジラのテーマ」と言えばこのバージョンが基本となります。本作では(イントロ以外の)「ゴジラの恐怖」は流れませんでした。
キングギドラのテーマ曲は『地球最大の決戦』『怪獣大戦争』『怪獣総進撃』と同じ曲ですが、『キングコング対ゴジラ』の戦闘専用曲とメドレーになっています。キングギドラのテーマ曲と『キングコング対ゴジラ』の戦闘専用曲がメドレーになったのも『SF交響ファンタジー』を踏襲しています。
その他、自衛隊の車輌の描写で「怪獣総進撃マーチ」、戦闘機がキングギドラと空中戦を繰り広げる場面で『ラドン』の「ラドン追撃せよ」が流れています。

 1992年の『ゴジラVSモスラ』(本篇監督・大河原孝夫、特技監督・川北紘一、音楽監督・伊福部昭)は『南海の大決闘』以来26年ぶりにモスラ・インファント島・妖精の3要素が揃って登場した作品です(モスラの登場自体は『ゴジラ対ガイガン』のイメージ映像以来20年ぶり)。
本作に登場したインファント島は、『モスラ』『モスラ対ゴジラ』『地球最大の決戦』『南海の大決闘』に登場した初代インファント島とは異なる2代目インファント島です。妖精は、昭和の映画では双子が演じ、小美人という名称でしたが、本作では双子ではない女優・今村恵子と大沢さやかが演じるコスモスという妖精が登場しています。
そして本作に登場するモスラは4代目ということになります(『モスラ』『モスラ対ゴジラ』に登場したのが初代、『モスラ対ゴジラ』『地球最大の決戦』『南海の大決闘』に登場したのが2代目、『怪獣総進撃』に登場したのが3代目。『ゴジラ対ガイガン』のイメージ映像にモスラがいるという話もありますが・・・)。
本作のモスラは卵から孵った後、国会議事堂で蛹になり成虫となります。成虫となった4代目モスラは初めてビームを出す能力を手に入れました。また本作には新怪獣バトラが登場しました。

 ストーリーは『モスラ』と『モスラ対ゴジラ』を足して2で割ったような感じで、まるでリメイクのような様相を呈しています。『モスラ対ゴジラ』でゴジラが名古屋のテレビ塔と名古屋城を破壊したのと同様に本作でもバトラが名古屋城と名古屋のテレビ塔を破壊していますが、名古屋城に接近する時の一カットの画面の構図がゴジラもバトラも同じだったりします。
更に終わり頃で画面手前に人々、奥にモスラ成虫がいる合成カットが出てきますが、これも『モスラ』の終盤と同じ構図です。モスラ幼虫が炎上する海を進む描写や、ビル街を突き進む描写も『モスラ』のリメイクのようです。

 本作でラストバトルが繰り広げられた舞台は横浜のみなとみらい21で、現実世界ではまだ完成していないランドマークタワーが破壊されました。
また本作でゴジラは『モスラ対ゴジラ』以来となる対怪獣戦2度目の敗北を喫しますが、両方とも相手はモスラなんですよね。

 配役面では、前作から引き続き出演の小林昭二、黒部進に加え、『ガメラ対宇宙怪獣バイラス』『ウルトラマンタロウ』に出演した篠田三郎、『緯度0大作戦』以来23年ぶりの怪獣映画出演となる宝田明が出演しました。
音楽面では、「ゴジラのテーマ」は『ゴジラVSキングギドラ』を踏襲。「ゴジラの恐怖」はオープニングで流れています。
モスラのテーマ曲は「聖なる泉」のメロディを使用したものです。挿入歌は『モスラ』『モスラ対ゴジラ』に続き28年ぶりの登場となる「モスラの歌」、『モスラ対ゴジラ』以来28年ぶりの登場となる「マハラモスラ」、『モスラ対ゴジラ』『地球最大の決戦』に続き28年ぶりの登場となる「聖なる泉」。インファント島の劇伴も『モスラ対ゴジラ』の時と同じです。
更に本作では、『ゴジラVSビオランテ』『ゴジラVSキングギドラ』に引き続いて登場のメーサータンク、新兵器のツインメーサータンクとメーサーヘリが登場したことから、『サンダ対ガイラ』の「L作戦マーチ」が流れました。

