皆様こんにちは。ミリタリーにおける『食』、特にレーションについてご紹介していくDachoの『ミリヲタ的グルメ』。
今回は、ちょっと珍しい国連軍のコンバットレーションをご紹介します。

見た目は非常に立派なレーションなのですが……


【関連:第24食 カナダ軍軽量レーション】
 
●国連軍コンバットレーション

シンプルな外見ですね。砂漠色のビニールパックに英語とフランス語の記述があります。「HALAL」は、このミリヲタ的グルメでも何度か登場していますが、イスラム教徒向け食品を意味します。「C」は、そのHALALに3種類あるメニュー(A、B、C)のメニュー番号を示しています。

国連軍レーションパッケージ

裏面には、メニューの概要がやはり英語とフランス語で記載されています。1パックのエネルギー量は、3,200kcalだそうで、レーションとしては一般的な数字です。

国連軍レーションパッケージ裏

 

●国連軍とレーションの関係

国連軍は、オペレーション毎に国連加盟国の軍隊が参加しますが、その軍を派遣する国と糧食費を支払う国(つまりレーションの出所)は、必ずしも同じではありません。国連軍が使用するレーションについて、以下のようなパターンがあるようです。

1.  軍の派遣国が糧食費も担当する(一般に、その軍が通常使っているレーションを使用する)。
2.  A国は、軍のみ派遣する。B国は、軍は派遣しないが、自国軍用のレーションを提供する。
3.  A国は、軍のみ派遣する。B国は、軍は派遣せず、国連軍専用のレーションを調達して提供する。

今回ご紹介している国連軍レーションは、上記パターン3の場合に使用される訳ですが、いくつかのバリエーションが見られます。下の写真も国連軍レーションで、私の手元にあるものです。

国連軍レーション別バージョン

主にスペイン製の市販品を組み合わせたものですが、味はかなりひどいものでした(笑)

 

●パッケージ内容

パッケージを開封すると、大量の物が出てきました。24時間レーションの中でも、これはかなり多い部類です。また、ほとんどの品目がパッケージと同じ砂漠色に統一されているので、このレーション専用品と思われます。前項でご紹介した箱型のレーションよりもお金がかかっているようです。

国連軍レーション内容

品目の一覧です。

  ・牛肉と野菜  300g
  ・地中海風ツナサラダ  300g
  ・ヒヨコ豆シチュー  150g
  ・チョコレートカスタード  150g
  ・塩味ビスケット  2パック
  ・甘いビスケット  1パック
  ・クランキーフルーツミューズリー  40g × 2パック
  ・イチゴジャム  30g
  ・ダークチョコレート  25g
  ・チーズスプレッド  42.5g
  ・フルーツゼリー  30g
  ・キャンディー  7個
  ・チューインガム  7粒
  ・インスタントスープ  30g
  ・ココア  20g
  ・オレンジ飲料  10g
  ・ハイパープロテイン飲料  20g
  ・高繊維アイソトニック飲料  20g × 2パック
  ・コーヒー  2g × 2パック
  ・紅茶(ティーバッグ)  1.5g × 2パック
  ・粉末ミルク  3g × 3パック
  ・砂糖  8g × 8パック
  ・塩  1g
  ・コショウ  0.2g
  ・ケチャップ  12g
  ・メキシカンソース  12g
  ・スプーン  1本
  ・フォーク  1本
  ・ナイフ  1本
  ・ウェットティッシュ  1パック
  ・ティッシュペーパー  1パック
  ・簡易コンロ  1個
  ・固形燃料  6個
  ・マッチ  1箱
  ・浄水剤  4錠
  ・ジッパー付きビニール袋  1枚
  ・メニュー表  1枚

ずいぶん長いリストになってしまいました。
細かく見てみると、ほとんどの品目の生産地がEUとなっていて、Jomipsaという会社名があります。Jomipsaは、レーションや緊急援助物資の専門メーカーで、スペインに本拠地があります。そして、実は前項のチープで不味いレーションもこのJomipsaの製品なのでした。この差は、糧食費を担当した国の懐具合が関係しているのでしょうか…
さて、この品目リストで1点気になるものがあります。それは、料理がレトルトパックなのに固形燃料を使うコンロが付いている点です。一般的なレーションでは、レトルトパックには水を入れると発熱するヒーターがセットになっており、缶詰には固形燃料のコンロがセットになっています。(何も付いていないレーションも多くあります。)コンロでレトルト食品を温めるには、鍋が必要になるので不親切なレーションだと言えます。

 

●試食

それでは、さっそく試食してみましょう。メニュー表によると、主要ないくつかの品目は、昼食または夕食のメニューとして指定されていますので、それに従って3食に分けてみました。もちろんオヤツもあります(笑)

 

▼朝食

朝食

朝食の献立は、特に指定されていませんので、以下のものを選んでみました。
・甘いビスケット
・イチゴジャム
・クランキーフルーツミューズリー
・ハイパープロテイン飲料
・コーヒー

『甘いビスケット』は、淡い甘みがあり日本のスーパーでも売っていそうな感じです。『イチゴジャム』を付けて食べました。
『クランキーフルーツミューズリー』は、『粉末ミルク』で作ったミルクをかけてみました。ミューズリーは、麦などを中心としたシリアル食品で、ミルクをかけて食べるのが普通ですが、クランキー(「バリバリした」の意味)という単語が付いているのでミルクなしで食べるものかもしれません。薄い甘みがあり、穀類は柔らかくなっていますがココナツやドライフルーツの歯触りがアクセントになっていて美味しいです。
『ハイパープロテイン飲料』は、大豆のたんぱく質が原料で、ドロリとしています。わずかにココアらしき風味があるものの、あまり美味しくありません。でもプロテイン飲料とはそういうものかもしれませんね(笑)

