今回の「特撮映像館」、前回後紹介した『跋扈妖怪伝 牙吉』の第二部です。第一部でチラッと触れた牙吉の過去のエピソードにからむ、安寿という人狼族の女がストーリーの軸となっています。牙吉たちの魂はどこに向かうのでしょうか。

 前作、第一部は劇場公開もされたが、本作、第二部はオリジナルビデオ作品。監督も『さくや妖怪伝』でチーフ助監督だった服部大二に替わり、原口智生は特殊造型を担当している。全般としてスタジオ撮影を中心にしており、舞台劇的な演出が特徴となっている。前作ではオープンセットやロケも多かったので、対照的な雰囲気にはなっているのだが、光やカメラワークという点では世界観を出しやすい手法でもあるだろう。また前作では人間対妖怪という構図だったが、今回は妖怪対妖怪という展開になっている。

 第一部で牙吉の命を狙って登場した安寿と、その安寿と出会い惚れ込んでしまう桜丸がストーリーの軸となっているといってもいい。牙吉と同じ人狼族である安寿と、人間でありながらも無法の限りを尽くしてきた桜丸の間に芽生える感情が、この作品世界の中でたどり着こうとするどこかを暗示しているのかもしれない。

 今回も大映特撮の「妖怪シリーズ」を彷彿とさせる造型が見どころで、CG合成はない。また牙吉も人間の姿のときは刀で戦い、人狼となったときは爪を武器にしていて、肉弾戦のイメージが濃い。

 本作でもっとも目を引くのは桜丸を演じた船木誠勝の演技。元格闘家だけあって見事な筋肉を見せてくれるシーンもあるが、欲望のままに生きる桜丸というキャラクターになりきって演じきっているところは生来の役者かと思わせるほどだ。

 本作によって第一部から持ち越された設定やエピソードは消化されたが、牙吉の物語が完結したわけでもない。新たな牙吉の活躍も機会があれば見てみたいものだ。

監督/服部大二 特殊造型/原口智生
キャスト/原田龍二、田中美紀、嘉門洋子、中村愛美、芦屋小雁、船木誠勝
2003年/80分/日本

(文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/