 1993年の『ゴジラVSメカゴジラ』(本篇監督・大河原孝夫、特技監督・川北紘一、音楽監督・伊福部昭)は、以後『ゴジラVSデストロイア』まで3作品連続で登場する国連G対策センターとその傘下のGフォースという組織が初めて登場する作品です。
登場怪獣はゴジラ、ゴジラの一族の赤ん坊であるベビーゴジラ、『メカゴジラの逆襲』以来18年ぶりの登場となるメカゴジラ、『ゴジラ対メガロ』以来20年ぶりの登場となるラドン(3代目)です。メカゴジラは昭和作品では宇宙人による地球侵略の兵器でしたが、本作では、メカキングギドラを参考にして国連G対策センターが開発した対ゴジラ用兵器となっています。メカゴジラは、ガルーダという航空機を背中に装着してスーパーメカゴジラになりました。一方、ラドンもパワーアップして熱線を吐くファイヤーラドンになっています。

 配役面では、高島忠夫が『ゴジラの息子』以来26年ぶりとなる怪獣映画出演を果たし、佐原健二も出演しました。最終決戦の舞台は、幕張メッセと千葉マリンスタジアムでした。
音楽面では、ゴジラのテーマ曲には「ゴジラのテーマ」と「ゴジラの恐怖」を併用していますが、「ゴジラの恐怖」は『モスラ対ゴジラ』の時のバージョンが29年ぶりに使用されました。
3代目ラドンのテーマ曲は『地球最大の決戦』『怪獣大戦争』『怪獣総進撃』で使われた2代目ラドンのテーマ曲と共通していますが、『怪獣大戦争』『怪獣総進撃』における「ゴジラの恐怖」のイントロが追加されています。『怪獣大戦争』『怪獣総進撃』においては「ゴジラの恐怖」とラドンのテーマ曲はメドレーで演奏されていましたので『ゴジラVSメカゴジラ』におけるラドンのテーマ曲は『怪獣大戦争』『怪獣総進撃』の劇伴に近いと言ってよいでしょう。
メカゴジラのテーマ曲は、1974年版(作曲・佐藤勝)、1975年版(作曲・伊福部昭)に続く3曲目で、重厚且つ悲壮感溢れる曲となっています。また、本作ではスピード感に満ちた「Gフォースマーチ」も流れました。

 1994年は27年ぶりに東宝が年間2本の新作怪獣映画を公開した年となりました。1本は『ヤマトタケル』(本篇監督・大河原孝夫、特技監督・川北紘一、音楽・荻野清子)。主題歌を歌ったのはGLAYです。
もう1本は『ゴジラVSスペースゴジラ』(本篇監督・山下賢章、特技監督・川北紘一、音楽・服部隆之)。
登場怪獣はゴジラ、スペースゴジラ、リトルゴジラ(ベビーゴジラが成長した姿)、モゲラ、モスラ、フェアリーモスラ。スペースゴジラは、ビオランテから放たれたG細胞もしくは宇宙に飛び立ったモスラに付着していたG細胞が宇宙空間で怪獣化した姿です。モゲラは『地球防衛軍』以来37年ぶりの登場で、『地球防衛軍』では宇宙人による地球侵略の兵器でしたが、本作では国連G対策センターが開発した対ゴジラ用兵器となっています。国連G対策センターは地球侵略用ロボットを対ゴジラ用兵器としてリメイクする傾向がありますね(笑)。
本作にはモスラとフェアリーモスラが登場したことから、『ゴジラVSモスラ』に引き続いてコスモス(演・今村恵子、大沢さやか)が登場しています。また、『ゴジラVSビオランテ』の登場人物・権藤吾郎の妹も登場しました。
音楽は服部隆之ですが、ゴジラの出現シーンに伊福部昭の「ゴジラの恐怖」が使用されています。コスモスによる「聖なる泉」も流れました。

 1995年は、有名怪獣映画が復活した年です。それは15年ぶりの新作ガメラ映画となる『ガメラ 大怪獣空中決戦』(本篇監督・金子修介、特技監督・樋口真嗣、音楽・大谷幸)。徳間書店傘下の大映が製作したガメラ映画としては2作目に当たります。
配役は、『ガメラ対宇宙怪獣バイラス』以来27年ぶりの怪獣映画出演となる本郷功次郎、『南海の大怪獣』以来25年ぶりの怪獣映画出演となる久保明、『ウルトラマン80』に出演した長谷川初範ら。1965年生まれのガメラ特技監督・樋口真嗣の登場は、ゴジラ特技監督・川北紘一が1942年生まれであることと比較して、新たな時代の到来を予感させました。