 

▼昼食

昼食

昼食は、指定されているものにビスケットと飲み物を加えました。
・牛肉と野菜
・ヒヨコ豆シチュー
・チョコレートカスタード
・塩味ビスケット
・オレンジ飲料

『牛肉と野菜』は、煮込み料理ですね。具を見てみると、牛肉、グリーンピースらしき豆、コーン、インゲン豆、人参が確認できます。味は、薄味です。良く言えば『素材の風味を生かした味付け』なのでしょうが、はっきり言って不味いです。スープが少し赤いですが、トマトの味はしません。塩をちょっとだけ入れた感じの味付けでしょうか。とても食べられなかったので、レーションに入っていたメキシカンソースを入れてみました。味は完全に変わってしまいましたが、ピリ辛で何とか食べられる味になりました。でも、牛肉がとても硬くて大変でした。
『ヒヨコ豆シチュー』も煮込み料理で、『牛肉と野菜』と見た目がそっくりです。具は、ヒヨコ豆、グリーンピースらしき豆、インゲン豆、人参、パプリカ。具も共通点が多いですね。味がまた塩をちょっとだけ入れた感じの薄味で、非常に不味いです。残念ながらメキシカンソースはもうありませんので、コショウを入れてみましたが、気が抜けているのか全く味に変化がありません。しょうがないのでケチャップを入れてみると、多少マシになりました(でもまだ不味いです)。
『チョコレートカスタード』は、チョコレート味のプリンのような感じです。これも薄味で甘みあっさりですが、幸いなことに美味しいです。
『塩味ビスケット』は、塩味どころかほとんど味がしません。不味くはないので、これは食べやすくていいと思います。
『チョコレートカスタード』を載せて食べると美味しいです。
そして『オレンジ飲料』まで薄味です。人工的なオレンジ風味です。

量はたっぷりありましたが、全てが非常に薄味で、しかも料理の不味さにくじけそうになりました。それにしても、同じような煮込み料理が2品というのは、メニューを考えた人のやっつけ仕事でしょうか。

 

▼夕食

夕食

夕食は、指定されている品目にビスケット、チーズスプレッド、紅茶を追加してみました。
・地中海風ツナサラダ
・インスタントスープ
・塩味ビスケット
・チーズスプレッド
・フルーツゼリー
・紅茶

『地中海風ツナサラダ』は、「熱湯で湯煎する」といった説明書きがあります。サラダでありながら熱くして食べるようです。開封してみると、デジャブと言うか、絶望感と言うか…昼食で見たものとそっくりの料理が出てきました。どうやら海外では、シチューもサラダも同じような料理みたいです。味は微妙に違いますが、まあ似たり寄ったりです。残念ながら調味料は、塩しか残っていないので味を変えることもできませんでした。
『インスタントスープ』は、お湯で溶くとドロドロになりました。日本では馴染のないような単純な塩っぽい味で、これまた残念な感じです。
『チーズスプレッド』は、なんとアメリカ軍のMREと同じものでした。もちろんアメリカ製です。私にとってはお馴染みの、そして安心の味でビスケットに付けて美味しく食べました。
『フルーツゼリー』は、オレンジ味のゼリーを乾燥させたちょっと硬めのお菓子です。粘りが非常に強く、歯の詰め物に危険を感じました(笑)

 

▼間食

間食

3食食べてもまだ色々残っているので、おやつです。
・クランキーフルーツミューズリー
・ダークチョコレート
・キャンディー
・チューインガム
・高繊維アイソトニック飲料
・ココア

『クランキーフルーツミューズリー』は、朝食でミルクをかけてみましたが、今度はそのまま食べてみました。オート麦や米がゴワゴワした固まりになっていて、サクサクした歯触りです。やはりそのまま食べてもいいようです。
『ダークチョコレート』は、激しく劣化して粉末になりかけていて、ちょっとだけ食べてみるとスカスカになっていました。ダークチョコレートながら、苦味はほとんど無く、普通に甘かったです。
『キャンディー』は、バターキャンディーでした。
『チューインガム』は、歯磨き粉のようなミント味で、市販しても売れなさそうな感じです(笑)
『ココア』は、まあ普通のココアですね。
『高繊維アイソトニック飲料』は、日本でもお馴染みのスポーツドリンクのような味ですが、ちょっと酸味があります。
 
ちょっと見た感じでは、非常に立派で各国軍のレーションにも決して負けない雰囲気と品数がありました。しかし、色々と詰めが甘く、味の面では非常に残念な感じでした。外国の大変な現場に派遣され、このレーションを食べる羽目になった国連軍の皆さんに同情せずにはいられません……

 

なお、今回ご紹介した国連軍レーションは、匿名希望のある方にご提供いただきました。どうもありがとうございました!

 

【注意してください!!】
国連軍レーションを初めとする各国のレーションは、我々民間人が手に入れて食べることを前提としていません。
これらを販売する業者なども、あくまでコレクション品として取り扱っています。
食品としての安全性は、国連、各国政府、製造業者、販売者の誰も保証してくれませんので、万が一食べる場合は、すべて自己責任になります。

(文・写真:Dacho)