むすんでひらいて「むすんで ひらいて 手を打って むすんで~」。誰しも一度は歌ったことがある『むすんでひらいて』。

実はこの『むすんでひらいて』には、メロディーが同じの歌詞の異なる複数のものがあることをご存知でしょうか。


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『むすんでひらいて』の原曲はフランスのジャン=ジャック・ルソーが作曲したもので、フランス国王ルイ15世に披露したのち、オペラ『村の占い師』で用いられた曲とされています。

その後様々な人に歌詞がつけられ、さらには賛美歌に改編されます。最も有名なのは賛美歌『グリーンヴィル』。
他にも、国や地域ごとに、何種類も詞がつけられ、今だ世界中で歌い継がれています。

世界中で何種類も歌詞がある『むすんでひらいて』のメロディーが日本に来たのは1874年。賛美歌『グリーンヴィル』としてやってきました。
日本語版には聖書之抄書 第四として『キミノ ミチビキ』という歌詞がつけられました。
その後、賛美歌版は1876年に改正賛美歌で第十八『ああきみのきみなる』、第十九『あれのにまよえる』、第三十五『那蘇(イエス)きみのほかに』の3つの歌詞も発表されています。

そして、1881年には『見わたせば』という新しいタイトルと歌詞がつけられ小学唱歌として、1895年には軍歌集『大東軍歌』に鳥居忱作詞の軍歌『戦闘歌』が掲載されます。

そしてようやく、第二次世界大戦終戦から2年後の1947年に、現在知られる『むすんでひらいて』が小学唱歌として新しい歌詞がつけられ発表されます。

日本に来てから、この『むすんでひらいて』とメロディーを同じくして詞が作られたものは、紹介した以外にも更に複数あります。

本来は全ての歌詞をご紹介したいところではありますが、それぞれのジャンルで有名な作品、賛美歌『キミノ ミチビキ』、唱歌『見わたせば』、軍歌『戦闘歌』の歌詞を参考までにご紹介。
 
――賛美歌『キミノ ミチビキ』(聖書之抄書 第四 キミノ ミチビキ)

アゝエホワシユノシユヤ オホノベニサマヨフ
ワレタビゞトヲバ ミチビキタスケヨ
アクマデテンノパンヲ サヅケタマヘヨ

カハカヌイヅミヲ イワヨリナガシ
書クモヨル火ノ ハシラヲシメシ
カゞヤキユカセヨ ワガフムミチニ

ハテントキヨルダンノ カハベニユキテ
オソレヌコゝロヲ ワレニコミイレ
カナンギシヲブナンニ ワタラセタマヘ

――唱歌『見わたせば』

見わたせば あをやなぎ
花桜 こきまぜて
みやこには 道もせに
春の錦をぞ
さほひめの 織りなして
降る雨に そめにける

見わたせば やまべには
をのへにも ふもとにも
うすき濃き もみぢ葉の
秋の錦をぞ
たつたびめ 織りかけて
つゆ霜に さらしける

――軍歌『戦闘歌』

見渡せば 寄せて来る
敵の大軍 面白や
スハヤ戦闘(たたかい)始まるぞ
イデヤ人々攻め崩せ
弾丸(たま)込めて撃ち倒せ
敵の大軍撃ち崩せ

見渡せば 崩れ懸る
敵の大軍心地よや
モハヤ戦闘(たたかい)勝なるぞ
イデヤ人々追い崩せ
銃剣附けて突き倒せ
敵の大軍突き崩せ
 
それぞれの時代、それぞれの置かれた状況により様々な歌詞に置き換えられる『むすんでひらいて』のメロディー。

私たちが知る『むすんでひらいて』は、幼い子供が歌う微笑ましいイメージしかありませんが、こうして歌詞だけ並べてメロディーに合わせてみると、荘厳な歌であったり、戦争をも思わせる歌であったり……色々変化して感じられますね。

知る人ぞ知る『むすんでひらいて』とメロディーを同じくした様々な歌詞。
知らない歌詞に、是非メロディーを乗せて歌ってみてください。

(文:栗田まり子)