 1995年はガメラと入れ替わるようにして『ゴジラVSシリーズ』最終作となる『ゴジラVSデストロイア』(本篇監督・大河原孝夫、特技監督・川北紘一、音楽監督・伊福部昭)が公開された年でもあります。ポスターには大きく「ゴジラ死す」と書かれ、ファンに衝撃を与えました。

 1971年にはガメラシリーズの終焉と入れ替わるようにして「人類の味方」というガメラの役割を継承したゴジラは、1995年にはガメラ復活と入れ替わるようにして死を迎えたのでした。何やら因縁を感じます。

 『ゴジラVSデストロイア』は1954年の『ゴジラ』と密接な繋がりを持つ作品で、1954年の『ゴジラ』のタイトル画面から『ゴジラVSデストロイア』のタイトル画面に切り替わるという冒頭が用意された他、1954年の『ゴジラ』の登場人物及びその関係者が登場。1954年の『ゴジラ』に登場した山根恭平博士の娘・山根恵美子(演・河内桃子)が41年ぶりに再登場しました。
1954年の『ゴジラ』で家族を失った新吉少年はその後、山根博士の養子となり(『ゴジラVSデストロイア』では写真が出てくる)、新吉の子供である山根ゆかり(演・石野陽子)と健吉(演・林泰文)が登場しています。また、1954年の『ゴジラ』に登場した山根博士の書斎を再現して再登場させるという美術スタッフの腕前も披露されました。
1954年の『ゴジラ』でゴジラが品川に現れた時の台詞も再現されている他、ゴジラが国会議事堂と和光に迫るカットは1954年の『ゴジラ』のリメイクとなっていました。

 本作の登場怪獣はゴジラ、ゴジラジュニア(リトルゴジラが成長した姿)、デストロイア。本作でゴジラは核エネルギーが暴走し、オレンジ色に発光しています。デストロイアは1954年の『ゴジラ』でゴジラを抹殺した兵器・オキシジェン・デストロイヤーの影響で怪獣化した生物で、オキシジェン・デストロイヤーを武器として使用することができるという、ゴジラにとって最大最強の敵です(・・・の筈だが意外に弱かった)。

 『ゴジラVSメカゴジラ』『ゴジラVSスペースゴジラ』ではGフォースにお株を奪われた自衛隊が、本作では久々に活躍しています。本作の自衛隊のコンセプトは冷凍兵器。今までの映画に登場したメーサータンク、ツインメーサータンクが冷凍仕様になった他、新たな冷凍メーサー車が登場、更に、冷凍兵器を装備したスーパーXⅢも登場しました。
『ゴジラVSビオランテ』でスーパーX2の指揮を執った黒木特佐がスーパーXⅢを操縦しています。但し、『ゴジラvsビオランテ』では高嶋政伸が黒木役でしたが、本作では高嶋政宏になっています。ラストでゴジラがメルトダウンを起こした際は自衛隊のメーサー兵器がありったけの冷凍兵器を発射し被害を最小限に抑えています。
尚この時、ゴジラが放出した放射性物質はゴジラジュニアが吸収し、ゴジラジュニアは立派なゴジラに変貌した模様です。
最終決戦の舞台は東京ビッグサイト周辺で、翌年4月に開業するビッグサイトが破壊されてしまいました。

 配役面では、前述の河内桃子の他、篠田三郎、『ガメラ対大魔獣ジャイガー』に出演した平泉成、『大魔神』『電撃戦隊チェンジマン』に出演した藤巻潤らが出演しています。

 音楽面では、ゴジラのテーマ曲は「ゴジラのテーマ」と「ゴジラの恐怖」を併用。エンディングでは、「ゴジラの恐怖」のイントロ→『怪獣総進撃』の大気圏突入の音楽とのメドレーではない「ゴジラのテーマ」が『ゴジラVSビオランテ』以来6年ぶりに流れました。またこのエンディング曲は、『キングコング対ゴジラ』におけるファロ島島民の歌とメドレーになっていますが、これは『SF交響ファンタジー』と同じ構成です。
本作の劇伴で特筆すべきはスーパーXⅢのテーマ曲でしょう。スーパーXのテーマ曲は小六禮次郎作曲、スーパーX2のテーマ曲はすぎやまこういち作曲でしたが、Ⅲにして遂に伊福部昭が登板。長年に亘って観客を楽しませてきた伊福部マーチ最後の作品となりました。また、メーサー兵器の描写では「L作戦マーチ」が流れました。

