(C)-2010「十三人の刺客」製作委員会今回取り上げる時代劇映画は平成22年の『十三人の刺客』。昭和38年の同名映画のリメイクであり、平成2年のテレビドラマ版に続く2度目のリメイクです。

本作は冒頭に、広島・長崎に原爆が投下される百年前の出来事だと表示されます。それと共に、劇中何度か「泰平の世」という指摘が出てきます(1840年代が本当に泰平の世なのかどうかはひとまず措く)。


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劇中の登場人物で実戦を経験した人は誰もいません。そうした中で、主人公側の武士も、敵対する側の武士も、初めて殺し合いを経験するのでした。

武士が次々と死んでいく最中、次期老中である松平斉韶(演・稲垣吾郎)は戦いを楽しいものと捉え、自身が老中に就任したら戦の世にしたいと発案します。

この映画における松平斉韶は、昭和38年の映画『十三人の刺客』と比べると残虐性を表すシーンが追加されており、人を殺傷することを一種の娯楽として楽しんでいたようですが、実は刀で傷つけられることの痛みを全く理解しておらず、ラストでは刀で刺されて「痛い」「怖い」と怯えます(この台詞も昭和38年版にはない)。

この映画における松平斉韶の描写には、人の痛みを理解しない者が戦乱を求めるという批判的描写が見て取れます。冒頭の表示を見ると、“泰平の世”と百年後の太平洋戦争を対比させる意図もあったのでしょう。

●スタッフ
監督:三池崇史
脚本:天願大介
製作総指揮:中沢敏明/ジェレミー・トーマス/平城隆司

●出演
役所広司/山田孝之/松方弘樹/沢村一樹/石垣佑磨/近藤公園/高岡蒼甫/六角精児/波岡一喜/伊原剛志/古田新太/窪田正孝/伊勢谷友介/稲垣吾郎/内野聖陽/平幹二朗/松本幸四郎ほか

(文:コートク)

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