うちの本棚毎週水曜連載の『うちの本棚』、第五回目となる今回は、松森 正・狩撫麻礼の『ライブマシーン』をご紹介。
松森 正のシャープな描線は、それ以前からのものだったが、この『ライブマシーン』でいっそう突き詰められた感がある。
また初期の代表作『木曜日のリカ(小池一夫原作)』以来、コレといったヒット作がなかった松森の再評価につながる作品として、『地球最期の日(関川夏央原作)』と共に位置するのではないだろうか。

物語は、セロニアス・モンクに憧れるジャズピアニスト有山礼二が、音楽に挫折し、音楽から遠い場所、戦場で過ごした後、日本に戻って再びピアニストとしてクラブで演奏をしているところから始まる。
ピアノのテクニックは研ぎ澄まされても、礼二の心の中ではなにかがもの足りない。そんなとき、傭兵仲間だった男に襲われ、身を守るために相手を倒したことで、音楽にも変化が現れる。
そんなとき偶然出会った「Q」と名乗る謎の雇われ、殺し屋になる礼二。
「Q」により、亜里沙という女性と出会い、ふたりは恋に落ちる。
理由は明かさないまま「Q」の目的に沿って、指示された殺人を行っていく礼二に、殺される側の組織は、元過激派のリーダーをぶつけてくる。
礼二の正体が暴かれ、さらに元過激派リーダーを洗脳する礼二。生き方は違っても共感するふたりはやがて「Q」の元で協力する仲になる。
「Q」の最終的な目的が明らかになるとき、壮大な復讐が終わり、礼二は殺人というモチーフの中で音楽に身をゆだねる。

後に描かれた『湯けむりスナイパー(ひじかた憂峰原作)』の源さんに、礼二の面影を見る読者も少なくないだろう。

松森 正は佐藤まさあきのアシスタントとして活躍し、佐藤作品に松森の描く女性キャラも散見される。代表作は前出の『木曜日のリカ』のほかに本作以後に描かれた『拳神(小池一夫原作)』やドラマ化もされた『湯けむりスナイパー』などがある。
原作の狩撫麻礼は、本作のあと谷口ジローと組んで『live!オデッセイ』などの作品を生んでいる。

初出:アクションヒーロー/1983年6月号~1984年3月号
書誌:アクションコミックス(B6)/全2巻
              (A5)/全2巻
    双葉文庫/全2巻
    漫画スーパーワイド(小池書院)/全1巻