【特撮映像館】Act.95 跋扈妖怪伝 牙吉「特撮映像館」、第95回は『さくろ妖怪伝』のスタッフが新たに取り組んだ、特撮+時代劇の『跋扈妖怪伝 牙吉』です。哀しい妖怪たちの運命を牙吉は救えるのか!?

『さくや妖怪伝』のスタッフが再び結集、とソフトのパッケージに記載されているように、監督は特殊造型でも第一人者として知られる原口智生が再びメガホンを取っている。


タイトルの通り妖怪も登場し、かつての大映映画の「妖怪シリーズ」を彷彿とさせる妖怪たちも登場する作品であるが、ストーリー自体は一般の時代劇としてみても十分に通用するもの。またCG合成などを使わない手法は特撮作品本来の味わいも感じさせてくれる。

本作は二部構成のうちの第一部であり、牙吉が背負っている過去も明かしながら、牙吉の命を狙う安寿との決着は第二部に持ち越されている。

本作の特徴としては、多くの妖怪映画では人間の力を凌駕する妖怪が登場しているが、妖怪そのものの力が衰え、人間に駆逐されていく様が描かれている点といえるかもしれない。それでもまだ妖怪本来の力を残した、人間を凌駕する能力をもった存在があり、そのひとりが牙吉といえるだろう。

洋画ならさしずめブルースが似合うといった雰囲気の演出で、人間に迫害されながら自分たちの安住の地を求める妖怪たちを描いていく流れが、信頼していた人間に裏切られてしまう悲劇へと展開していく。そして牙吉はその本来の姿を人間たちの前に現すのだ。
『さくや妖怪伝』で主演した安藤 希も妖怪たちに混じって生きる人間の少女役でしっとりとした演技で魅了している。また本作で主演した原田龍二の抑えたセリフまわしなど重厚感のある演技が見どころになっている。
『陰陽師』『魔界転生』などと同時期の特撮+時代劇という作品のひとつと言っていいだろうが、本作においては往年の特撮作品への思い入れが感じられる点でほかの作品群とは違った印象を受ける。大映特撮、「妖怪シリーズ」がお好きな方にはぜひ鑑賞してもらいたい。

監督/原口智生
キャスト/原田龍二、安藤 希、清水健太郎、田中美紀、ほか。
2003年/97分/日本

(文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/