 本作のエンディングは、1954年版『ゴジラ』→1984年版『ゴジラ』→『ゴジラVSシリーズ』の映像を纏めたものであり、『ゴジラVSシリーズ』の劇中世界の歴史を締め括るに相応しいエンディングとなりました。

 
【第14章・・・モスラの時代】
 
『ゴジラVSデストロイア』でゴジラが死んだ後、東宝怪獣映画の主役となったのはモスラでした。1996年には『モスラ』(本篇監督・米田興弘、特技監督・川北紘一、音楽・渡辺俊幸)が公開。『ゴジラVSモスラ』に登場した4代目モスラ成虫が再登場し、子供のモスラ幼虫と共に新怪獣デスギドラと戦いますが、寿命が尽きてしまいます。その後、子供のモスラ幼虫が屋久島で蛹になり、成虫になるのでありました。

 本作に登場した妖精はベルベラ(演・羽野晶紀)、モル(演・小林恵)、ロラ(演・山口紗弥加)の三姉妹で、「モスラの歌」も流れています。

 1997年には『モスラ2 海底の大決戦』(本篇監督・三好邦夫、特技監督・川北紘一、音楽・渡辺俊幸)が公開。本作でモスラ成虫はアクアモスラに変身して水中に潜る能力を身に着け、新怪獣ダガーラと戦いました。妖精三姉妹と「モスラの歌」は前作に引き続いて登場しました。

 1998年にはアメリカでゴジラが復活し、トライスター版『ゴジラ』(監督・ローランド・エメリッヒ、音楽・デビッド・アーノルド)が公開されました。本作の特徴は、ゴジラがフランスの核実験によって出現したこと、ゴジラの体勢がティラノサウルスの科学的な体勢を反映していることです。
また同年には『モスラ3 キングギドラ来襲』(本篇監督・米田興弘、特技監督・鈴木健二、音楽・渡辺俊幸)も公開されています。特技監督は川北紘一から鈴木健二に交代していますが、本作から東宝怪獣映画の特技監督は皆「特殊技術」という肩書でクレジットされており、川北が最後の「特技監督」となりました。但し、『モスラ3』の新聞広告における舞台挨拶の告知では、「鈴木健二特撮監督」と表記されていました。

 本作でモスラは『地球最大の決戦』『怪獣総進撃』に続いてキングギドラと30年ぶりに対決。本作でモスラは鎧モスラに変身しました。妖精三姉妹は、モル(演・小林恵)とベルベラ(演・羽野晶紀)は今までと同じですがロラは演者が建みさとに交代しました。「モスラの歌」も引き続き流れています。

 第7回に続きます。
参考文献は最終回に記載します。

※『ゴジラVSビオランテ』から『モスラ2』までの東宝怪獣映画の特技監督を務められた川北紘一氏が12月5日にお亡くなりになりました。川北監督はイベント等でファンの前に姿を現すことが多かったのですが、この場をお借りし、1つエピソードをご紹介致します。
今年の夏に池袋サンシャインシティで大ゴジラ特撮展というイベントが開催された時、俳優の宝田明さんと星由里子さんのトークショーがあり、川北監督も登壇されました。そして俳優お二方のサイン会に移ったのですが、サイン会の待ち時間において、川北監督の質疑応答の時間が設けられたのです。私は可能な限りノートに質疑応答の様子を記録していた(5ページに亘りました)のですが、実は私も1点、川北監督にご報告申し上げたいことがありました。
2007年に深夜に放送された川北監督の人形劇『かわいいジェニー』の視聴者が、2ちゃんねるの実況スレッド(テレビ番組を観ながらリアルタイムでコメントを書き込む掲示板)で凄く盛り上がっていたのです。
そこで私は質疑応答コーナーで「『かわいいジェニー』をみんな喜んで観てましたよ」とご報告申し上げると共に、「『かわいいジェニー』で視聴者を楽しませるための工夫はありましたか?」と質問したところ、「市販の人形を使った。今はあまり人形劇って作られないけど特撮好きの人に喜んでもらおうとした」とのお答えを戴きました。
視聴者・観客に喜んでもらおうとする姿勢に、川北監督の人柄が偲ばれます。謹んで哀悼の意を表します。

(文:コートク)