うちの本棚毎週水曜連載の『うちの本棚』、第七回目となる今回は、日野日出志の『まだらの卵』をご紹介。
日野日出志の作品と出会ったのは「少年アクション」の創刊から連載された『ショッキング劇場』というホラー短編シリーズだった。したがって、『まだらの卵』も初出で目にしている。
汚れた川を流れてきた卵から正体不明の怪物が生まれるという、ある意味ホラーの古典的な展開を見せる本作だが、日野の描くキャラクター、語り口が読者を引き込み、足元にぽっかりと開いた真っ暗な穴の中をのぞきこむような不安な恐怖を与える。

当時すでに怪奇漫画(という言い方が主流だった)家として知られていたのだろうが、それまで作品に接する機会がなく、それまで知っていた楳図かずおや古賀新一といった作家とは違う怖さを感じた。それはたぶんに日野の絵柄・描線によるものだったと思う。
周囲の友人のあいだでも話題になり、ひばり書房から『まだらの卵』を表題とする単行本が出ると、すぐに買ったものだ。
「少年アクション」では、短編シリーズから『恐怖列車』という長編の連載となり、ひばり書房からは『蔵六の奇病』『わたしの赤ちゃん』など次々と単行本が刊行されるなど、間違いなくこの時期、日野日出志はブレイクしていた。

やがて映像作品でもホラー、特にスプラッター作品が話題になるようになり、日野日出志も請われてスプラッタービデオの監督などをしていたが、ある事件をキッカケにスプラッター作品が下火になると共に、日野の名も聞かれなくなってしまった。
それでも彼のファンは多く、数年ごとに思い出したように作品が復刊されている。また作品を詳細に評した『日野日出志を読む(清水 正)』という本も刊行されている。

日野日出志の代表作を挙げるとすれば『蔵六の奇病』や『紅い花』、『毒虫小僧』などがあるが、出会いのインパクトもあって、自分としては『まだらの卵』を含む『ショッキング劇場』シリーズを最初に紹介したくなるのである。

初出:少年アクション(双葉社)
書誌:ひばりコミックス(ひばり書房)
   ひばり文庫(ひばり書房)
   ジャンプ・スーパー・エース・コミックス(集英社)