「うちの本棚」、今回は『宇宙の騎士テッカマンブレード』のコミカライズ作品を取り上げます。
 アニメ作品とはかなり違った展開になっていますが、このコミック版もなかなかの名作ではないかと思います。


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テッカマンブレード

 
本作は1992年2月~1993年2月まで、テレビ東京系で放送されたタツノコプロのアニメーション『宇宙の騎士テッカマンブレード』のコミカライズ作品である。

とはいえ、アニメ作品とコミック作品の進行がほぼ同時だったため、アニメの設定やストーリー構成をコミック版に全ていかすことができず、アニメとは別のオリジナル作品といってしまっていい仕上がりになっている。

コミック版の作者である鈴木典孝はあとがきで、自分の体験からビデオなどの機器が普及していなかった時代にはテレビ放送の余韻を求めてコミカライズ作品を楽しんだというエピソードを披露しているが、ビデオも普及した本作の時代、進行上の問題だったとはいえ、テレビ放送とは全く違う展開となったコミック版は、それはそれでアリなのかもしれない。

基本設定くらいは踏襲しているのだろうと思われるかもしれないが、ラダムという地球を侵略してくる宇宙生物や、ラダムを指揮する敵のテッカマンの存在、またそのラダムから地球を守る主人公テッカマンブレードとその仲間スペースナイツの存在程度が共通しているだけで、驚いたことにスペースナイツの母体である宇宙開発機構やその長であるフリーマンの設定が別のものになっていたりする。

またコミック版の特徴としてテッカマンの乗用マシンとしてブレード以外にもそれぞれペガスを所有しており、中でもテッカマンダガーのペガスのエピソードが中盤の見せ場になっている。

アニメ版もハードな内容で名作だったと思うが、コミック版もなかなか興味深いものになっている。展開がオリジナルなだけにもう少しじっくりと描かれていたらという気がしないでもないが、スピード感のある流れで一気に読め、ラストも余韻の残るものである。

ちなみに『宇宙の騎士テッカマンブレード』はほかに講談社の「デラックスボンボン」に井上大助によるギャグタッチのコミカライズ作品も連載されていた。

初出/角川書店「月刊コミックコンプ」(1992年3月号~9月号)
書誌/メディアワークス・メディアコミックス

(文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/