毎度趣味の奥深い世界の隅っこのお話をお届けしております「無所可用、安所困苦哉」でございます。

今回は鉄道模型のお話です。中でもマイナーなジャンルである、ナローゲージの鉄道模型についてのお話です。先日の寿都鉄道といいマイナーな話が続きますがこれも一興とお付き合いくださいませ。


もう長年、鉄道模型を趣味としております。
かつてはメインラインの製品ばかりで、ローカル線や私鉄車両は製品になることが少なかったのですが、ここ暫くはマイナーな車両も見られるようになりました。また製品数が多かった割りに入手の難しかった海外の鉄道の輸入品も、かなり入手しやすくなったと感じています。
まぁその分お金が出てていってしまうわけですが…。

そんな鉄道模型、非常に大雑把に言って、「プラスチック製」と「金属製」があります。金属製は材質により真鍮(ブラス)、ダイキャスト、ホワイトメタルなどありますが、今はほとんどが真鍮+安く上げたい部品はホワイトメタル、という構成です。
以前は、プラスチック製品は、「安かろう悪かろうの大量生産品」的扱いを受けていました。一点ずつ手作りの真鍮製品に比べ、線材や板が肉厚になるなどディテール表現で劣っていたのです。しかし、まずプラスチック製品の決定的な問題点であった「板の厚み」を、「窓ガラスを嵌め込む」という技法により克服しました。さらにもうひとつの難点であった細い線材も、やわらかい素材を使ったり、線材だけ金属を使う等により克服されつつあり、プラスチック製でも真鍮製とかわらないディテールを持つものが多くなりました。
しかし、プラスチック製品には大量生産ゆえの問題点が無いわけではありません。そもそもプラスチックの模型は、金属で作られた金型に材料を流し込んで成型します。ですから、大事なのは金型です。いい金型を作るには当然費用もかかります。それを回収できる見込みのある数が捌けなければいけません。
そうなると、あまり需要のなさげな製品は作られなくなります。またユーザーの目が厳しくなってきており、「ちょっと違うけど似ている部品での代用」がしずらくなっていますので、製品化の選定は色々と難しい問題があるでしょう(ワタシ自身は、実物と多少違っていたところで気にしないのですが)。

そんな中、ワタシが好きな「ナローゲージ」という分野があります。レールの幅(軌間といいます)が1435mmのものを「標準軌」といい、これより狭いものをナローゲージとか狭軌とか呼びます。日本では主流を占める国鉄/JRが1067mmでナローゲージに当たるため、これよりも狭い軌間のものを狭義でナローゲージと呼んでいます。
ナローゲージは通常の鉄道としても存在しますが(しかし現存する鉄道はわずか)、工事現場や材木を運搬する森林鉄道、鉱山などに多用されました。こうした作業用の鉄道・軌道は一般の人にはなじみの無いものですが、自動車に置き換えれば「はたらくじどうしゃ」の部類。こういうのが好きという、ワタシのような変わり者もいるわけです。

【牛乳輸送貨車】

たとえばこちらの模型。これは「牛乳輸送用貨車」です。酪農家から生乳を集め、工場で製品に加工するわけですが、専用の貨車が存在したのです。それも貨車まるごと1輌という豪快さ。向上ではこれを吊り上げて中の牛乳を降ろしている写真が残っています。
これは北海道東部にあった「浜中町営軌道」にあった貨車で、まぁマイナーな車両です。

ご覧の通り「変わり者」の分野です。プラスチックで大量生産しても売れるマーケットが無いので、ここはもう真鍮製品の独壇場です。少量多品種生産の世界で、個々のバリエーションを大事にし(同じ車両でも番号ちがいによる微妙な差を再現します)、1車種あたりの数はそれほど作らないというやり方が多くなっています。

真鍮製というだけで人手がかかって高価になりますが、さらに少量生産となるとまた高価になってしまいます。1/87のナローゲージの模型で、動力が付いた車両は安いものでキットが二万円、完成品だと五万円を越えるものも珍しくありません。
ナローゲージモデルの購買層というのは総じて高齢なので、それなりにお金を持っているという前提があるみたいな雰囲気なのですが、レールの幅が狭い分車両も小さく、趣味にかけるお金にケチをつけるなとはいうものの割高感は否めません。
しかしこれが「ご予約完売」するのです。ほぼネット販売のみで一般模型店には流通しないお店でも、発売前に予約完売が珍しくありません。需給バランスが取れていると見るべきなのか…。

【アメリカ製ナローゲージ機関車】

ところでこれがアメリカになるとちょっと事情が違います。こちらの黄色い機関車はアメリカ製ガレージキットを組み立てたもの。動力も含めて1万円もしません。これもまたナローゲージなのですが、アメリカでのナローゲージのマーケットは日本のそれとは比べ物にならない大きさを持っているせいか、こうした車両も安価で作られています。しかもスケールが大きいのでお得感もあります。但し真鍮製ではなくレジンによるガレージキットですので、精密感では全然異なりますが・・・。

このアメリカのナローゲージ、実は「現物は写真でしか見たことが無い」のですが、実は日本のナローゲージもそのほとんどは「写真でしか見たことが無い」存在なのです。そのため、どちらもわりと受け入れやすいという面があります。しかも1/87ではまだ搭載が難しいサウンドも、1/48では標準装備になってきています。
そんなわけで、値段が安いわ大きくて作りやすいわサウンドが付けられるわということで最近はすっかりアメリカンナローばかりなのですが、日本のナローにももちろん良さがあります。なかなか手の届かない価格の車両が載っている模型店のウェブサイトをチラ見しつつ、また完売になっちゃったよ、と、諦めがついたような悲しいような複雑な気分になるのでした。

(文・写真:エドガー)