【新作アニメ捜査網】2011年アニメ!勝手にアカデミー賞本稿では、昨年テレビ、映画それぞれで放送または上映されたアニメ作品を振り返り、権威ある賞「アカデミー賞」になぞらえて、私コートクの独断と偏見で賞付けしてみたいと思います。ちなみに「テレビアニメなのにアカデミー賞?」という突っ込みは一旦無しでお願いいたします。それでははりきってご紹介させていただきます。


●最優秀脚本賞・・・『劇場版そらのおとしもの 時計じかけの哀女神(エンジェロイド)』(柿原優子)

【授賞理由】
映画の半分が総集篇という制約を逆手に取り、過去のテレビシリーズを利用して主人公の男の子を慕って見守るヒロインの純情可憐さを描くことに成功しました。そして前半の総集篇を踏まえた上での後半ストーリーで、ヒロインの思いが主人公に伝わる様子を感動的に、且つ悲劇的に盛り上げることに成功しました。

●最優秀作画・美術賞・・・『蛍火の杜へ』(美術・渋谷幸弘、色彩設計・宮脇裕美)

【授賞理由】
主人公の女の子と妖怪の交流シーンにおける情景描写では、森の中に差し込む木漏れ日、森の中を漂う靄、清らかな川のせせらぎ、長い年月に亘って佇んでいるであろう鳥居と石灯籠など、古き良き日本の情緒と非日常的・幻想的な雰囲気が同居しており、日常と非日常が隔てられたストーリーを適切に特徴づけました。

●最優秀音楽賞・・・『ちはやふる』(山下康介)

【授賞理由】
競技かるたに青春を賭ける若者達の情熱、努力、輝きといったものを音楽面で表現しています。劇伴を聴くだけで希望に満ち溢れた明るい光が脳裡に浮かぶようです。

●最優秀広報賞・・・『魔乳秘剣帖』

【授賞理由】
公式ツイッターアカウントで、本作最大の特徴である乳房ネタにとことんこだわり抜き、読者が驚こうがお構いなしに我が道を突き進んだ姿勢に感服します。文章を考えていた社員は、仕事とは言えあんな文章をどうやって大量に考案したのか、興味は尽きません。

●最優秀主題歌賞・・・「コネクト」(『魔法少女まどか☆マギカ』オープニング主題歌)

【授賞理由】
本曲の最も優れた点は、歌詞がストーリーにマッチしている点もさることながら、そのことが判明するタイミングの妙にもあります。第10話「もう誰にも頼らない」ではオープニング主題歌が流れなかったのですが、謎の人物・暁美ほむら(声・斎藤千和)の今までの経歴とその思いが明らかにされた上で、実はほむらの心情を表現していた「コネクト」がエンディング主題歌として流れることで、作品を大変盛り上げる効果を生みました。劇中世界を歌で表現するというアニメソングに課せられた使命を全うし、且つ視聴者に感動を与えた点で、本曲はアニメソングの真面目(しんめんもく)を発揮したのです。

●最優秀主演男優賞・・・石井正則

【授賞理由】
『最強武将伝 三国演義』で石井正則は20代の頃から53歳で死ぬまでの諸葛亮役を演じました。勢いに任せて小憎らしい態度で突き進んだ若い頃、重責を担い重厚感を漂わせた壮年時代、病魔に侵されながらも命を振り絞って目的を果たそうとする晩年と3種類の声色を使い分け、何十年にも及ぶ歴史物語の時間経過を表現することに貢献しました。

●最優秀主演女優賞・・・日笠陽子

【授賞理由】
日笠陽子は『劇場版そらのおとしもの 時計じかけの哀女神(エンジェロイド)』でヒロイン・風音日和を演じたのですが、日和役は恋する乙女のひたむきさ、一途さ、優しさ、いじらしさを表現し、観客の胸をキュンとさせました。『劇場版そらのおとしもの』が名作たり得た要因の1つとして、日笠の存在は大きかったと思います。

●最優秀助演男優賞・・・子安武人

【授賞理由】
子安武人は『レベルE』でドグラ星の王子(声・浪川大輔)を護衛する隊長・クラフト役を演じたのですが、嫌がらせを繰り返す王子について、面倒なことはできるだけ避けたいと考えつつも振り回される様子をユーモラスに演じました。その姿は、宇宙人が引き起こす騒動によって周囲が迷惑を蒙るという本作の特徴を象徴しており、本作の滑稽さを如実に表していました。

●最優秀助演女優賞・・・能登麻美子

【授賞理由】
能登麻美子は2011年のテレビアニメで多彩な役柄を演じ、各番組で重要な役割を果たしました。『フリージング』のサテライザー=エル=ブリジット役、『魔乳秘剣帖』の狭山桜花役は戦士役、剣豪役であることから戦闘シーンにおいては野太い声を発し迫力を出す一方、『花咲くいろは』の輪島巴役ではユーモラスな語り口で視聴者を楽しませました。ところで能登といえば2005年から続いた『地獄少女』三部作の妖怪役における、この世のものとは思えない声が当たり役として知られますが、2011年の『ぬらりひょんの孫~千年魔京~』では妖怪界の大物・羽衣狐を演じました。羽衣狐がどのくらい大物かというと、日本BS放送株式会社のホームページで大御所・大塚周夫を差し置いて出演者の止めになるぐらいの大物です。羽衣狐役の能登は『地獄少女』時代よりも更に進化したこの世のものとは思えない声を発し、視聴者の背筋を凍りつかせました。しかし終盤に切ない展開になると、回想シーンでいたいけな声に変貌するなど、衝撃的な落差でストーリーを大いに盛り上げました。

(文:コートク)